「天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する」と表紙に書かれてありますが。
……わかりやすい、とは…?
とりあえず「厖大」は「膨大」と書いていただけるとわかりやすいんですが。
が、これは序の口。
冒頭の3Pから今日日使われていない旧字体のオンパレードです。
公証人→公證人
自然児、私生児→自然兒、私生兒
画家→畫家
といった数々のダヴィンチ・コード(?)を解読しながら読み進めていったものの、「キリスト洗禮圖」に違和感。
文脈的に「洗禮」は「洗礼」なんでしょうが。
最後は…洗礼「図」?
でも、その後も同じ漢字が使われていましたが、「受胎告知図」や「三王禮拜図」なんて言い方は私は聞いたことがなかったし、グーグル検索しても殆ど出てきません。
漢字の書き順や旧字体のウェブサイト、くにがまえで漢字を調べても納得のいく答えが得られず、岩波文庫さんに問い合わせメールを出しました。
「お宅の出版社が出している本の漢字がどう頑張っても読めないから、なんて読むか教えて?」なんて出版社に問い合わせをするなんて人生で初めてです(笑)
普通の本ならインターネットか辞書で解決できる問題なんでしょうけどね…。
するとその日のうちに、というかわずか三時間でこのようなお返事がきました。
(前略)お申し越しの「圖」は,ご推察の通り「図」の旧字体です.お問合せのページに出てくるレオナルドの作品は,最近では「キリストの洗礼」「受胎告知」「東方三博士の礼拝」と呼ばれることが多いと思われます.
最近では,絵画の名前に「図」をつけることは少なくなりましたが,かつては,同書にもありますように,「○○図」と称することが多くありました.○○の部分が漢字数文字で構成されることが多いために,今となっては随分いかめしい感じもいたします.Mさまの違和感もその辺にあるのでしょうか.(後略)
…なるほど。それにしても、なんて美しい日本語なんでしょう。さすが老舗出版社。
岩波文庫編集さん当人ですら「今となっては随分いかめしい感じ」がするという文章が載せられたこの本、私が持っているのは2016年8月4日の66刷発行ですが、他の方もレビューでおっしゃっているような意図があって旧字もフォントも変えていないんでしょうね。
もういっそ67刷もこの路線で突っ走っていただきたい。
内容は天才の意外な一面というか、本になったものではなくメモの集大成が編集されたものなので、読み手の事を考えて書かれた文章ではないものも多々あり、思い付きのような走り書きがリアルです。
序盤は彼の学歴コンプレックスのような、他者への仰々しい悪態から始まっています。
文学ではお笑いコントのような小話も創作していて、意外に下ネタというか夜の生活的なものもあります。司祭や尼僧のジョーク等は、シュールすぎてちょっと笑えないんですが…。
彼の生活や気づき、画家への呼びかけや気取らない健康法等、生き方そのものが浮き彫りにされて面白いです。
下巻はお買い物メモなんてものもあります。
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レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上 (岩波文庫 青 550-1) 文庫 – 1954/12/5
レオナルド ダ・ヴィンチ
(著),
杉浦 明平
(翻訳)
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- 本の長さ293ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1954/12/5
- ISBN-104003355016
- ISBN-13978-4003355015
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
レオナルド(1452‐1519)こそ「万能の天才」そのものである。彼は何よりも「モナ・リザ」「最後の晩餐」などの傑作を残した画家であり、彫刻家・建築家であり、また天文学・物理学の造詣も深かった。その天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する。(上)には『絵画論』『人生論』『文学論』を収める。
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カスタマーレビュー
