昔この本を買っていたことがあるのをすっかり忘れていましたが、小山先生がこの本の後に出した『素数からゼータへ、そしてカオスへ』に出てくるので、アマゾンで検索したところ昔買った記録があったので何とか探し出しました。
この本は小山先生の上記の本のまえがきで「1ページも読めるところがない」、「素数はいったいどこに行ったんだ」という読書の声があった旨が記されていますが、自分も買ったのを忘れていたということはやっぱりチンプンカンプンで全く理解できなかったんだと思います。
黒川・小山両先生の本も含めてリーマン予想関係の本を何冊か(流し読みですが)読んでみて多少は分かるようになったかな、と思って改めて紐解いてみましたが、正直なところリーマン予想の解説を期待している一般読者が手にしてはいけない本だということを再認識しました。
特にリーマン予想というかリーマンのそもそもの1859年の論文自体の解説は10ページだけで、それも「ここでは複素関数論的な難しさを避けて、要点を述べておこう。」(p.21)となっていて、理解に不可欠な複素関数の説明がほとんどないので、この本だけでリーマン予想を理解するのは諦めた方が良さそうです。
とはいえ、それ以降の素数以外の素な数学的な対象からそもそものリーマンのゼータ関数に似たもの(ゼータ関数)を構成するという方法は興味深いところで、そうしたゼータ関数のうちでも代表的な合同ゼータ関数とセルバーグ・ゼータ関数が20世紀の数学の「精華」(序文)あるいは「金字塔」(p.34)とされる事情も何とはなしに分かるので、ゼータ関数論の入口としてはお薦めできるかと思います。
ただそうしたリーマン以降に登場した各種のゼータ関数で類似の成果が得られても、リーマン予想自体は一向に解決されないわけで、そうした成果がリーマン予想の解決になかなか結びつかない事情というか、そもそも如何にも曰くありげで成り立ちそうなリーマン予想がどうしてこんなに難しいのかを知りたいところですが、この本ではそういったところがいまいち分からないので、その点を差し引いて星3つにします。
因みに黒川先生の他の本、『オイラー・リーマン・ラマヌジャン』などでは、セルバーグのゼータ関数や合同ゼータ関数では行列式表示が可能だが、リーマンのゼータ関数では、それができないことが説明されていますが、この本だけ読んでも、そのことは良く分からないと思います。
ところで余計なことですが、第12章の建前的な話は、査読不能な望月教授の論文の件があったためだと思いますが、黒川先生が言っていることがこの本の後に出た本では違ってきてる気もするので省いた方が良かったのではないかと思います。
また「「未解決問題」でないといけない。」ともありますが、解決済みの問題であっても、その別証明を見いだすという研究もあるのではないかと思います。
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リーマン予想のこれまでとこれから 単行本 – 2009/12/1
- 本の長さ181ページ
- 言語日本語
- 出版社日本評論社
- 発売日2009/12/1
- ISBN-104535785503
- ISBN-13978-4535785502
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商品の説明
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
黒川/信重
1952年栃木県に生まれる。1975年東京工業大学理学部数学科を卒業。1977年同大学大学院理工学研究科修士課程を修了。その後、東京工業大学助手、助教授、東京大学助教授を経て、東京工業大学大学院理工学研究科教授。専門は整数論・ゼータ関数論・絶対数学。理学博士
小山/信也
1962年新潟県に生まれる。1986年東京大学理学部数学科を卒業。1988年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程を修了。その後、プリンストン大学客員研究員、慶應義塾大学助教授、ケンブリッジ大学ニュートン数理科学研究所所員、梨花女子大学客員教授などを経て、東洋大学理工学部教授。専門は整数論・ゼータ関数論・量子カオス。理学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1952年栃木県に生まれる。1975年東京工業大学理学部数学科を卒業。1977年同大学大学院理工学研究科修士課程を修了。その後、東京工業大学助手、助教授、東京大学助教授を経て、東京工業大学大学院理工学研究科教授。専門は整数論・ゼータ関数論・絶対数学。理学博士
小山/信也
1962年新潟県に生まれる。1986年東京大学理学部数学科を卒業。1988年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程を修了。その後、プリンストン大学客員研究員、慶應義塾大学助教授、ケンブリッジ大学ニュートン数理科学研究所所員、梨花女子大学客員教授などを経て、東洋大学理工学部教授。専門は整数論・ゼータ関数論・量子カオス。理学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 日本評論社 (2009/12/1)
