フレディがこの CD や過去の CD のために残した音源に、フレディの死後、追加演奏や編集が加えられたとされる CD です。フレディが制作の最後まで立ち会っていないこと、メンバーのソロ活動中の曲もアレンジされ収録されていることを理由に、一部で Queen 最後の CD ではないと批判されています。でも CD 全体に Queen による仕掛け(おそらくフレディが提案し、フレディの死後にメンバーが実践)が、いろいろ散りばめられていて、まるで気付けるかどうかの挑戦を受けているかのようです。もちろん曲順の構成も良く、そこにも仕掛けを感じます。こうした仕掛けはこの CD 以前の曲でフレディが歌詞に仕掛けた謎かけにとても似ています。(ここで言う謎かけは、例えば Don't Stop Me Now はノリよく生きてる人の話ではなく、セクシャルな行為とその自慢とそれへのお誘いの曲ですし、Bicycle Race は自転車好きな人の話ではなく、セクシャルな行為を欲している曲です。そうした解釈のヒントはすべて歌詞に書かれています。私はどちらの曲も大好きな曲と公言するのは躊躇してしまいます。でも日本人へのアンケートではどちらも必ず上位にくる曲で、日本人はいつからそんなにエロくなったのかと思ってしまいます。)ケバケバしいだけが Queen ではない、歌詞とメロディに隠された謎解き、それが私にとっては Queen の魅力です。その意味でこの CD は名実ともに Queen 最後の、そして最高の謎かけの CD です。隠しトラックになっている 12 曲目と 13 曲目にももちろん謎かけがあります。
ジャケットについて
ジャケットと CD のおもて面はフレディ独りの後ろ姿のポーズで、フレディのソロ活動時の曲 I Was Born To Love You のPV 映像(You Tube の Queen Official Video で視聴できます)や写真からコラージュして取ってきたのだろうと思います。また、この CD 発売後に発売の「ジュエルズ」のジャケットにも使われているフレディの写真と同じだと思いますが、そもそもアルバム Made in Heaven が先です。また、フレディの死後発売されたこのCDのジャケットを見た世界中のファンの多くは、フレディを偲んで、この写真の風景の、カナダにある当時フレディ名義のスタジオとその周辺である湖畔に行き、実際の湖畔は湖畔でしかなく、フレディ感もQueen感もないため失望しました。そのことを知ったQueenのメンバーが、そのスタジオをQueen名義にし、この写真通りのフレディ像を建てました。当時の有名なエピソードです。日本での同様で同時期のエピソードで言えば、尾崎豊が亡くなる直前に駆け込んだ一般人の方の家や、高校時代に渋谷駅から青学高校までの途中にある某生命保険会社のビルのペデ上へ、尾崎ファンが行ったことと同じです。そうすることでしかフレディや尾崎が亡くなったことを受け止められなかったのだろうと思います。さらに、ジャケットと中の紙の裏面はフレディ以外のメンバー3人の後ろ姿で、頭は空を見上げている角度です。Queen として最後の CD なのに、なぜ1人と3人の対比の写真にしたのか、つまりなぜ4人揃っての写真にしなかったのか、この理由の解釈は様々あり得ると思いますが、この対比も謎の仕掛けと思っています。CD 収録曲の謎かけが解ければ、この対比の写真の解釈はどの人もおそらく同じになると思います。わざわざ CD を買わずダウンロードで良い時代でも、このジャケットを見ると、絶対にジャケ買いしとかないとと思えるものです。
曲の仕掛けについて(解釈は人によって違うでしょうから、以下の解釈が絶対に正しいと主張する意図は全くありません。特に Queen の曲の場合、何度も聞いているうちに裏の意味や意図がやっと分かったり、解釈が変わったりするので、今後も CD を何度も聞いて解釈が変わるかもしれません。また、英語の次にカッコに入れてある日本語は、謎解きのヒントを消さないように私が付けた訳で、CD に付いてくる歌詞カードの日本語タイトルや日本語訳の歌詞とは異なります。そもそも歌詞カードの日本語タイトルは全て英語をカタカナにしているだけで、意味が分かりにくいものばかりです。
1. 1回目の It's A Beautiful Day(美しい日)