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「天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する」と表紙に書かれてありますが。……わかりやすい、とは…?とりあえず「厖大」は「膨大」と書いていただけるとわかりやすいんですが。が、これは序の口。冒頭の3Pから今日日使われていない旧字体のオンパレードです。公証人→公證人自然児、私生児→自然兒、私生兒画家→畫家といった数々のダヴィンチ・コード(?)を解読しながら読み進めていったものの、「キリスト洗禮圖」に違和感。文脈的に「洗禮」は「洗礼」なんでしょうが。最後は…洗礼「図」?でも、その後も同じ漢字が使われていましたが、「受胎告知図」や「三王禮拜図」なんて言い方は私は聞いたことがなかったし、グーグル検索しても殆ど出てきません。漢字の書き順や旧字体のウェブサイト、くにがまえで漢字を調べても納得のいく答えが得られず、岩波文庫さんに問い合わせメールを出しました。「お宅の出版社が出している本の漢字がどう頑張っても読めないから、なんて読むか教えて?」なんて出版社に問い合わせをするなんて人生で初めてです(笑)普通の本ならインターネットか辞書で解決できる問題なんでしょうけどね…。するとその日のうちに、というかわずか三時間でこのようなお返事がきました。(前略)お申し越しの「圖」は,ご推察の通り「図」の旧字体です.お問合せのページに出てくるレオナルドの作品は,最近では「キリストの洗礼」「受胎告知」「東方三博士の礼拝」と呼ばれることが多いと思われます.最近では,絵画の名前に「図」をつけることは少なくなりましたが,かつては,同書にもありますように,「○○図」と称することが多くありました.○○の部分が漢字数文字で構成されることが多いために,今となっては随分いかめしい感じもいたします.Mさまの違和感もその辺にあるのでしょうか.(後略)…なるほど。それにしても、なんて美しい日本語なんでしょう。さすが老舗出版社。岩波文庫編集さん当人ですら「今となっては随分いかめしい感じ」がするという文章が載せられたこの本、私が持っているのは2016年8月4日の66刷発行ですが、他の方もレビューでおっしゃっているような意図があって旧字もフォントも変えていないんでしょうね。もういっそ67刷もこの路線で突っ走っていただきたい。内容は天才の意外な一面というか、本になったものではなくメモの集大成が編集されたものなので、読み手の事を考えて書かれた文章ではないものも多々あり、思い付きのような走り書きがリアルです。序盤は彼の学歴コンプレックスのような、他者への仰々しい悪態から始まっています。文学ではお笑いコントのような小話も創作していて、意外に下ネタというか夜の生活的なものもあります。司祭や尼僧のジョーク等は、シュールすぎてちょっと笑えないんですが…。彼の生活や気づき、画家への呼びかけや気取らない健康法等、生き方そのものが浮き彫りにされて面白いです。下巻はお買い物メモなんてものもあります。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2018年8月29日に日本でレビュー済み
……わかりやすい、とは…?
とりあえず「厖大」は「膨大」と書いていただけるとわかりやすいんですが。
が、これは序の口。
冒頭の3Pから今日日使われていない旧字体のオンパレードです。
公証人→公證人
自然児、私生児→自然兒、私生兒
画家→畫家
といった数々のダヴィンチ・コード(?)を解読しながら読み進めていったものの、「キリスト洗禮圖」に違和感。
文脈的に「洗禮」は「洗礼」なんでしょうが。
最後は…洗礼「図」?
でも、その後も同じ漢字が使われていましたが、「受胎告知図」や「三王禮拜図」なんて言い方は私は聞いたことがなかったし、グーグル検索しても殆ど出てきません。
漢字の書き順や旧字体のウェブサイト、くにがまえで漢字を調べても納得のいく答えが得られず、岩波文庫さんに問い合わせメールを出しました。
「お宅の出版社が出している本の漢字がどう頑張っても読めないから、なんて読むか教えて?」なんて出版社に問い合わせをするなんて人生で初めてです(笑)
普通の本ならインターネットか辞書で解決できる問題なんでしょうけどね…。
するとその日のうちに、というかわずか三時間でこのようなお返事がきました。
(前略)お申し越しの「圖」は,ご推察の通り「図」の旧字体です.お問合せのページに出てくるレオナルドの作品は,最近では「キリストの洗礼」「受胎告知」「東方三博士の礼拝」と呼ばれることが多いと思われます.
