PHILE WEB(ファイルウェブ) プロによる商品レビュー
王道を行く基本構成と外見を継承しつつ、現代の真空管セパレートアンプにふさわしい質感の高いサウンドが楽しめる
FOCAL「SOPRA N゜1」と組み合わせ試聴する。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、ピアノが隅々まで鳴り切って、ホールの空気全体を揺るがす描写に凄みがある。オリジナルのMQ-88uも出力に十分な余裕が感じられたが、MQ-88uCは駆動力と低音の制動力に磨きがかかったように思う。
オーケストラがエモーショナルな旋律を力強く奏でるフレーズでは、コントラバスのピチカートがハーモニーを下から支えているのだが、支えが厚く音に芯があるため、和音の変化が曖昧にならず推進力をキープする。チェロをはじめとする弦楽器が歌い込むフレーズでは、音色の艶やかさと濃密な表情が聴きどころで、弱音でも乾いた音調になったり響きが痩せることがない。
ショスタコーヴィチの第8番では熱のこもったヴィオラの音色に加え、切れ込みの鋭さとリズムの躍動感に感嘆させられた。ティンパニの打撃は思わずハラハラするほど強靭でインパクトがあり、ここぞというときに発揮する底力の深さを実感した。
前作から世代交代を果たした最新のモデルの濃密で力強い音を聴きながら不変の価値に思いを馳せるのもいいものだ。
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元記事URL:https://www.phileweb.com/review/article/201803/28/2964.html
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文:山之内 正
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執筆日:2018/3/28