グレンの妹のスィウが額に角のようなものが生える『鬼変病』に罹って東国を出奔。リンド・ヴルムに潜り込んでいるらしいと知らされるところから始まります。このスィウの探索と『鬼変病』への対処のほか、アラクネの『喪糸病』、サーフェ含め町の多くの人が罹患した『眠り病』の治療が描かれます。舞台の一部が娼婦街だったり、アルルーナの乳房(のようなもの)の鎮痛治療でグレンが誘惑されたり、アラクネの診察の為にグレンが指を挿れてアラクネを悶えさせたり、薬液を掛けながら擦って夢見心地にさせながらスィウの角の皮を剥いたり、なかなかに(無駄に)エッチです。おいおい!
でも、メインストーリーはしっかりしたもので、グレンは責任ある医師としての自覚が出てきました。面白く読ませていただきました。
一方、モン娘のグレン争奪戦は激化。次巻では大変らしい。
でも、一番楽しめたのは、時事ネタに絡めた皮肉であり、作者があからさまにではなく伝えているごく常識的な意見です。これもあとがきにある「挑戦的な要素」なのでは?
一つは「種族が、出自が、外見が違うことは、この街では当然のこと」として出自を理由とするいじめを全否定している点。「(皆を受け入れてくれる)なんと住み良い街で御座ろうか。」とスィウに言わせています。
「民族至上主義」への批判もあります。ここは人間族がラミア、ケンタウロス、アラクネ、パーピー、ギガス、サイクロプス、オーガ、ケットシー、ゾンビ、スケルトン等など各種の魔族と共存して、それぞれの才能や特産品を流通させて恩恵を受けている世界です。にもかかわらず「人間至上主義」を掲げ、人間以外を下に見て排除しようとする東国のオークラウ公爵は痛烈に批判され、鉄槌を下されます。同時に、あらゆる種族に悪人も善人もいるので種族問題と間違えるなとアルルーナに言わせています。
もう一つが「自由貿易」の希求。魔族の国も含め、外国の産品の売り買いと輸送、つまり貿易を通じて、民衆も生産者も商人も関税を徴収する国も繁栄するとして、感情的閉鎖主義を打ち捨てています。
トランプさん、読んでね。
作品そのものとは関係ないですが、もう少ししっかり校正してほしい。「、」を「。」に間違えて、無意味に改行しているところが2か所ありました。
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