最近では,絵画の名前に「図」をつけることは少なくなりましたが,かつては,同書にもありますように,「○○図」と称することが多くありました.○○の部分が漢字数文字で構成されることが多いために,今となっては随分いかめしい感じもいたします.Mさまの違和感もその辺にあるのでしょうか.(後略)
…なるほど。それにしても、なんて美しい日本語なんでしょう。さすが老舗出版社。
岩波文庫編集さん当人ですら「今となっては随分いかめしい感じ」がするという文章が載せられたこの本、私が持っているのは2016年8月4日の66刷発行ですが、他の方もレビューでおっしゃっているような意図があって旧字もフォントも変えていないんでしょうね。
もういっそ67刷もこの路線で突っ走っていただきたい。
内容は天才の意外な一面というか、本になったものではなくメモの集大成が編集されたものなので、読み手の事を考えて書かれた文章ではないものも多々あり、思い付きのような走り書きがリアルです。
序盤は彼の学歴コンプレックスのような、他者への仰々しい悪態から始まっています。
文学ではお笑いコントのような小話も創作していて、意外に下ネタというか夜の生活的なものもあります。司祭や尼僧のジョーク等は、シュールすぎてちょっと笑えないんですが…。
彼の生活や気づき、画家への呼びかけや気取らない健康法等、生き方そのものが浮き彫りにされて面白いです。
下巻はお買い物メモなんてものもあります。
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岩波文庫さんにメールで質問しました。
ユーザー名: 水主、日付: 2018年8月29日
「天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する」と表紙に書かれてありますが。ユーザー名: 水主、日付: 2018年8月29日
……わかりやすい、とは…?
とりあえず「厖大」は「膨大」と書いていただけるとわかりやすいんですが。
が、これは序の口。
冒頭の3Pから今日日使われていない旧字体のオンパレードです。
公証人→公證人
自然児、私生児→自然兒、私生兒
画家→畫家
といった数々のダヴィンチ・コード(?)を解読しながら読み進めていったものの、「キリスト洗禮圖」に違和感。
文脈的に「洗禮」は「洗礼」なんでしょうが。
最後は…洗礼「図」?
でも、その後も同じ漢字が使われていましたが、「受胎告知図」や「三王禮拜図」なんて言い方は私は聞いたことがなかったし、グーグル検索しても殆ど出てきません。
漢字の書き順や旧字体のウェブサイト、くにがまえで漢字を調べても納得のいく答えが得られず、岩波文庫さんに問い合わせメールを出しました。
「お宅の出版社が出している本の漢字がどう頑張っても読めないから、なんて読むか教えて?」なんて出版社に問い合わせをするなんて人生で初めてです(笑)
普通の本ならインターネットか辞書で解決できる問題なんでしょうけどね…。
するとその日のうちに、というかわずか三時間でこのようなお返事がきました。
(前略)お申し越しの「圖」は,ご推察の通り「図」の旧字体です.お問合せのページに出てくるレオナルドの作品は,最近では「キリストの洗礼」「受胎告知」「東方三博士の礼拝」と呼ばれることが多いと思われます.
最近では,絵画の名前に「図」をつけることは少なくなりましたが,かつては,同書にもありますように,「○○図」と称することが多くありました.○○の部分が漢字数文字で構成されることが多いために,今となっては随分いかめしい感じもいたします.Mさまの違和感もその辺にあるのでしょうか.(後略)
…なるほど。それにしても、なんて美しい日本語なんでしょう。さすが老舗出版社。
岩波文庫編集さん当人ですら「今となっては随分いかめしい感じ」がするという文章が載せられたこの本、私が持っているのは2016年8月4日の66刷発行ですが、他の方もレビューでおっしゃっているような意図があって旧字もフォントも変えていないんでしょうね。
もういっそ67刷もこの路線で突っ走っていただきたい。
内容は天才の意外な一面というか、本になったものではなくメモの集大成が編集されたものなので、読み手の事を考えて書かれた文章ではないものも多々あり、思い付きのような走り書きがリアルです。
序盤は彼の学歴コンプレックスのような、他者への仰々しい悪態から始まっています。
