10円だったので買ってみた。昔文庫で読んだとき山田康雄による解説文がついていたような記憶があるが1巻には無かった。あれは別の巻だったのだろうか。
ルパンというコンテンツはひとによってどれがホンモノか、が違うと思う。ファーストルパン、それも初期のアンニュイ路線こそがルパンだとか、カリ城だとか、いや、カリ城よりクローンのほうが傑作だ、とか。
自分にとってルパンとはセカンドシリーズである。子どもの頃に夕方の再放送で何度も観た。必ず、ファーストルパンも一緒に再放送するのだが「はやく終わらないかなあ」と思っていた。赤ジャケルパンがホンモノなのだ、緑ジャケのルパンなんざニセモノだ。なんで茶髪なんだよ、ゴエモンもあんまでてこないしよお。ルパン一味が樽で飛んでく(実際はドラム缶なのだが何故か樽と記憶していた)シーンが来て、やっと終わった、これでようやく明日から「ホンモノのルパン」が観れる、ってなもんである。自分の周りの子ども達も、誰もファーストルパンを観てなかったので誰かが「緑ルパンは最初のほうだけルパンザサードの歌がオープニングで流れる」と言っても誰も知らなかった。ファーストこそルパン、な人から怒られそうだが、ある世代の人たちには結構、共感してもらえると思うがどうだろう。
おとなになって改めてセカンドシリーズを観てみたら、全く内容を覚えてない上に驚くほど詰まらなかったので、それに驚いたものである。駿演出の2話しか面白くないのでびっくりした。ま、子どもの頃みたテレビの内容、殆ど忘れてるんだけどね。「セカンドでは毎回お約束でルパンの髭剃りシーンが有る」という謎の記憶まで植え付けられていたのだが勿論そんなもんもなかった。「泡立てたシェービングクリームを大量に塗りたくり、安全カミソリを指先でつまむように持ち、例のストライプのパンツ一丁のルパンが鏡を見ながら剃る」という絵が克明に頭に浮かぶのだが…。この疑似記憶、周りの子どもたちの数名が共有してたのでなんだか凄かった。
そしてモンキー・パンチによる原作である。アニメがあれだけの国民的コンテンツになったのに原作を読もうという気を起きさせない。何故か。簡単である。音がないからだ。山田康雄が喋ってないルパンなんて価値があるのか。いや、ない(反語)。山田康雄があまりにもはまり役だったのであの声でないともうルパンじゃないのである。風魔一族?なにそれ?
過去に読んだときの内容は完全に忘れており、10円だったので確認作業のような気分で改めて読んでみた。最初のうち、次元が全然出てこない…と思ったらアニメにもなったパイカルの話でいきなり当たり前のようにルパンの横にいる。五右衛門っぽい侍が出てくるのだが五右衛門ではない。不二子も出てこない。毎回のように女が登場してみんな不二子にしか見えないのだが不二子じゃない。というか女の顔全部一緒。ワルサーもマグナムも出てこないがこれらは大塚康生が考えたものだと知っている。のちに出てくる五右衛門の剣が「斬鉄剣」というのもアニメで考えた設定で原作では無かった記憶がある。うーん、こんなのルパンじゃない、って思っちゃうなあ。
あとアニメ観たときも疑問に思って、こうして読んでみて原作通りだと解るんだけど、なんで脱獄のための秘策であるひげを利用する前に剃り始めるんだろう笑。髭剃りに来たやつを脅したあとで剃りゃいいじゃん笑。アニメだと爪にしこんだカミソリで脅すんだけど漫画だとピストルで脅す。じゃあ、そのピストル使って脱獄すりゃいいじゃん笑。与えられた制限のなかで脱獄するのが頭脳戦の醍醐味なのでは。ピストル奪ったらだめじゃん。つーか、なんでカミソリみつけられなかったんだろうね笑。屈辱を味合わされた、とか坊主に変装した次元にタバコを吸わせてもらったり、とかアニメの脚色はよく出来てんな。パイカルの話でナントカ機関銃とかレッドアイガンランチャーとかなんかいろんな武器だすのもアニオリなのか。アニメのほうが面白いな。先に述べたようにファーストに思い入れないんだけども。
原作者のモンキー・パンチはセカンドシリーズで道化にされた銭形に大いに不満があったらしい、銭形はもっと切れ者なんだと。が、原作者自ら監督したデッド・オア・アライブのこれじゃない感は半端なかった。原作者が作ったのに観てるこっちが「こんなのルパンじゃない」と思ってしまうのだ。それは原作者がお気に召さなかったセカンドが自分にとっての「ホンモノのルパン」だったからだ。
観るものによって「ホンモノ」が異なるので、原作さえも「ホンモノじゃない」という気にさせる。そんな感じのテーマでGREEN VS REDとかいうアニメも作られたが「押井版ルパンを押井以外に作らせるとこんなに無残な代物が出来上がるんだなあ」と思っただけだった。あのメタルパンもまたニセモノでしかないのだ。
傑作と名高いカリ城で駿が描いた中世騎士道ロリコンおじさまルパンもひとによっちゃニセモノだろう。アニメのシナリオに長く関わった飯岡順一も自著の中でブチギレていたが、なんかの本に掲載されていた原作者インタビューではインタビュアーが一生懸命「あんなのルパンじゃないですよね?」って話を振るんだけどモンキー・パンチが全然乗ってこなくて「DVDで観たけど絵が綺麗ですよね」とか語ってたので可笑しかった。某雑誌のセカンド作監の北原健雄インタビューでは「さらば愛しきルパンよで長くやってきた自分たちの仕事全否定されてムカつきませんでした?(大意)」とか聞いてたのだが答えにくいだろそんな質問。北原、大人の対応でかわしてました。ファーストの大塚ルパンをリスペクトしたかったという北原はどっかでルパンはサル顔、不二子はOLと自虐ってたがワタシにとってはセカンドのルパンと不二子がホンモノだよ。テレビで勝手にカリ城寄りの顔に変えてばかりのテレコムルパンはルパンじゃないから!