とても短い曲です。音量を上げておかないと気付かないくらいの静寂のような静かなメロディの後、朝日を浴びて気分の良さそうな雰囲気が出ているピアノによるメロディと鳥の鳴き声の出だしに、伸びやかなフレディの声が続きます。そもそもこの曲は1980年の Queen のライブ時にフレディが即興で行った演奏が基になった曲とも言われていますが、実際の作詞作曲は Queen とクレジットされています。歌詞は positive 多めで、少しの negative が含まれていて、全体的には明るい曲調で、フレディ亡き後発売する CD の1曲目として、歌詞もメロディもふさわしい曲に感じます。
2. Made in Heaven(天国で作られた)
この曲の歌詞は、ざっくり言うと、「良いことも悪いことも、全て運命として生まれるときに天国で決められていた、それを受け入れる」ということです。日本人にとって天国は死んでから行くところですが、西洋人にとって天国は人が生まれるところ(神によって作られるところ)でもあり、死んでから神の元に帰るところでもあります。フレディのソロ活動時の曲で、アルバム Mr. Bad Guy に収録された曲です(You Tube でアルバムタイトルと曲名を検索すれば、Queen Official Video として原曲が聴けます)が、Queen 版としてアレンジされ(原曲と比べ、演奏の音の厚みと迫力が増して数段良くなっていると思います)、わざわざこの曲をこの CD に入れたことに意図を感じます。この曲のタイトルが CD タイトルになっているということは、この CD は、日本でよく誤解されているような、CD 発売がフレディの死後4年経ってからであることと絡めて「天国で作られた曲・CD」ということではなく(そもそもこの誤解は、CD に付いてくる日本人ライターによる解説で「このCDはまさに天国で作られた」と書いてあるからだと思います。ライター個人の感想と Queen の意図は区別して、Queen の歌詞とメロディに基づいて謎解きをしたほうが良いです)、真の意図は「フレディは死を天国で決められていたことなので受け入れていた」ということだと思います。ここまでの曲でこの CD はフレディの遺書なのかと思えます。
3. Let Me Live(私を生きさせてくれ)
ゴスペル調で、全体のコーラスは女性の声で、メインボーカル部分は3人、フレディ →(おそらく)ロジャー →フレディ →(おそらく)ロジャー →(おそらく)ブライアン → 再びフレディの順番です。フレディ以外の2人のしわがれた声も、曲調にすごく合っています。初めてこの曲を聴いた時、ロジャーの声がロッド・スチュアートの声に思えて、すごく驚きました。でもアルバムのクレジットにはロッド・スチュアートの名前はありません。CD に付いてくる日本人ライターによる曲紹介文によると、この曲は一説では、過去に Queen がスタジオ収録していた際に遊びに来たロッド・スチュアートとフレディで声入れをしたと言われていて、この CD のために、フレディの部分は残し、ロッドの部分だけを削り、ロジャーとブライアンの歌唱に入れ替えたと言われているそうです。ロジャーの遊び心というか、いたずら好きな性格のため、ロッドの声により似せたのかもしれません。歌詞は、文字通りに解釈すれば恋人への歌詞です、でも少し発展させて解釈すると、解散寸前まで行ってライブエイドでの共演のおかげで解散せずに済んだ Queen の各メンバーから各メンバーへのメッセージにも思え、さらにフレデイ亡き後に聴くと、まるで神への祈りに聞こえます。状況次第で違う解釈になり得るのは、Queen のすごいところです。曲全体のゴスペル感は、Queen の曲 Somebody to Love (愛すべき人)よりも増しています。ゴスペルにつきものの拍手の迫力も増しています。
4. Mother Love(母の愛)