文学ではお笑いコントのような小話も創作していて、意外に下ネタというか夜の生活的なものもあります。司祭や尼僧のジョーク等は、シュールすぎてちょっと笑えないんですが…。
彼の生活や気づき、画家への呼びかけや気取らない健康法等、生き方そのものが浮き彫りにされて面白いです。
下巻はお買い物メモなんてものもあります。
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48人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2021年11月22日に日本でレビュー済み
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本書は1452年生まれのレオナルド・ダ・ヴィンチ自身の手記の内、『序』『人生論』・『文学』・『絵の本』から成ります。
レオナルドが如何に自らの経験を基に奥深く客観的に、絵画や物事や周りの人々や自らを考察していたか知悉できます。
以下に印象に残ったレオナルドの言葉をご紹介しますので、気になられた方はぜひご購読ください。
『序』より
・権威を引いて論ずるものは才能を用いるにあらず、ただ記憶を用いるにすぎぬ。
・数学の中にこそ、そこで取扱われる事物の知識すなわち真理が含まれている。
・トログス・ポンペイウス ー この人はまことに驚嘆すべき言行にみちみちたるかの古代人のあらゆる逸話を絢爛たる文章でものした ― の著せる『歴史』
・しかしわれわれは極悪非道の行為を一つだけ述べて人間のことは終わりにしよう。そういう行為は地上の生物には起こらない、というのは地上には脳味噌が足りないかでもないかぎり ― けだし(なぜなら)かれらの間にも、数こそ少なけれ、人間界におけると同じく気狂いがいるから ― 同族相食むような生物はいないのである。つまり、往々子供を食べるライオン、アメリカ豹、アジア豹、山猫、猫属等のごとき肉食獣を除いてはこういうことは起こらないのである。しかるに、おまえは、子供どころか父母兄弟友達を食って、それにあきたらず、他の島々へ他の人間たちを捕獲するために狩りに赴く。そしてそれらの人間を去勢して太らせたうえでぱくりと呑込んでしまう。
『絵の本』より
・絵画を軽蔑するものは哲学をも、また自然をも愛していない。
・画家の科学の神性なる所以は、画家の頭脳が神の頭脳に似たものに変わる点にある。
・素描というものは、ただ自然の作品のみならず、自然のつくるものを超えて限りないものを追求するほど立派である。
・絵画科学の神聖なる所以は、人間の手になるおよび神の手になるもろもろの作品を観照するにある。
・われわれは藝術によって神の孫と呼ばれていい。
・画家は孤独でなくてはならぬ。~ 画家は孤独で、自分の眺めるものすべてを熟考し、自己と語ることによって、どんなものを眺めようともそのもっとも優れた箇所を選択し、鏡に似たものとならねばならぬ。
・画家は万能でなければ称賛に値しない。画家よ、君は藝術をもって「自然」の産み出すあらゆる種類の形態を模造する万能な先生にならぬかぎりは、立派な画家たりえぬと知らねばならぬ。
・才能を増進し覚醒させて各種の趣向を思いつかせる一方法 ~ 君がさまざまなしみやいろんなな石の混入で汚れた壁を眺める場合、もしある情景を思い浮かべさえすれば、そこにさまざまな形の山々や河川や巌石や樹木や平原や大渓谷や丘陵に飾られた各種の風景に似たものを見ることができるだろう。この種の石混じり壁の上には、その響きの中に君の想像するかぎりのあらゆる名前や単語が見いだされる鐘の音のようなことがおこるのである。
・画家は「自然」を師としなければならぬ。~ 画家が手本として他人の絵を選ぶならば、かれは取り柄の少ない絵をつくるようになるだろう。
・
レオナルドが如何に自らの経験を基に奥深く客観的に、絵画や物事や周りの人々や自らを考察していたか知悉できます。
以下に印象に残ったレオナルドの言葉をご紹介しますので、気になられた方はぜひご購読ください。
『序』より
・権威を引いて論ずるものは才能を用いるにあらず、ただ記憶を用いるにすぎぬ。
・数学の中にこそ、そこで取扱われる事物の知識すなわち真理が含まれている。
・トログス・ポンペイウス ー この人はまことに驚嘆すべき言行にみちみちたるかの古代人のあらゆる逸話を絢爛たる文章でものした ― の著せる『歴史』
