紀元前753年4月21日、ロムルスはパラティーノの丘でローマの建国式典を盛大
におこないました。それから約2200年後の1453年5月29日、メフメト二世率い
るオスマン軍がコンスタンチノープルを陥落させてローマ帝国は滅びました。本書
は、この間のローマ帝国の盛衰を描いたものですが、単なる史実の羅列ではなく、
教科書ではあまり教わらない豆知識が所々にちりばめられているので、歴史物語と
して楽しめます。例えば、ポエニ戦争を記述するにあたり、両国の軍船の構造につ
いて述べ、操船術に劣るローマ軍はカラスと呼ぶ鉄鉤の就いた接弦タラップを考案
して敵船に乗りこみ、得意の白兵戦に持ち込んで海戦で大勝したと書いてあるなど、
読むのが本当に楽しい。
侵略、内乱、暗殺、虐殺など何かと血なまぐさいローマ史ですが、とくに印象に残
ったのは、人間の嫉妬心のおぞましさです。例えば、道徳の番人を自負した大カト
ーは、カルタゴの名将ハンニバルに大勝してローマを救ったスキピオ・アフリカヌ
スの名声が妬ましくてたまらなかった。ザマの決戦(前202年)から15年もたった
ころ、賠償金に使途不明金があるとしてスキピオの弟を告発します。忿懣やるかた
ないスキピオは弟に同行し、元老院で「私がいなかったら、いま、私を告発しよう
としている者らすべては存在できなかったかもしれないのだ」と言い捨て、ローマ
を離れ片田舎に隠棲しました。
一方、スキピオに敗れたハンニバルは、祖国の再建に努力し、200タラントもの莫
大な賠償金を完済してゆきますが、カルタゴの復興はローマ人の危機感をあおりま
した。カルタゴを視察した大カトーがたわわに実るイチジクを見て脅威を覚え、そ
の後の演説で必ず「カルタゴ滅ぼすべし」と締めくくったのは有名な話です。ハン
ニバルは、平和ボケの国民に警鐘を鳴らしますが、ハンニバルを売り渡そうとする
者があらわれ、祖国を去りました。スキピオとハンニバル、二人の英雄はいずれも
祖国に裏切られ、不幸な晩年を送りました。
著者は2000年以上続いた歴史を250頁の文庫版に手際よくまとめました。小冊子
ながら、物語性に富み、読み物としてすこぶるおもしろい。カリグラ帝やネロ帝の
暴虐ぶりについてもかなりくわしい。エピソードや裏話を楽しみながらローマ史の
概略が身につく優れた入門書です。
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