- 発売日 : 2009/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 181ページ
- ISBN-10 : 4535785503
- ISBN-13 : 978-4535785502
- Amazon 売れ筋ランキング: - 562,548位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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著者について
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1962年新潟県生まれ。1986年東京大学理学部数学科卒業。1988年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。理学博士。米国プリンストン大学客員研究員,慶応大学助教授,ケンブリッジ大学ニュートン数理科学研究所員、梨花女子大学客員教授などを経て現在、東洋大学理工学部教授。
1990年より、アメリカ数学会Mathematical Reviews誌執筆者として、120篇以上の抄録を執筆している。
1995年、学位論文「Spectra and Zeta Functions of Arithmetic Groups」により、井上科学振興財団井上研究奨励賞を受賞。
専攻/整数論、ゼータ関数論、量子カオス。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2020年9月21日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2015年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
学生時代にセルバーグ跡公式をどうにか理解したいと
色々な文献を当たっていましたが、挫折しました。
どの文献も大抵、最初の数ページでわからない用語
が次々とでてきてお手上げといった状況でした。
古典的なものに関してはせいぜいフーリエ・複素解析を
やっていればだいたい理解できるのですが、跡公式にな
ると突然異分野のアイデアが混入してくるので、アマチュ
アには難しいと思います。
しかし、この本を読んでようやく跡公式がどういった
ものなのか、その概要がつかめたような気がします。
また、なぜ最近のプロのみなさんは、作用素の固有値
というアプローチでリーマン予想に向き合っているの
かも納得できた気がします。この本にはセルバーグゼー
タ関数がリーマン予想を満たすことの概要も記されて
おります。
これまで古典しかできなかった人たちすべてにとって、
跡公式を理解できることは大きな喜びだと思いますので
おススメです。
色々な文献を当たっていましたが、挫折しました。
どの文献も大抵、最初の数ページでわからない用語
が次々とでてきてお手上げといった状況でした。
古典的なものに関してはせいぜいフーリエ・複素解析を
やっていればだいたい理解できるのですが、跡公式にな
ると突然異分野のアイデアが混入してくるので、アマチュ
アには難しいと思います。
しかし、この本を読んでようやく跡公式がどういった
ものなのか、その概要がつかめたような気がします。
また、なぜ最近のプロのみなさんは、作用素の固有値
というアプローチでリーマン予想に向き合っているの
かも納得できた気がします。この本にはセルバーグゼー
タ関数がリーマン予想を満たすことの概要も記されて
おります。
これまで古典しかできなかった人たちすべてにとって、
跡公式を理解できることは大きな喜びだと思いますので
おススメです。
2011年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
周知のように,リーマン予想はリーマンのゼータ関数の非自明なゼロはすべてRe(s)=1/2上にあるだろうというもので,これが成立すれば素数の分布を非常に精確に評価することができる.零点は無限に多く,しかも極めて不規則に現われるため,この問題は正面突破では解決できそうにない.それゆえ,リーマン・ゼータのいろいろな類似物を考えて,側面攻撃を考える.
本書では,オモチャのゼータであるZ-力学系のゼータ関数の解説から始めて,合同ゼータ関数,セルバーグ・ゼータ関数を紹介する.普通の本では適当に飛ばしてあるところもきちんと式の変形が書かれていて,数学好きの読者にはうれしい.特にセルバーグ跡公式に関する第9章と第10章は圧巻である.積分計算があらゆる技法を駆使して行われており,ちゃんとフォローするのは相当数学的実力のある読者でないと無理であろう.