とまあそんな感じでなにがリアルでフェイクかというサムいラッパーのような論争をファンがやってても原作者すら知らない「ホンモノのルパン」がどっかに居て、その様を眺めながら笑っているような気もするというのがルパン三世というコンテンツの魅力であるように思えた。まあ、さすがに令和になってアルセーヌ・ルパンの孫でもねーだろ、と思うのでそれは過去の話ではある。
ルパン三世 (1) (中公文庫―コミック版 (Cも1-16)) (日本語) 文庫 – 1998/1/1
モンキー・パンチ
(著)
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本の長さ296ページ
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言語日本語
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出版社中央公論新社
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発売日1998/1/1
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ISBN-104122030544
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ISBN-13978-4122030541
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1998/1/1)
- 発売日 : 1998/1/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 296ページ
- ISBN-10 : 4122030544
- ISBN-13 : 978-4122030541
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Amazon 売れ筋ランキング:
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- - 5,224位漫画・アニメ・BL(イラスト集・オフィシャルブック)
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カスタマーレビュー
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元々青年誌に連載されていたため暴力、性的描写などかなり自由に描かれています。また、ルパンとその仲間たちというくくりはありますが、アニメなどのようなまとまりは無い。
次元大介や石川五右衛門らしき登場人物、峰不二子そして銭形警部が登場するのと、コミカルなやり取りやオチといった作品の約束事は固まっている。その結果、こっちが本家本元なのにスピンオフを読んでいるような気分になる。変な言い方でしかも主客転倒だが、コミケでルパン三世の薄い本をプロが書いたらこうなるという感想をもった。
背景には学生運動とか、冷戦とか世の中がいつもざわついている時代がある。ベトナム戦争や朝鮮戦争があり、いつか日本もまた戦争になるかもしれないという不安感と急速に経済発展が進む高揚感が漂っている。この原作ではひどく簡単に人が死ぬのはそうした刺激に世の中が鈍感だったからだ。アニメではルパンは人を殺さないが、一般的なアニメの善玉キャラクターとしては原作の設定は不都合だったろう。
もし、アニメのルパンも漫画版と同じような設定だったらと思う。実際のところ「子連れ狼」や「カムイ伝」は結構、残酷だがヒットした。もちろん、その後、国民的作品へと変貌したのはルパンだけなので正解だったのだろう。してみると、求められていたのはスマートさとコミカルさの両立だったのかもしれない。
漫画版を読んで設定が大きく違うのに意外と違和感が無い。共通点がそれなら得心が良く。
次元大介や石川五右衛門らしき登場人物、峰不二子そして銭形警部が登場するのと、コミカルなやり取りやオチといった作品の約束事は固まっている。その結果、こっちが本家本元なのにスピンオフを読んでいるような気分になる。変な言い方でしかも主客転倒だが、コミケでルパン三世の薄い本をプロが書いたらこうなるという感想をもった。
背景には学生運動とか、冷戦とか世の中がいつもざわついている時代がある。ベトナム戦争や朝鮮戦争があり、いつか日本もまた戦争になるかもしれないという不安感と急速に経済発展が進む高揚感が漂っている。この原作ではひどく簡単に人が死ぬのはそうした刺激に世の中が鈍感だったからだ。アニメではルパンは人を殺さないが、一般的なアニメの善玉キャラクターとしては原作の設定は不都合だったろう。
もし、アニメのルパンも漫画版と同じような設定だったらと思う。実際のところ「子連れ狼」や「カムイ伝」は結構、残酷だがヒットした。もちろん、その後、国民的作品へと変貌したのはルパンだけなので正解だったのだろう。してみると、求められていたのはスマートさとコミカルさの両立だったのかもしれない。
漫画版を読んで設定が大きく違うのに意外と違和感が無い。共通点がそれなら得心が良く。
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Pierre
5つ星のうち5.0
Parfait
2017年12月19日にフランスでレビュー済みAmazonで購入
Article conforme à la description (en japonnais), le cadeau a beaucoup plu, il était destiné a un fan de ce manga.