・しかしわれわれは極悪非道の行為を一つだけ述べて人間のことは終わりにしよう。そういう行為は地上の生物には起こらない、というのは地上には脳味噌が足りないかでもないかぎり ― けだし(なぜなら)かれらの間にも、数こそ少なけれ、人間界におけると同じく気狂いがいるから ― 同族相食むような生物はいないのである。つまり、往々子供を食べるライオン、アメリカ豹、アジア豹、山猫、猫属等のごとき肉食獣を除いてはこういうことは起こらないのである。しかるに、おまえは、子供どころか父母兄弟友達を食って、それにあきたらず、他の島々へ他の人間たちを捕獲するために狩りに赴く。そしてそれらの人間を去勢して太らせたうえでぱくりと呑込んでしまう。
『絵の本』より
・絵画を軽蔑するものは哲学をも、また自然をも愛していない。
・画家の科学の神性なる所以は、画家の頭脳が神の頭脳に似たものに変わる点にある。
・素描というものは、ただ自然の作品のみならず、自然のつくるものを超えて限りないものを追求するほど立派である。
・絵画科学の神聖なる所以は、人間の手になるおよび神の手になるもろもろの作品を観照するにある。
・われわれは藝術によって神の孫と呼ばれていい。
・画家は孤独でなくてはならぬ。~ 画家は孤独で、自分の眺めるものすべてを熟考し、自己と語ることによって、どんなものを眺めようともそのもっとも優れた箇所を選択し、鏡に似たものとならねばならぬ。
・画家は万能でなければ称賛に値しない。画家よ、君は藝術をもって「自然」の産み出すあらゆる種類の形態を模造する万能な先生にならぬかぎりは、立派な画家たりえぬと知らねばならぬ。
・才能を増進し覚醒させて各種の趣向を思いつかせる一方法 ~ 君がさまざまなしみやいろんなな石の混入で汚れた壁を眺める場合、もしある情景を思い浮かべさえすれば、そこにさまざまな形の山々や河川や巌石や樹木や平原や大渓谷や丘陵に飾られた各種の風景に似たものを見ることができるだろう。この種の石混じり壁の上には、その響きの中に君の想像するかぎりのあらゆる名前や単語が見いだされる鐘の音のようなことがおこるのである。
・画家は「自然」を師としなければならぬ。~ 画家が手本として他人の絵を選ぶならば、かれは取り柄の少ない絵をつくるようになるだろう。
・
2018年11月7日に日本でレビュー済み
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手稿は実像に近づける気がする。自然を師とし、ありとあらゆる物象(空気まで)を、観察し感じ表現し、繋げる、敷延力には圧感。動植物、食物連鎖の擬人化や比喩、投影に多元的な個性が溢れていて感動、自我と消失している時のテンションの差異や多面性に私は魅かれる。
当時から、精神についての物理的観測、見解が見事でビックリ!と言っても、その理論は未だに一部物理学者の仮説の域のようなのが残念。
当時から、精神についての物理的観測、見解が見事でビックリ!と言っても、その理論は未だに一部物理学者の仮説の域のようなのが残念。
2002年7月5日に日本でレビュー済み
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画家レオナルドを知りたければその画を観ればいい。天才レオナルドを知りたければこれらを読むといい。よく天才だの万能の人だなどと言われているがその理由は良く分らない、という方々にお薦めである(かつての私がそうだった)。自らの経験を土台とし、そして思考する。そうした外界への飽くなき探究の態度は、既に与えられた情報に満足しがちな自分には新鮮且つ教訓的だった。この二冊を読むと、自然科学とはこういうものだったのかと教えられる。まず絵画論が目的で購入したのだが(それは上巻に収録されている)、同じ目的の方々には是非とも下巻も読んで欲しい。下巻には水の運動や鳥の飛翔、人体に関する記述等がある。上下共に、みたもの経験したものすべてを書き尽くすという勢いだから自ずとイメージを喚起する記述に溢れている。画家の眼とはかくも激しいものなのかと逆に画家レオナルドに思い至る。ただその描写が難解な部分もあって書き手のせいでなければ、これはもう読解力の限界か、もしくは翻訳の限界か。とにかく経験と知識について考えさせられる点だけでも読む価値は十分ある。