理路整然としていて平易な言葉遣いなのでとても分かりやすい。
全方位強行外交=戦狼外交を繰り広げる習近平「皇帝陛下」の中国が、なぜそういう方針を採っているのか、諸外国がそれに対抗するにはどうすればいいのかが簡潔に述べられています。
曰く、歴史的に周辺に対等の国が無かったので、「国力に差はあれど形式上は対等」という外交の基本そのものを理解できない。
国民から民主的な手続きを経て選出されているわけではないので、常に共産党は強く正しいと国民に見せ続ける必要があり、ゆえに諸外国を力と金で屈服させようとしている。
諸外国が中国に対抗するには、習近平・共産党の思い通りに行かない事を見せつけて恥をかかせてやればいい=中国の要求に対してNOを突きつけるだけでいい。
なるほど、と頷けることが多々あります。
強大な国が力で周辺国を押さえつけようとすれば、小国が団結して結果として大国が敗北する。
革新的な技術は革新的ゆえに使い方が分からず、保守的な組織(軍隊)によって排除される。
確かにその通りです。
ですが、唯一納得がいかないのが海軍戦略についてです。
要約すれば「現代において水上艦艇は全て潜水艦の標的でしかないのだから、観艦式などで並べて見せる外交用でしかなく実用的には全くの無駄」。
これはミサイル万能主義に通じる極論です。
例えば潜水艦だけではP-3、P-1、P-8、SH-60Kといった「空からの対潜戦」に対抗できません。
水中から対空監視レーダーを使う事も、可視光で監視する事も出来ず、浮上すればその時点で哨戒機や水上艦艇のレーダーに捕捉される可能性が極めて高い。潜水艦発射対空ミサイルはドイツで開発中だが、いずれにせよそれを発射すればその時点で潜水艦の所在地を暴露してしまう。
従って潜水艦が安全に行動するには敵哨戒機を排除する必要があり、その為には対空能力が高い水上艦艇が必要であり、更に水上艦艇を守るためには高いセンサー能力を持つ早期警戒機・哨戒機・また制空能力が高い固定翼戦闘機が必要になります。
水上艦艇、潜水艦、航空戦力は全て相互に補い合っています。
また空母不要論じみた事も書いていますが、空母の役目は洋上での制空権(航空支配)確保と、何よりも内陸への戦力投射です。
ルトワックが本書中で称揚している大まかな基地ではなく基地の中の特定の施設を狙った「精密爆撃」、そのプラットフォームが空母です。
空軍が進出するには近隣の国と協定を結び基地を借りる必要がありますが、公海上に浮かぶ空母ならそんな必要は無く、迅速に戦力を投射でき、それこそが空母保有国の国際社会に対するプレゼンスとなっているのです。
ルトワックの言うように潜水艦が最強だからと言って潜水艦だけで海軍を構築したとしましょう。
それはチョキしか出せないジャンケンであり、敵は安全な上空から潜水艦を探して対潜爆弾や航空魚雷をばら撒いていればいい。
1000メートル近い深海で息を潜めていれば見つかる可能性は低いでしょうが、それをやるのは核抑止を担うSSBNのみであり、核戦力はおいそれと使うわけにはいきません。また攻撃型潜水艦は誤射を防ぐために襲撃前に潜望鏡で標的を確認するのが基本ですから、必ず哨戒機が探知できる深度まで浮上する事になります。
ルトワックは確かに華々しい経歴を持ち、連邦政府機関に雇用されるほどの人物ではありますが、当の機関は中国を「外交というものをそもそも理解していない」とするルトワックと「100年の計で物事を進める凄まじい戦略家である」ピルズベリーの両名を雇用してもいます。
「権威ある学者がこう言っているから中国は脅威ではない」と鵜呑みにするのは間違いで、あくまで学者による分析の一つとして参考にすべきです。
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ラストエンペラー習近平 (文春新書 1320) 新書 – 2021/7/19
| エドワード・ルトワック (著) 著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます この著者の 検索結果 を表示 |
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ますます緊張を高める米中関係。「習近平は、完全に全方位敵対路線に入った」と著者は語る。「最後の皇帝」習近平は何を目指すのか?