他のレビューアーもべたほめのようなので,少しアラ探しをしておこう.p.76の3行目,「mが整数のときsin(πm/2)=(-1)^m」はひどいケアレスミス.p.78の1/(m^2+1)のmがすべての整数にわたる和を与える公式(+−のミスプリントがある)がポアソン和公式から得られる「驚き」の結果として書かれているが,これはよく知られたcot(πx)の部分分数展開式のx=√(-1)のときのものだ.同じページの例3では,何の断りもなしにxとyが始めの2式と後の2式とでは全く別の意味に使われている.
本書では,オモチャのゼータであるZ-力学系のゼータ関数の解説から始めて,合同ゼータ関数,セルバーグ・ゼータ関数を紹介する.普通の本では適当に飛ばしてあるところもきちんと式の変形が書かれていて,数学好きの読者にはうれしい.特にセルバーグ跡公式に関する第9章と第10章は圧巻である.積分計算があらゆる技法を駆使して行われており,ちゃんとフォローするのは相当数学的実力のある読者でないと無理であろう.
他のレビューアーもべたほめのようなので,少しアラ探しをしておこう.p.76の3行目,「mが整数のときsin(πm/2)=(-1)^m」はひどいケアレスミス.p.78の1/(m^2+1)のmがすべての整数にわたる和を与える公式(+−のミスプリントがある)がポアソン和公式から得られる「驚き」の結果として書かれているが,これはよく知られたcot(πx)の部分分数展開式のx=√(-1)のときのものだ.同じページの例3では,何の断りもなしにxとyが始めの2式と後の2式とでは全く別の意味に使われている.
2018年1月20日に日本でレビュー済み
読めば読むほど凄い本だなあと感嘆せざるを得ない本である。
代数から解析へ、解析から幾何へ、幾何から代数へとまるで孫悟空の様に縦横無尽に
飛び回る。アッ、あれはお釈迦様の指だ!というシーンも有ったりして・・・・・。
ストーリーの運び方も、Sir アーサー・コナン・ドイルの『四つの署名』の上を行くサスペンションと、映画『スターウォーズ』ばりのエピソードの多さ(個人的にはHomの個数も解説して欲しかった)も魅力!
今後『黒川・小山までと黒川・小山から』と言われるようになるのじゃないかという予感がする本である。
セルバーグがどれ程偉いのか?素人の私はこの本を読んで初めて知りました。
黒川・小山両先生には深く感謝申し上げます。
黒川先生は日本の数学者には珍しく、人を容れる度量の大きさと優しさのある西郷隆盛(西郷ドン)を彷彿させる先生で、
小山先生というこれ又スゴい先生と共著されているのもその人間的魅力のなせる技か?
孤高の岡潔先生とは全く別のタイプの数学者だと思います。
数年後には岩波書店あたりから全集(日本のブルバキ、分売は許さず)ガ出版されると思うけれど
そのときは是非ミスプリハ訂正される事を期待して居りマス。
代数から解析へ、解析から幾何へ、幾何から代数へとまるで孫悟空の様に縦横無尽に
飛び回る。アッ、あれはお釈迦様の指だ!というシーンも有ったりして・・・・・。
ストーリーの運び方も、Sir アーサー・コナン・ドイルの『四つの署名』の上を行くサスペンションと、映画『スターウォーズ』ばりのエピソードの多さ(個人的にはHomの個数も解説して欲しかった)も魅力!
今後『黒川・小山までと黒川・小山から』と言われるようになるのじゃないかという予感がする本である。
セルバーグがどれ程偉いのか?素人の私はこの本を読んで初めて知りました。
黒川・小山両先生には深く感謝申し上げます。
黒川先生は日本の数学者には珍しく、人を容れる度量の大きさと優しさのある西郷隆盛(西郷ドン)を彷彿させる先生で、
小山先生というこれ又スゴい先生と共著されているのもその人間的魅力のなせる技か?
