基本的に国民国家システムを是々非々で、そのつど修正をほどこしながら維持したい内田樹氏。その視点は、自力で移動できず定住せざるを得ない人々の、生活や文化を守るための枠組みにある。いっぽうで法人としての国家や国境という概念はたんに相対的であるどころか、人々にそれを絶対視させる悪であると断じる中田考氏。氏によるカリフ制再興の思想は、たとえるならEUのようにムスリムやそれ以外の人々が、カリフ制のもと自由に往来できる世界の実現を目指すものである。カリフ制においては、特定の民族や政府、領土を絶対視することによる争いもなくなるはずだからである。
二人の対話は浩瀚な知の彩りをみせつつ、一神教を信仰する者とそうではない多くの日本人(一般)との差異を浮かびあがらせる構造になっている。内田樹氏は特定の信仰をもたない日本人の典型を演じている。そうすることによって中田考氏のイスラーム信仰を際立たせ、その信仰告白ともいえる言葉の数々を引き出すことに成功した。そして読者の多くもまた一神教信仰者ではなく、国家概念を常識と感じてもいるはずである。それゆえ読者はどちらかといえば内田樹氏にみずからを重ね、それによって自身を中田考氏と対峙させることになるであろう。
読者は内田樹氏のまなざしをとおして、「皆んなのカワユイ(^◇^)カリフ道」家元としての中田考氏に、みずからが歓待されるのを感じるであろう。
一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書) (日本語) 新書 – 2014/2/14
内田 樹
(著)
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本の長さ256ページ
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言語日本語
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出版社集英社
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発売日2014/2/14
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ISBN-104087207250
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ISBN-13978-4087207255
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「ユダヤ教、キリスト教、イスラームの神は同じ」「戒律を重んじるユダヤ教とイスラームのコミュニティは驚くほど似ている」「千年以上にわたって中東ではユダヤ教、キリスト教がイスラームのルールに則って共存してきた」。なのに、どうして近現代史において衝突が絶えないのか?本書は、日本ではなじみが薄い一神教の基礎知識を思想家内田樹とイスラーム学者中田考がイスラームを主軸に解説。そして、イスラームと国民国家、アメリカ式のグローバリズムの間にある問題を浮き彫りにし、今後の展望を探る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
内田/樹
1950年東京都生まれ。思想家・武道家。神戸女学院大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論等
中田/考
1960年岡山県生まれ。イスラーム学者。同志社大学神学部元教授。専門はイスラーム法学・神学。哲学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1950年東京都生まれ。思想家・武道家。神戸女学院大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論等
中田/考
1960年岡山県生まれ。イスラーム学者。同志社大学神学部元教授。専門はイスラーム法学・神学。哲学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2014/2/14)
- 発売日 : 2014/2/14
- 言語 : 日本語
- 新書 : 256ページ
- ISBN-10 : 4087207250
- ISBN-13 : 978-4087207255
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Amazon 売れ筋ランキング:
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- - 54位イスラム教(一般)関連書籍
- - 239位集英社新書
- - 549位宗教入門 (本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年2月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
イスラム教徒(ムスリム)・イスラム法学者の中田氏と内田氏との対談。すこぶる刺激的だった。内田さんは10歳年長だが、この年若いイスラム法学者からイスラム世界についてとりわけ中田さんが実践中のカリフ制再興運動について謙虚にかつ熱心に学ぼうとしている。
私は旧世代だから今日まで内田氏の名前も知らなかった。取り急ぎ2・3の著作を読みこの人がなぜ若い層に受けるのかわかるような気がした。博学多才。あらゆるテーマに関心を持ち縦横に論ずるが、語り口はソフト、斬新な言語表現。が、基本にマルクス思想、丸山政治学などで修得した批判精神が確固としてある。