この CD のためにフレディとブライアンで作った最後の曲と言われ、実際のクレジットも Queen ではなく、フレディとブライアンになっています。歌詞については、号泣もので、死を直前にし、当時フレディが置かれていた状況とか、心情とかが素直に飾らずに書かれています。何度聞いてもどう考えてもフレディの遺書に思えます。ざっくり言うと、よく誤解されている「母の愛に感謝している」ではなく、「母のような無償の愛で包んで愛してくれ」です。そうした愛を求める対象は、恋人→ 母 →ファンの順番で、ブライアンのギターの後、最後はそうした愛をもらえる所に行くと歌っています。やっぱり天国に行くことを受け入れていたのかと理解していると、歌唱部分は終わります。ただし、この天国部分の歌唱はフレディの声ではなく、おそらくブライアンです。ギターパート後で、かつエコーをかけて違和感がないようにし、フレディでないことを分からないようにしていると思えるので、ブライアンが歌った意図はおそらくなく、フレディが精神的に、あるいは病気のため体力的にこの部分を歌えなかったのか、あるいはすでにフレディがこの世にいなかったのかだろうと想像しています。歌唱部分が終わっても曲はまだメロディが続き、特記すべきは、ライブエイド時のフレディと観客との有名な声の応酬(You Tube で Queen Official Videoで視聴できます)の一部が入っていることです。聴いているとフレディの声に自然と声を返してしまいます。この声の応酬はどんな意図のために入れたのか、ファンにもそうした愛で包んでくれと言っているように思えます。あるいは、そうした愛をフレディが感じた場面として、あのライブエイド時の音を入れたのかもしれません。この声の応酬の後、最後には赤ちゃんの泣き声が入ります。フレディの死後の生まれ変わりを暗示するかのようです。とても印象的な曲終わりです。
5. My Life Has Been Saved (私の命は救われてきた)
短い曲ですが、一番解釈が難しかった曲です。歌詞を文字通り訳せば、世界は無情な死で溢れている、新聞を読むと人の死ばかりだ、神様ありがとう、私は今も救われて(救ったのはもちろん神)、生きている、です。歌詞はこんな内容を 2 回繰り返します。キリスト教や英国国教会(英国人が属する宗教で、ざっくり言えば、英国は昔キリスト教国家(キリスト教を国家の宗教とし、キリスト教の戒律に基づいて国家を成していた国家)だったのに、英国王ヘンリー 8世が不倫をし、不倫相手との間できた子供を世継ぎとして王にしたいので、子ができなかった王妃と離婚をして、不倫相手と結婚をしたいと考え、キリスト教の総本山であるローマ法王に、キリスト教の戒律違反であるけど離婚を許してくださいと何度も懇願し、でもローマ法王に、離婚するなら破門だ、英国もキリスト教国家でないとすると言われ、英国王は逆ギレし、それならキリスト教を脱退する、今から英国は英国国教会(基本的な戒律はキリスト教と同じ、ただしキリスト教と異なり離婚はOKとする宗教で、英国国教会の長は、キリスト教の長であるローマ法王ではなく、英国王とし、宗教上の儀式を行う長としてカンタベリー大主教を設置した宗派、画期的なのは宗教家よりも英国王の方が位を上にし、英国王の都合の良いように戒律を変更できるようにしたことで、なんとも型破りな王のもと誕生した宗派)の戒律を知らないと、違和感がないかも知れません。でも知っていれば、この歌詞はありえない、他人は死んでいるのに私は生きている、死んでいる人を憐れむことなく、私が生きていることを神に感謝するなんて、キリスト教でも英国国教会でも宗教上ありえない歌詞です。戒律違反に思える歌詞を誰が作詞したのかと探しても、CD に付いてくる歌詞カードでは、作詞作曲は Queenとなっています。CD に付いてくる日本人ライターによる曲のエピソード紹介文によると、作詞作曲はそもそもディーコン(他のメンバー同様に、下の名前で呼ぶなら「ジョン」ですが、「ジョン」と言うと「ジョンとポール」の「ジョン」、つまり「ジョン レノン」を連想してしまうので、「ディーコン」にしています)とあります。でもディーコンはロンドン出身の白人なので、宗教はよほどの事情がなければ(その事情は見つけられませんでしたので)英国国教会のはずです。ならば、他人が死んでいるのに憐れみを示さず、自分は生きていて良かった(つまり、他人は死んでも良い、自分さえ生きていれば)と言うはずがありません。それで、この曲の解釈が分からなくなってしまいました。その後、何度もこの曲を聴いて、ふと思ったんです。ディーコンがこの曲の歌詞をフレディに見せた時、その歌詞はフレディが歌った通りだったのだろうかと、もしかして違ったのではないかと。歌詞、また曲のタイトルには My Life Has Been Saved(私の命は救われてきた)とありますが、My ではなく、His(彼の)であったのではないかと。