抜粋
難民のストーリーでも、本書のように遊牧民生活を描いたものは特異である。彼が描く家畜とともに暮らし厳格だが愛情に満ちあふれていた家庭の姿は、非常に印象深い。難民として生きるという緊急事態に直面し、祖国を失ったにもかかわらず、チョペは人生の平衡感覚と他人への献身を保ってきた。今の彼を形づくってきた人生の出来事に対して、これほど思いやりと知恵にあふれた見方を彼が持ち続けたことに、読者は驚くだろう。そして中国にも自分が難民となった状況にも、彼が恨みや敵意のような破壊的な要素をまったく持っていないことに人は感銘を受けるだろう。この気高く心やさしいチベット男性の人生そのものが、仏教の深い教えそのものであり、われわれが人生の紆余曲折をたどる助けとなることに、読者は驚嘆するだろう。
デイヴィッド・テンプルマン
チベット史研究、仏教史翻訳
チョペ・ペルジョル・ツェリンのこの驚くべき自伝は、伝統的なチベット遊牧民である子供時代の暖かさと彩りを生き生きと映し出した。彼がここで鮮明に描いた世界は、今や中共による侵略と現代消費主義という二重の襲来に直面し、ほとんど消えかかってしまっている。本書によって、すでに失われたものがどれほど大きいか、またチベット人が独自の仏教文化を保存しさらなる発展を遂げることを助けることで、われわれが得るものがどれほど大きいかを、痛切に思い出させられた。
アレックス・バトラー
オーストラリア・チベット評議会(ATC)前代表
著者について
チョペ・ペルジョル・ツェリンは、1987年以来、世界中で、ダライ・ラマ法王第14世の正式な代表機関の代表職に任命されてきた。
まず東ヨーロッパの代表、その後1998年から2003年かけては
オーストラリアとニュージーランドの代表、
2007年までは日本と東アジアを管轄する代表職を務めた。
現在は、チベット亡命政府の厚生省大臣に就任している。