このイスラム談義は内田さんの知的琴線をかなり揺さぶったと見える。その後相次いで出版された中田氏の著作(「カリフ制再興」、対訳「クルアーン」)内藤正典教授「イスラム戦争」に推薦文を寄せている。
私は昨年6月、イスラム国による「カリフ制国家樹立宣言」以来世界は新しい局面に突入したと考えている。この「カリフ制」の試みが成功するかどうかはわからない。宗派抗争、地政学観点から見てイスラム国はあまりにも多くの敵対に包囲されており、イラク・シリアを越える勢力拡張の可能性は現状極めて薄い。
が、「パンドラの箱」は開かれた。世界に散在するイスラム教徒に「カリフ制」の召命が下った以上彼らは何らかの対応を迫られている。当のイスラム国カリフを真正とするならば、各地で息をひそめ、貧困と屈従の日々を余儀なくされているムスリムはそれを捨てカリフ制国家建設に馳せ参じなければならない。
イスラム国(スンナ教義にもとずく)の出現は、シーア派各国(イラン、イラク、シリア、ヒズボラのレバノン)にとっては脅威であり、とりわけ産油湾岸諸国に与えた衝撃は想像に難くない。彼らはイスラム的国家を称号しながらもイスラムの教えに背き豊かな石油資源を私物化し、貧しい自国・他国のイスラム教徒を顧みることがない。カリフ制は領域国民国家(西欧から与えられた国境線)を排除するから一たび真正カリフが出現するや国家権力者の居場所はなくなる。
石油利権、アメリカ的市場主義拡張をもくろむアメリカン・グローバリズムにとってもイスラム国はなんとしても排除しなければならない存在だ。
かくて「カリフ制再興」は危険思想でありタブーであった。繰り返すがイスラム国が成功するかどうかはわからない。が、カリフの下に結集しイスラム共同体を実現しなければならないという封印され続けた命題が明るみに出た以上、第二・第三のイスラム国建設運動は続いていく。時代は新しい局面に入ったのだ。
中田さんはこの動きの渦中にいる。彼がいかなるカリフ制が望ましいと考えているかここで書く余裕はない。新著「カリフ制再興」,「イスラーム 生と死と聖戦」第5章をお読みください。
私は旧世代だから今日まで内田氏の名前も知らなかった。取り急ぎ2・3の著作を読みこの人がなぜ若い層に受けるのかわかるような気がした。博学多才。あらゆるテーマに関心を持ち縦横に論ずるが、語り口はソフト、斬新な言語表現。が、基本にマルクス思想、丸山政治学などで修得した批判精神が確固としてある。
このイスラム談義は内田さんの知的琴線をかなり揺さぶったと見える。その後相次いで出版された中田氏の著作(「カリフ制再興」、対訳「クルアーン」)内藤正典教授「イスラム戦争」に推薦文を寄せている。
私は昨年6月、イスラム国による「カリフ制国家樹立宣言」以来世界は新しい局面に突入したと考えている。この「カリフ制」の試みが成功するかどうかはわからない。宗派抗争、地政学観点から見てイスラム国はあまりにも多くの敵対に包囲されており、イラク・シリアを越える勢力拡張の可能性は現状極めて薄い。
が、「パンドラの箱」は開かれた。世界に散在するイスラム教徒に「カリフ制」の召命が下った以上彼らは何らかの対応を迫られている。当のイスラム国カリフを真正とするならば、各地で息をひそめ、貧困と屈従の日々を余儀なくされているムスリムはそれを捨てカリフ制国家建設に馳せ参じなければならない。
イスラム国(スンナ教義にもとずく)の出現は、シーア派各国(イラン、イラク、シリア、ヒズボラのレバノン)にとっては脅威であり、とりわけ産油湾岸諸国に与えた衝撃は想像に難くない。彼らはイスラム的国家を称号しながらもイスラムの教えに背き豊かな石油資源を私物化し、貧しい自国・他国のイスラム教徒を顧みることがない。カリフ制は領域国民国家(西欧から与えられた国境線)を排除するから一たび真正カリフが出現するや国家権力者の居場所はなくなる。
石油利権、アメリカ的市場主義拡張をもくろむアメリカン・グローバリズムにとってもイスラム国はなんとしても排除しなければならない存在だ。
かくて「カリフ制再興」は危険思想でありタブーであった。繰り返すがイスラム国が成功するかどうかはわからない。が、カリフの下に結集しイスラム共同体を実現しなければならないという封印され続けた命題が明るみに出た以上、第二・第三のイスラム国建設運動は続いていく。時代は新しい局面に入ったのだ。
中田さんはこの動きの渦中にいる。彼がいかなるカリフ制が望ましいと考えているかここで書く余裕はない。新著「カリフ制再興」,「イスラーム 生と死と聖戦」第5章をお読みください。
2015年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この対談をユニークたらしめているのは、内田氏が言っている
ように、「カリフ制再建を公に訴える世界初の本」という点に
ある。
その、中田氏が提唱しているカリフ制再建を見てみると、以下
となる。
イスラム圏が領域国家に分断され、かつてあったウンマの紐帯
が失われてしまった。
イスラム圏は、かつての帝国をベースにした世界のブロック経
済化の流れにも出遅れている。
それ故、カリフを戴き、各共同体による統治とすることで、失
われた紐帯を復活させたい。
このカリフは、正統カリフのような実権を伴ったものではなく、
象徴カリフ制ということになる。
そして、正統カリフ時代の後からオスマン帝国崩壊までは、アフリカ
から東南アジアに至るまで、この象徴カリフ制は機能していたとの
歴史認識のようだ。
約一千年に渡るユートピアの設定である。
これでは、孔子の理想である周公旦時代のような、過去のユートピ
ア幻想になるのではないか。
また、米国のグローバリズムは批判するが、世界のブロック経済化
には乗気のようだ。
貨幣論や、中国やインドの是認の仕方を含め、イメージ先行の思考
が多いことも気掛かりである。