つまり、本来の歌詞の本当の意味は、世間は悲惨なことで溢れている、新聞を読んでも死で溢れている、神様ありがとう、彼の命は救われている(彼はフレディ)、もっと言うとつまり、フレディの死亡記事は新聞に出ていない、神様ありがとう、フレディはまだ生きている、そんな意図ではなかったのだろうかと。それを汲み取りフレディは His のところを My にして歌ったのではないかと思えてなりません、そう想定すると、宗教上の矛盾も無くなります。なぜなら、友人であるフレディが、当時原因不明で予防法も治療法も無く、ただ早晩死ぬことだけが分かっている病(HIV)になってしまうという悲劇に合い、その友人の体調や精神状態を気遣い、彼の死が訪れないよう神に祈り、まだ彼が生きていることを神に感謝している内容になるからです。もしこの想像や曲の解釈が正しいならば、歌詞を見せた時のディーコンからフレディへのメッセージと、それに対してフレディが His を My と置き換えて歌い、それをメンバーが OK としたことになります。この解釈が絶対に合っているとは言いませんが、もし合っていたら、メンバー 4 人だけの世界での応酬と了解で泣けてきます。この解釈と明るく歌うフレディの声で、なおさら泣けてくる歌です。
6. I Was Born To Love You(あなたを愛するために生まれた)
フレディのソロアルバム Mr. Bad Guy 収録の曲(You Tube でアルバムタイトルと曲名を検索すれば、Queen Official Videoで原曲が聴けます)で有名な曲です。この CD では Queen 版にアレンジされていますが、原曲と比べて演奏の音の厚みと迫力が増して数段良くなっています。また、Greatest Hits II のバージョンとも異なる所があります。原曲には無く、この CD と Greatest Hits II のバージョンにはある(真実の愛を得たことをおそらく表す)稲妻のような音で始まり、この CD ではブライアンの熱を帯びたギター、ロジャーの強いドラム、規則正しく強いディーコンのベースが加えられています。おそらくフレディの歌唱はこの CD のための歌い直しはせずに、Greatest Hits II のバージョンと同様、原曲の音源と同じです。でもそれらと異なるのは、この CD のでは曲終わりにフレディの声での It's a magic. と、笑い声が入っている点です。これは Queen の曲 A Kind of Magic の曲の最後の方に入る声の音源からおそらく取ってきたものだと思います。わざわざこのフレディの声を加えた意図は何なのか、曲が言うように愛する人に巡り会えたことが魔法とも解釈できますが、3人の熱の入った演奏に対して言っているようでもあり、この曲はこの CD のバージョンが一番好きです。"Born" のコーラスに "To Love You" と必ず返してしまいます。
ところで、この曲はフレディが男性の恋人に向けて作った曲と言われています。この曲以前のラブソング的な曲ではいろいろ仕掛けをした歌詞が多い中、この曲はとてもストレートな言葉ばかりを選んでいます。ましてそれまでフレディにとって恋は Queen の曲 Play The Game の歌詞で言えば、 play the game of love であり、セクシャルな行為は曲 Bicycle Race のようにあくまで exercise の一環だったのに、この曲では An amazing feeling comin' through.(信じられない感情が自分の中にはっきりと現れた。)と歌っています。信じられない感情とは、もちろん恋心とか愛情と言ったものでしょう。game と exercise に恋心とか愛情という感情はなかったでしょうから、やっと愛情という感情が自分の中に生まれたことと、そうした感情をもたらしてくれる人に出会えたことを喜んでいる歌詞です。ただし、その相手は歌詞では一貫して性別が分からないように You で統一していますが、当時男性の恋人に向けた曲と噂になっていたようです(PVのフレディの衣装(You Tube で視聴できます)もその噂を裏付けるのに十分だったようです)。まして歌詞では You are my ecstasy, (あなたは私の性的興奮の対象だ、これでも控えめな訳にしています。でもこれでも十分に当時の英語圏の人たちがこの歌詞を聴いて「えっ」あるいは「ひょえ〜」となった感覚は分かると思います。)と歌っています。この部分は他よりエコー強めで、声のセクシーさが増しています。まるで当時の世間を挑発するかのようです。特に日本人以外はそういう状況を踏まえて、そのつもりで聴く曲です。それもあって、そんな事情を知らない日本では日本人が好きな曲に選びますが、西洋では宗教上の理由で肯定的な評価は難しい曲のようです。それでもこの曲をこの CD に入れたことに意図を感じます。もちろん、日本人受けが良いからという理由でも、ネタ切れでもないと思います。そしてこの CD のジャケットのフレディの写真もこの曲絡みですので、ますます意図を感じます。