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2021/7/19
- 寸法10.9 x 1 x 17.3 cm
- ISBN-104166613200
- ISBN-13978-4166613205
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2021/7/19)
- 発売日 : 2021/7/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 200ページ
- ISBN-10 : 4166613200
- ISBN-13 : 978-4166613205
- 寸法 : 10.9 x 1 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 6,394位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 2位兵器・戦闘機
- - 2位東欧のエリアスタディ
- - 3位ヨーロッパのエリアスタディ
- カスタマーレビュー:
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2021年7月26日に日本でレビュー済み
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中国がどのように物事を捉え、国家戦略を構築し、また、その戦略を変化させていったかという点について、本書の説明は簡潔明瞭を極め、非常に読みやすいものとなっています。
ただ、これまでの同著者の書籍を既に読んでいる方が本書をお読みになると、やや物足りないと思われるかもしれません。
確かに、中国の戦略というものを、この2021年夏の時点で考察していく上では、本書はやはり有益と言えます。
しかし、内容の根底部分では、既に刊行されている同著者の書籍(特に『中国2.0』『戦争にチャンスを与えよ』)と似通っているので、そこから考えると新しさや読み応えという点では、やや弱く感じます。
ただ、本書では中国というキーワードに加え、新たに「習近平」という視点を持ち込んでいるのは新味です。これに加え、国際社会での日本の立ち位置が変化した、という著者の指摘があるのも挙げておきます。
現状、中国は戦略の論理を理解できていない、と著者は述べています。また、エマニュエル・トッドは中国の未来を別の視点から悲観しています(※)。中国が今後どのような振る舞いをするにせよ、あるいは国そのものが変化していくにせよ、国際社会に多大な影響を与えることは否定できません。
※『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』 エマニュエル・トッド 著 堀 茂樹 訳 文春新書
ただ、これまでの同著者の書籍を既に読んでいる方が本書をお読みになると、やや物足りないと思われるかもしれません。
確かに、中国の戦略というものを、この2021年夏の時点で考察していく上では、本書はやはり有益と言えます。
しかし、内容の根底部分では、既に刊行されている同著者の書籍(特に『中国2.0』『戦争にチャンスを与えよ』)と似通っているので、そこから考えると新しさや読み応えという点では、やや弱く感じます。
ただ、本書では中国というキーワードに加え、新たに「習近平」という視点を持ち込んでいるのは新味です。これに加え、国際社会での日本の立ち位置が変化した、という著者の指摘があるのも挙げておきます。
現状、中国は戦略の論理を理解できていない、と著者は述べています。また、エマニュエル・トッドは中国の未来を別の視点から悲観しています(※)。中国が今後どのような振る舞いをするにせよ、あるいは国そのものが変化していくにせよ、国際社会に多大な影響を与えることは否定できません。
※『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』 エマニュエル・トッド 著 堀 茂樹 訳 文春新書
2021年8月15日に日本でレビュー済み
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全六章のうち、前半の三章はタイトル通りの内容で、最近の中国の動きも反映されていて俯瞰的な内容になっていた。しかし、後半の三章は中国・習近平には直接関係のない戦争論、戦略論、兵器の革新の歴史などばかりでタイトルだけで購入した読者を裏切るものである。
前半は著者の「中国4.0」のダイジェスト版であるし、後半は著者の専門のウンチクをまとめてある。
習近平のみの内容を期待した読者は半分期待外れに終わるが、戦争。戦略・兵器の歴史をまとめて読むことができるのは付録的な価値がある。
どうしてこんな内容になったかというと、訳者が実は著者の過去の著作やインタビューの内容をまとめてダイジェスト版にしている一冊であるからと思われる。著者はこの本のために書き下ろしたわけではなく、編集人として訳者がまとめたものである。だとしたら、奥山真司「訳」を奥山真司「編集・訳」と表紙に表示すべきである。
文春文庫の誠意を求めるものである。
前半は著者の「中国4.0」のダイジェスト版であるし、後半は著者の専門のウンチクをまとめてある。
習近平のみの内容を期待した読者は半分期待外れに終わるが、戦争。戦略・兵器の歴史をまとめて読むことができるのは付録的な価値がある。
どうしてこんな内容になったかというと、訳者が実は著者の過去の著作やインタビューの内容をまとめてダイジェスト版にしている一冊であるからと思われる。著者はこの本のために書き下ろしたわけではなく、編集人として訳者がまとめたものである。だとしたら、奥山真司「訳」を奥山真司「編集・訳」と表紙に表示すべきである。
文春文庫の誠意を求めるものである。
2021年7月24日に日本でレビュー済み
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ルトワックと奥村真司両氏による著作はいつ読んでも明瞭かつ痛快である。著者は持論である「戦略のパラドックス」論を用い、習近平の中国が大国意識に基づいて採るさまざまな強硬政策が、実は相手のリアクションが見えていない愚策であると指摘する。そしてアメリカのみならず、「小国」と見なされている世界の各国が「No」を突きつけることが、習近平を「つまずかせる」ために有効であると説く。
著者の説くところは明快だが、習近平の弱点だけを知って気分がせいせいするだけでは、本書の価値もそのへんの嫌中本と変わらないものになってしまうであろう。
果たして著者の言うように、日本がアメリカをはじめとした世界各国とどこまで対中国パートナーシップを築くことができるだろうか?本書を読んでいる最中に五輪外交で菅総理とフランスのマクロン大統領が会談したニュースを目にしたが、地政学もしくは地経学的にもっと近い韓国や台湾との関係はどうであろう?
