「山と渓谷」の最新刊で名著中の名著として紹介されており、(タイトルだけは聞いていたが)これは読まねばとアマゾン検索。
文庫版と標準版、それぞれ書籍版とKindle版の計4種類あるが、中身は同じ様子。
書籍版は【畦地梅太郎さんの表紙】であり(ここ重要!下線引きたい)、これ目的だけでも欲しいところだが、ちょうど2019/2/14に文庫版Kindleが出たばかりのようなのでこれにした。書籍よりちょっと安い。
いわゆる原版(廃盤後?)は山小屋まで行かねば買えなかった「幻の名著」として古書店で高額取引されていたと聞いたことがある。これが電子書籍で数百円で読めるなんて、なんて良い時代なのだ。
さて、レビューについては標準版のほうで皆様が熱く熱く語られているので、私は簡素にする。
昭和初期の著者(小屋主)の実体験にのっとり、山賊たちとの出会い、山賊たちとの暮らし、物の怪、小屋の生活、遭難救助などなどが記されている。
発刊は古いが文体は平易で大変読みやすく、また内容の奥深さ、冒険心、ミステリアスな伏線、山の智恵、当時を知る資料的価値・・・様々な要素が渾然一体となり押し寄せてくる。
特に物の怪に関しては同類本では滅多に読む機会は無く、本当に興味深い。
オーイ、オーイ!
これが名著たるゆえんか!
思わず寝食を忘れて一気読みしてしまった。こんな書籍は久しぶりだ。
私が星評価をするのもおこがましい。★5以外はありえない。
無理に難を挙げれば、序盤から中盤(山賊との出会い~物の怪)にかけては世俗を離れ脳内が山奥を彷徨っていたが、突然の遭難救助の話題転換で、一気に現実に引き戻されてしまった点か。二冊に分けても良かったのかもなぁとも感じたが、後半は後半でまた惹きこまれる。
保存用に書籍版も買っておくか・・・
***追記***
本の最後に、山賊たちのプロフィールとその後、後から書かれた伊藤さんによる書下ろしなど、加筆された痕跡があります。書籍版や標準版にあるかは未確認ですが、時代的に「幻版」には無かった記述と思われます。
***追記2***
山賊たちの「山の暮らし」のパートに興味を惹かれましたら、お薦め本を思い出しました。
「山人として生きる 8歳で山に入り、100歳で天命を全うした伝説の猟師の知恵 (角川文庫) 志田 忠儀 (著) 」
Kindle、書籍とも600円くらいです。
舞台は東北、山小屋ではなく麓の民宿、山賊ではなく正統派のマタギとの違いはありますが、山の生活、釣り、狩猟、山登り、遭難救助、ガイド、山の労働などなど、本書の興味と重なる部分が多くあります。
こちらもお薦めです。
せっかくの機会なので、本書が好きな方へのお勧め本。
山小屋モノで面白かったのは、現代の小屋主なら南アルプスの「山小屋物語」、雰囲気重視の文学調なら「山小屋の灯」。後者は新しいのに、伊藤さんの時代を脈々と受け継ぐ何かを感じられる。
レスキューものなら「穂高のレスキュー日記」、かなり異色だがトウホウ・シノさんの「空飛ぶ山岳救助隊」、アマゾンで買えない古書だが「ピッケルをもったお巡りさん」。空飛ぶ~も寝食を忘れて一気読みしてしまった。
民俗もの・・・この時代の山人や農村の風習なら宮本常一「山に生きる人々」「忘れられた日本人」。どちらも一般向けの著名本ですね。
あと何冊か読んだが、お勧めはここまで。
***追記3***
一番重要な情報を忘れていました。
これもファンの多い名著たるゆえんでしょうか。本書には関連本が出ています。
①伊藤正一写真集「源流の記憶:黒部の山賊と開拓時代」。本書は文章だけですが、こちらは本書に登場する土地も含めた写真集になっています。
②「新編 黒部の山人 山賊鬼サとケモノたち」。本書に出てくる登場人物、もちろん実在です。彼らが語る、いわばスピンオフ本。
どなたかの先行レビュワーが「黒部三部作」と仰ってましたが、私も思わず全部買って読んでしましました。
満足度高いです。
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