7. Heaven For Everyone (全ての人にとっての天国)
一説ではロジャーのソロ活動時の曲とも、また別の説ではロジャーが Queen を結成前に組んでいたバンド時代に作った曲とも言われている曲です。もちろんこの CD ではフレディが歌う Queen 版になっています。歌詞は、ざっくり言うと、世間の冷たい評価や冷たい反応を受けても、君の笑顔を見ると心が救われる、君がいて良かった、これ(世間は冷たいけど、心を落ち着かせてくれる君がいるという状況)はきっとすべての人にとっての天国に違いない、そんな歌詞を繰り返します。君はもちろん恋人のことでしょう。6 曲目の I Was Born To Love You の次に聴くと、まるで、フレディが男性の恋人と自分に対して世間は冷たい反応をするけど、その恋人に心が救われているという意味合いに聴こえてきます。
8. Too Much Love Will Kill You(多すぎる愛情がお前を殺す)
ブライアンのソロ活動時の曲です。フレディの病気が公になる前にフレディの事は想定せずに作ったとされる曲です。歌詞は、2つの(2人への)愛の間で揺れ動き、どっちかに決めないと後々まずいことになると思いながらズルズルしてしまった人といった感じで、噂ではブライアンの private のエピソードが元だとか(あくまで噂です)。ただし、この CD ではもちろん Queen バージョンでフレディが歌っています。フレディの private の噂(本当のところは当事者しか分かりませんし、当事者間でも立場で言い分が違うでしょうから、あくまで噂です)を知っていると、ブライアンの状況とは違うながらも、静かなメロディと相まって聴き手には辛いです。死の直前にこれを歌うとは、聴き手の心はざわつきます。
9. You Don't Fool Me (俺を馬鹿にするな/お前は俺を馬鹿にしていない)
タイトルからして意味深です。上記のように、英文法上、2 通りに解釈できます。また歌詞もすごく意味深です。歌詞の中の You と that girl が同じ人を指すのか違う人を指すのか、また that girl は本当に女性を指すのか、解釈がいく通りもできて、単純な言葉と表現を使っているのに、すごい曲です。でもとりあえず解釈は各自で楽しんでいただくとして、この曲はコーラスで始まり、ベースのリズム刻み、単純なメロディなのに印象的で効果的なピアノ、ギター、フレディによるコーラス "You Don't Fool Me" 、ドラムによる強いリズム刻み、といった具合にどんどん音が重なっていく始まりです。Queen らしい音の重ね方と格好良さです。そしてドラムとベースによる強く規則正しいリズムも、フレディによる歌詞も「ヤーバッバッバッバ ダッダッダ」の声も耳に残り、ピアノは単純なのに効果的、ブライアンのギターは歌いまくり(本当に歌いまくってます。楽器が歌う例とはこれだと、どうぞプロトタイプ(典型)にしてくださいって感じです)、中毒を起こします。賞を取ったのが分かります。ただ、フレディの低い時の声が全盛期とは違い、一瞬別人かと思うくらいで、病気の影響があったのかなぁと寂しさを感じます。