あとターゲットはあくまで独裁者である習近平であり、単純に反中であればよいというものでもない点にも留意したい。
著者の説くところは明快だが、習近平の弱点だけを知って気分がせいせいするだけでは、本書の価値もそのへんの嫌中本と変わらないものになってしまうであろう。
果たして著者の言うように、日本がアメリカをはじめとした世界各国とどこまで対中国パートナーシップを築くことができるだろうか?本書を読んでいる最中に五輪外交で菅総理とフランスのマクロン大統領が会談したニュースを目にしたが、地政学もしくは地経学的にもっと近い韓国や台湾との関係はどうであろう?
あとターゲットはあくまで独裁者である習近平であり、単純に反中であればよいというものでもない点にも留意したい。
2021年8月29日に日本でレビュー済み
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「あの国では現場の指揮官の皆が野望を抱いており、『こうすれば習近平が喜ぶだろう』と考え、率先して動く傾向がある。むしろ、上からの指令を待つことのほうが少ないかもしれない」(月刊VOICE2021.9)
エドワード・ルトワック氏のこの中国描写がスっと腹落ちした。その瞬間、氏のこの本を読もうと決めた。
この著者、エドワード・ルトワック氏とは何者か。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問。戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。
さて、では著者の捉える中国とはどんなものか。著者の次の表現がわかりやすい。
「桂氏の釈放を求めるスェーデン政府を中国の駐スェーデン大使が『48キロ級のボクサーが、86キロ級のボクサーに挑み続けている』と揶揄」
「北京の人々は他国の安全を脅かし、その国民の命を奪っても、相手が経済、すなわち金の力に平伏すだろうと考えている」
「中国は現在、国際社会で守られているルールに縛られることなく、全て自分で決めた『国内法』によって行動し、他の国がそれに従うことを求めている」
これらを読んで私が頭の中に思い浮かべたのは、独りよがりのジャイアン(笑)。いや、これは私見だし、ジャイアンに対しては大変失礼な話かもしれない(が、それは容赦願いたい)。著者はこのジャアン的思想こそが、中国を破滅に向かわせるという。それが、この本のタイトルに込められた意味でもある。
有益な本であることに間違いはないが、一点、注意はしておきたい。そもそも一国を理解するのに、本一冊読めばOKなんてことはない。説得力はあるが、あくまでも1つの捉え方に過ぎないと言うことだ。
だが、これまでとこれからの中国を理解する上でヒントにはなる。少なくとも、今後の中国のニュースを見る目が変わる。ニュースを見て、彼らがまだ「戦狼外交」を続けているのか、それゆえ破滅に向かっているのか、それによって我々がどういう行動を取るべきか考えることができる。
エドワード・ルトワック氏のこの中国描写がスっと腹落ちした。その瞬間、氏のこの本を読もうと決めた。
この著者、エドワード・ルトワック氏とは何者か。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問。戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。
さて、では著者の捉える中国とはどんなものか。著者の次の表現がわかりやすい。
「桂氏の釈放を求めるスェーデン政府を中国の駐スェーデン大使が『48キロ級のボクサーが、86キロ級のボクサーに挑み続けている』と揶揄」
「北京の人々は他国の安全を脅かし、その国民の命を奪っても、相手が経済、すなわち金の力に平伏すだろうと考えている」
「中国は現在、国際社会で守られているルールに縛られることなく、全て自分で決めた『国内法』によって行動し、他の国がそれに従うことを求めている」
これらを読んで私が頭の中に思い浮かべたのは、独りよがりのジャイアン(笑)。いや、これは私見だし、ジャイアンに対しては大変失礼な話かもしれない(が、それは容赦願いたい)。著者はこのジャアン的思想こそが、中国を破滅に向かわせるという。それが、この本のタイトルに込められた意味でもある。
有益な本であることに間違いはないが、一点、注意はしておきたい。そもそも一国を理解するのに、本一冊読めばOKなんてことはない。説得力はあるが、あくまでも1つの捉え方に過ぎないと言うことだ。
だが、これまでとこれからの中国を理解する上でヒントにはなる。少なくとも、今後の中国のニュースを見る目が変わる。ニュースを見て、彼らがまだ「戦狼外交」を続けているのか、それゆえ破滅に向かっているのか、それによって我々がどういう行動を取るべきか考えることができる。