孤高の岡潔先生とは全く別のタイプの数学者だと思います。
数年後には岩波書店あたりから全集(日本のブルバキ、分売は許さず)ガ出版されると思うけれど
そのときは是非ミスプリハ訂正される事を期待して居りマス。
VINEメンバー
この本は数学の最大の難問であるリーマン予想とその周辺の研究の進展の歴史を全4部構成で解説するもので、その第3部「リーマン予想からの進展」が核心部をなす。
そこでは、ゼータ関数の零点はあるエルミート作用素の固有値に関係するのではないかというヒルベルトとポリヤによる「固有値解釈」が成立する二つのゼータ族である「合同ゼータ関数」と「セルバーグゼータ関数」が詳しく解説されている。ここで特筆すべきは「セルバーグ跡公式」と「セルバーグゼータ関数」発見の素晴らしさの解説で、リーマンの明示公式の拡張である「ヴェイユの明示公式」と「セルバーグ跡公式」の類似性から、対応するゼータ関数の存在を察知したセルバーグの偉大さを実感できると思う。
セルバーグ跡公式をコンパクト空間(例えば、複素上半平面を双曲型のフックス群で割った閉リーマン面)に限定し、スペクトル項が離散スペクトルからの寄与になる場合だけを解説する入門書が多いが、本書では非コンパクトの場合の典型としてSL(2,Z)の跡公式が詳しく扱われており非常に好感が持てる。放物型の共役類の存在が如何に理論を難しくかつ面白くしているのか、キーポイントとなる「実解析的アイゼンシュタイン級数のフーリエ展開」の素晴らしさとともに、ぜひ鑑賞して頂きたい。
ここまでフォローされた方に、「保型形式の数論」を続けて勉強される事をお薦めしたい。本書に直接関連する部分でも、「クロネッカーの極限公式」や「クズネツォフ跡公式と和公式」など、実に素晴らしい理論と応用がある。「数論II」(岩波)の9章と11章を一読された後、本橋著『リーマンゼータ函数と保型波動』やIwaniec-Kowalski著『Analytic Number Theory』(AMS Coll Vol. 53)の14〜16章などを参照されると、更に広大な展望を得る事ができると思う。
そこでは、ゼータ関数の零点はあるエルミート作用素の固有値に関係するのではないかというヒルベルトとポリヤによる「固有値解釈」が成立する二つのゼータ族である「合同ゼータ関数」と「セルバーグゼータ関数」が詳しく解説されている。ここで特筆すべきは「セルバーグ跡公式」と「セルバーグゼータ関数」発見の素晴らしさの解説で、リーマンの明示公式の拡張である「ヴェイユの明示公式」と「セルバーグ跡公式」の類似性から、対応するゼータ関数の存在を察知したセルバーグの偉大さを実感できると思う。
セルバーグ跡公式をコンパクト空間(例えば、複素上半平面を双曲型のフックス群で割った閉リーマン面)に限定し、スペクトル項が離散スペクトルからの寄与になる場合だけを解説する入門書が多いが、本書では非コンパクトの場合の典型としてSL(2,Z)の跡公式が詳しく扱われており非常に好感が持てる。放物型の共役類の存在が如何に理論を難しくかつ面白くしているのか、キーポイントとなる「実解析的アイゼンシュタイン級数のフーリエ展開」の素晴らしさとともに、ぜひ鑑賞して頂きたい。
ここまでフォローされた方に、「保型形式の数論」を続けて勉強される事をお薦めしたい。本書に直接関連する部分でも、「クロネッカーの極限公式」や「クズネツォフ跡公式と和公式」など、実に素晴らしい理論と応用がある。「数論II」(岩波)の9章と11章を一読された後、本橋著『リーマンゼータ函数と保型波動』やIwaniec-Kowalski著『Analytic Number Theory』(AMS Coll Vol. 53)の14〜16章などを参照されると、更に広大な展望を得る事ができると思う。