問題なのは、ここまでの曲順です。Let Me Live、Mother Love、I Was Born To Love You の後に、Heaven For Everyone 、Too Much Love Will Kill You が来て、さらに You Don't Fool Me が続く点です。間違いなく意図を持った曲順です。 フレディのことを考えずにはいられません。今の時代のような diversity の考え方が全くない時代で、フレディは生存中も死後にも散々批判も中傷もされていました。残されたメンバーによるフレディ擁護の意図を感じます。その意図のために、メンバーのソロ活動中の曲も Queen 版にして収録する必要があったのだと思います。つまり、よく言われているネタ切れではなく、フレディ擁護のための CD 構成です。当時のフレディ批判(どうぞネットでご確認ください、特に当時のHIV患者への誹謗中傷もご確認ください。当時子供ながら、「そこまで言わなくても」と思いました。)を考えると、追悼なんて生易しいものではありません。ここまで聴いて「ただの追悼 CD ではなかったんだ」と思いました。聴き手の心はざわついてきます。
また、I Was Born To Love You、Heaven For Everyone 、Too Much Love Will Kill You、You Don't Fool Me の順番は、フレディの、名前が明らかになっている恋人たちとの事(どうぞネットでご確認ください)や当時の世間という名のマスコミによる誹謗中傷(こちらもどうぞネットでご確認ください)を連想させます。聴き手の心は益々ざわついてしまいます。
10. A Winter's Tale(冬のおとぎ話)
とても美しいメロディに乗った、穏やかなフレディの声が聴けます。フレディが歌う冬の情景が目に浮かび、そこに自分も立ってみたいと思うような歌詞です。フレディは美しい冬の情景を情感込めて歌い上げ、Am I dreaming? (私は夢を見ているのか?)と繰り返します。美しい冬の情景を思い浮かべさせるほどの歌唱力はさすがだと思います。ただ、以前よりも張り上げないと高音が長くは出づらくなったのか、かなり割れた声で、少し寂しさも感じます。それでも、ここまで聴いてざわついていた心が少し落ち着きます。
11. 2つ目の It's A Beautiful Day(reprise)
(reprise とは音楽に関して使う場合「主題の繰り返し」の意味です。単純に It's A Beautiful Day という曲の繰り返しを意味しているわけではなく、曲内の主題と呼ばれるメロディの繰り返しを意味しますが、便宜上「2つ目の」と書きました。)2つ目のでは強いギター、ドラム、ベースが加えられ、1曲目のピアノが特徴のバージョンとは異なります。1回聴いただけでは、ピアノバージョンが、ギター、ドラム、ベースバージョンになっただけという印象です。でも何度も聴くと、2つ目のは歌詞を変え、1曲目のにある Sometimes, I feel so sad, so sad, so bad.(時々悲しくなるんだ、最悪だ) の部分を削り、前向きな歌詞だけ残しているのが分かります(歌詞カードには歌詞が全く書かれていないので、聴いて確かめてみてください)。特に No one's gonna stop me now. (今は誰も自分のことを止められない)と何度も歌い(おそらくこれが主題で、その繰り返しを reprise と言っているのだと思います)、派手で熱を持ったギターと応酬します。曲の最後のほうには Queen の曲 Seven Seas of Rhye の出だしの音(フレディのピアノ、おそらくこの CD のための追加演奏ではなく、過去の音源からの追加。これを入れたのにも意図を感じます。というのもこの曲には歴史があるからです。この曲は、そもそも Queen 1枚目のアルバムの最後の短めの曲として instrumental(歌唱がなく、楽器だけの曲)で収録されていたものですが、2枚目のアルバムでは歌詞を加え、曲も長くなって収録されています。そして2枚目のバージョンが英国での初めてのヒット曲です。Queen として思い入れのある曲です。また、この曲の日本語のタイトルは「輝ける7つの海」となってますが、英語タイトルにある Rhye はそもそも英語に実在しない単語で、「輝ける」なんて英語タイトルのどこにもありません。Rhye は何のことかと思って調べたところ、当時のフレディへのインタビューによると、フレディが幼少時代に空想した物語上の国名だそうです。その点で特にフレディにとって思い入れのある曲と思えます。)も加わります。さらに曲の途中にも、曲後(12. reprise として収録)にも、フレディの挑発的な声で Yeah が入り、静寂が来ます。陽気で前向きなフレディを聴いて CD は終わったように思えます。やっと聴き手の心は落ち着きます。