ように、「カリフ制再建を公に訴える世界初の本」という点に
ある。
その、中田氏が提唱しているカリフ制再建を見てみると、以下
となる。
イスラム圏が領域国家に分断され、かつてあったウンマの紐帯
が失われてしまった。
イスラム圏は、かつての帝国をベースにした世界のブロック経
済化の流れにも出遅れている。
それ故、カリフを戴き、各共同体による統治とすることで、失
われた紐帯を復活させたい。
このカリフは、正統カリフのような実権を伴ったものではなく、
象徴カリフ制ということになる。
そして、正統カリフ時代の後からオスマン帝国崩壊までは、アフリカ
から東南アジアに至るまで、この象徴カリフ制は機能していたとの
歴史認識のようだ。
約一千年に渡るユートピアの設定である。
これでは、孔子の理想である周公旦時代のような、過去のユートピ
ア幻想になるのではないか。
また、米国のグローバリズムは批判するが、世界のブロック経済化
には乗気のようだ。
貨幣論や、中国やインドの是認の仕方を含め、イメージ先行の思考
が多いことも気掛かりである。
2015年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アメリカ合衆国のやっていることは本当に正しいのか?中東の人たちがそんなに全てが悪いわけではないだろうに… しかもそもそも、なぜアメリカ合衆国は多大な犠牲を費やしてまで遠くはなれた地域に軍事介入していくのか? …というのは、これまでも薄々感じていたことだった。それが、スノーデンの『曝露』という形で化けの皮が剥がれた。やはりアメリカの利益になるようにいろいろな事件や歴史の解釈がゆがめられ、日本政府もそれを(渋々かどうかはわからないにしても)飲み込んで、我々に伝えられていたのだ。そりゃそうだよね、自国の利益にならないことを資本主義の国がやるはずないよね、と納得もしたし、はたまた自分たちの置かれた立場の土台は、基本的にアメリカや日本政府によって半分以上は知らないうちに牛耳られているのだと実感した。
この本では、こういう感覚を前提に、アメリカの行っている善意のグローバル化が、いかに今の中東情勢を悪化させているかについて述べている。アメリカのグローバル化はブルドーザーのように多様性を失わせ、資本主義の利益(それはその方法の先駆けであるアメリカの利益でもある)が最大になるように、イスラーム圏にも襲いかかった。各論ではいろいろな事情もあるだろうが、イスラーム圏はこうしたグローバル化に全く気性が合わず、必死に(必然的に)抵抗しているのが今の姿である、と読めた。
自分は別に極端な愛国主義者である自覚はないが、やはり日本という国が好きだし、日本語も日本食も好きだし、海外から帰ってくると日本は良いと無条件に思う。Americanizationは出世競争の観点からすると非常に大事な要素だが(これもアメリカの戦略的グローバル化のせいなのだろうが)、自分が日本人であることがデメリットになるなんて世界は、自分は全く、許容できない。英語を話せること、海外でも通用することは別に悪いことじゃないと思うが、日本という環境や日本語という言語を活かして、それがなければできないよな、というようなことをできる人になりたいと強く感じた。
この本では、こういう感覚を前提に、アメリカの行っている善意のグローバル化が、いかに今の中東情勢を悪化させているかについて述べている。アメリカのグローバル化はブルドーザーのように多様性を失わせ、資本主義の利益(それはその方法の先駆けであるアメリカの利益でもある)が最大になるように、イスラーム圏にも襲いかかった。各論ではいろいろな事情もあるだろうが、イスラーム圏はこうしたグローバル化に全く気性が合わず、必死に(必然的に)抵抗しているのが今の姿である、と読めた。
自分は別に極端な愛国主義者である自覚はないが、やはり日本という国が好きだし、日本語も日本食も好きだし、海外から帰ってくると日本は良いと無条件に思う。Americanizationは出世競争の観点からすると非常に大事な要素だが(これもアメリカの戦略的グローバル化のせいなのだろうが)、自分が日本人であることがデメリットになるなんて世界は、自分は全く、許容できない。英語を話せること、海外でも通用することは別に悪いことじゃないと思うが、日本という環境や日本語という言語を活かして、それがなければできないよな、というようなことをできる人になりたいと強く感じた。
2017年9月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
イスラム法学者の中田氏と、哲学研究者の内田氏の対談本。一般的な日本人にはいまいち馴染みのない「一神教」という概念について、内田氏が質問し、中田氏が答えていく形式で話が進んでいきます。
普段の生活で出会う人にするには、勇気がいるので難しい、宗教のことについて、卑近な話題からはじまり話題がだんだんと発展していきます。
対談本の良い点でしょうか、それぞれの質疑応答が、読者の聞きたかったこと、答えて欲しかったことと合致しており、合間合間のやりとりをまとめながら進んでいくので、終始わかりやすいです。
著者両名ともツイッターをやっているので、この本からツイッターをフォローしてみるのも面白いかもしれませんね。
普段の生活で出会う人にするには、勇気がいるので難しい、宗教のことについて、卑近な話題からはじまり話題がだんだんと発展していきます。
対談本の良い点でしょうか、それぞれの質疑応答が、読者の聞きたかったこと、答えて欲しかったことと合致しており、合間合間のやりとりをまとめながら進んでいくので、終始わかりやすいです。
著者両名ともツイッターをやっているので、この本からツイッターをフォローしてみるのも面白いかもしれませんね。