「失踪」と言えば、行方不明になった人間を捜索するストーリーが思い浮かぶ。シムノンにも”la disparition d’Odile”(『オディールの失踪』)というそんな小説があるが、本作はそうではない。「失踪」にあたる原題の”fuite”という言葉は通常「逃走・逃避」と訳される。48歳の裕福なモンド氏はパリでのうんざりするような生活に嫌気がさし、南仏に逃避するのである。冒頭でモンド夫人による警察への失踪届がちょっと描かれるが、その後はずっとモンド氏の視点から見られた話である。突然自発的に蒸発する人の数は全世界でかなりの数に上るだろうが、モンド氏もその一人であり、特別にその時に逃避すべき理由が発生したというわけでもない。
逃避先のマルセイユでの出会い、経験が、モンド氏の意識、自分と周囲の世界との関係の捉え方に変化をもたらし、一気に結末になだれ込む。ただ本作での意識の変化は、説得力が少し弱いかな、という感じがしてしまった。
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