12. reprise
既に上に書いた通り、 フレディの挑発的な声で流れる Yeah
ただし、この曲は、CD の表記にも、ジャケット裏面の曲一覧にも、歌詞カードには曲リストも歌詞も、そもそも12. reprise すら書かれていません。この CD を買った人だけが聴ける、いわゆる隠し track(秘密の曲)です。11の曲の直後に流れるので、11の曲の最後の部分のように思えますが、CD 全体を機械に取り込んだ場合だけ、この部分は 12. reprise と表示が出ます。
13. reprise
CD のすべての曲が終わったと思ったら、いわゆる空間 BGM のような曲(13. reprise として収録)が次に流れます。この曲も、CD の表記にも、ジャケット裏面の曲一覧にも、歌詞カードには曲リストも歌詞も、そもそも13. reprise とも書かれていません。 この曲も隠し track(秘密の曲)です。CD 全体を取り込んだ場合だけちゃんと13. reprise と表示されます。この曲は静かな長い曲(なんと22分以上)で、歌詞が出て来ず、Queen らしくないと思って途中で止めてしまい、再び1曲目の It's A Beautiful Day を再生しました。すると1曲目の出だし(フレディのピアノ音の前の音)と最後の曲の出だしやメロディが同じであることに気づき、だからタイトルなしの reprise(主題の繰り返し)なのかと納得しました。
ただ、曲が22分以上というのは何を意図しているのか、よく分からず、今度は最後の曲のすべてを聞くと、空間 BGM のような音の中に、曲開始の10分後位と20分後位(曲の最後の部分)にフレディらしき人の声が入ることに気づきます。特記すべきは曲の最後の部分で、シャワーのような水の音とフレディらしき声の笑い声 → その声が加工されドクンドクンという音 → 夜明け、あるいは日の出をイメージしたような音 → どこかにワープしているような音 → 短めの静寂の後にフレディの声で「バブ」、の順で音が流れ、曲が終わることです。Mother Love の最後に入る赤ちゃんの声と合わせて考えると、ドクンドクンという音は心臓の鼓動で、その次に夜明けの音、最後はフレディの声で「バブ」(赤ちゃんがよく言う「バブ」です。おそらくフレディの声を加工して「バブ」になるようにしたのだと思います。フレディの声なので野太く、すごく面白いので聴いてみてください。この声の前のワープのような音はおそらく天国から地上への移動を表しているのだと思います)、こうした音の連続は、まるでフレディの生まれ変わりを暗示しているかのようです。そう思って再度聞くと、この CD に入っている曲 Heaven For Everyone の歌詞、This could be heaven for everyone.(これはきっと全ての人にとっての天国に違いない)という歌詞が頭に浮かんできます。なるほどそういう構成かと、最後の曲と1曲目は繋がっている、いわば無限ループで、無限ループのために CD の最後はこの空間 BGM のような曲にしたのだろうと思います。Heaven For Everyone という曲も謎かけのヒントのために Queen 版にしてこの CD に入れたのだろうと思います。無限ループは人間の命で言えば輪廻転生です。輪廻転生は仏教用語と言いますが、西洋人の宗教にもその概念はあります。西洋人は人は天国で神によって作られ、死後はまた天国の神の元に帰り、再び神によって作られ、人間の世界に生まれると考えます。その概念を CD 構成で表そうと試みたのかもしれません。常にその時代の新しいことをやってやろうとしていた Queen の試みをこの CD でもやっていたのだと思いました。ただ、reprise(主題の繰り返し)ではなく、例えば、Sounds In Heaven (天国の音)ぐらいのタイトルをつけたほうが理解し易かっただろうにと思います。でもそれでは大きな謎かけが1つ消えてしまうから、もったいない気もします。
この大きな謎かけのヒントはもう1つあります。この CD 発売前に Queen のメンバ−3人はゲストも呼んで、フレディ追悼 Live を行っています。その開催日は復活祭の翌日です。復活祭とは、処刑されたキリストが死んで3日後に神によって人間の世界に蘇らされた日で、キリスト教系の宗教にとって、キリストの復活を祝う日です。つまりキリストは人間なのに命の無限ループ経験者で、そんな経験は奇跡であり、キリストが神の子になった証だとみなして祝うということです。復活祭の翌日にフレディ追悼 Live を行い、同じ年にこの CD も発売するという明確に計算したスケジュールに意図を感じます。フレディの生まれ変わりを暗示し、願っているように思えます。
こうした難解すぎる解釈を要求するので、特に日本では、ほとんどの人のこの曲への感想は、「何、この曲」のようです。さらに、CD にメンバーのソロ活動時の曲も入れていることも理由になって、この CD への評価は日本では低いです。当時のアメリカでの評価はゴールドディスク、英国ではプラチナディスクです。おそらく歌詞の意味だけではなく、特に英国は謎かけ満載のシェイクスピアとマザーグースの国ですから、裏の意図も解釈された上での売り上げだろうと思います。Queen の本国である英国で評価されていて良かったと安堵します。日本でもそこそこ売れたと言いますが、フレディ追悼 CD と宣伝で謳ったからであって、音楽への評価は私には不当に低い評価に思えます。
ただ一方、フレディ、難しすぎるよー、 Bohemian Rhapsody のような1曲内だけの謎だけではなく、複数の曲にまたがるとか、CD 全体にもまたがる謎もあるなんて、Bohemian Rhapsody の数倍の難しさじゃん、とも思います。
全体的に、死に直面しているフレディ、それに寄り添っている3人のメンバーと録音アレンジャー、この5人で作った CD で、死生観、愛の喜びと負の側面、人生の終わり、命の再生、宗教観、そうしたすべてを綯い交ぜにして、出来上がった CD です。CD 全体の至る所に仕掛けがあり、おそらくこの仕掛けはフレディのアイデアのはずです。Queen の曲 Bohemian Rhapsody での仕掛けと同じか、それ以上の難解な謎の仕掛けです。他のメンバ−3人の作詞の曲には謎かけはなく、とても素直な歌詞(と言うかストレートな独白)ばかりで、フレディの、独白はしてるけど謎を仕掛けて簡単には独白の内容が分からないようにしている独白(例えば、Queen の曲 Bohemian Rhapsody とか)とは異質です。聴き手に謎が分かるかなと挑戦しているような、この CD 以前と同様の Queen (特にフレディ)らしさのある CDです。この CD には70年代のケバケバしい Queen はいません、でも歌詞とメロディに隠された謎解きという Queen の曲 Bohemian Rhapsody 以降からの魅力は健在で、その意味でこの CD は名実ともに Queen 最後の CD です。どうぞ謎解きの世界を存分に味わってください。
もちろん手元には英和辞書を用意してください。ネットで出回っている日本語への訳詞と称されているものは英語の間違いばかりで、フレディはそんな事言っていない、なぜ異なる訳をするのか、謎かけのヒントや落ちを消すな、とイライラします。一方、CDに付いてくる歌詞カードの日本語訳も、直訳では通じない、あるいは露骨すぎると思ったのか、工夫し過ぎていたり、そもそも原文の英語に対する日本語訳として間違いも残念ながら多く、やはり謎解きのヒントを消してしまっています。そうしたものを参考にすると謎解きはできません。また、日本語タイトルは全て日本語に訳されずカタカナばかりで、それでは裏の意図どころか、そもそもの意味も分からないって感じです(ただし、今までの Queen の曲に付けられた日本語訳とされるタイトルもひどいものが多いので、Queen メンバーにそれがバレて日本語訳のタイトル禁止になってるのかもと考えてしまいます。最近のハリウッド映画のタイトルがカタカナばかりなのは、日本語訳のふりした、本来の意味とかけ離れた変なタイトルをつけるのが禁止だからだそうで、それと同じかも) 。きれいな日本語にする必要はありません。英語の歌詞のまま、英和辞書の通りに訳せば、謎かけが見えるはずです。なぜなら謎解きのヒントが他の歌詞よりも異質で前後の歌詞に馴染まず浮いているからです。歌によってはフレディの声色もヒントになる場合もあります。私もまだまだ分からないところがあるので、当分この CD を聴き続けます。すでにとっくに中毒です。
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