天才的振付家バランシンと、妻でバレリーナだったタナキル・ルクラークの関係に思いを馳せることができる作品だ。これは伝記小説というジャンルになるのだろう。タナキルには自伝がないので、著者はさまざまな資料、記事、インタビューなどを駆使して、可能な限り事実に近いかたちで彼女の心の内をさぐり、彼女のバランシンに対する愛’を(そして憎しみをも)描きだしている。
バランシンに愛され、彼の創作意欲を掻き立て、これからもっと華やかなバレエ人生を約束されていたタナキルが、27歳で小児マヒになり、車椅子の人になってからの苦悩。それはバランシンの苦悩でもあった。
人の生き方を伝記で著しノンフィクションとするより、このようなかたちで小説化すると、事実を越えた「真実」が見えてくることがあるが、この作品はそれに成功している。振付の神様バランシンが、狂気と哀しみを秘めた、非常に人間臭い男として表出されている。同時に、彼の「ミューズ」として讃えられてきたタナキルも、現実を生きることで「女神」以上のもの、すなわちここでは「人間」に変身していく姿を見せている。
読み応えのある、非常に重いものをもった作品だ。
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![[ヴァーレー・オコナー, 鵺子]のミスター・Bの女神──バランシン、最後の妻の告白](https://m.media-amazon.com/images/I/41cPAsEDq6L._SY346_.jpg)
ミスター・Bの女神──バランシン、最後の妻の告白 Kindle版
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¥2,475
獲得ポイント: 25pt
【日本図書館協会選定図書】
「彼女はバランシン流に訓練された、理想的なバランシンダンサーです」
──ミスター・Bは自分の妻タナキル・ル・クラークをこのように褒め讃えていました。小さな頭、華奢な骨格、長い腕と脚の彼女は、まさにこの天才振付家のために生まれてきたようなバレリーナだったのです。
亡命ロシア人で、アメリカに渡ったときにはすでに“バレエ界のシェイクスピア”と世界中にその名を轟かせていたジョージ・バランシン。その彼の愛を勝ち取り、五番目(正式には四番目)の妻となったタナキルは、バレエ団でベストパートを踊るだけでなく、ファッション雑誌のモデル、テレビ女優、また著名な音楽家、文学者、知識人と交流する社交界の花形として、華麗で多忙な生活を送っていました。
ところが悲劇が彼女を襲います。1956年、公演先のコペンハーゲンで、27歳のタナキルは高熱に倒れ、死のような眠りから目覚めると、長く美しい脚が動かなくなっていた。小児マヒ──彼女は一夜にしてバレリーナ生命を絶たれてしまったのです。
バランシンは仕事を辞め、愛する妻の介護に専念します。タナキルの肉体に筋力を甦らせようと、彼独自のエクササイズを考案し、リハビリの手助けもします。当時の二人は、これまでになかったほどの強い絆と愛で結ばれていました。
しかし、もう二度と歩くことはできないと悟ったタナキルは、これからの自分の生き方を模索し苦しみ、バレエ団に復帰したバランシンは、妻よりも若く新鮮で優秀なダンサーたちのための振付に没頭。二人のあいだには亀裂が生じ始めるのです。
新たな夢を追い求めるタナキル、そして自分の芸術に身を投じるバランシン……。
神と謳われた天才振付家
その神の創造力を喚起した女神
──これは二人の真実の愛の物語──
「彼女はバランシン流に訓練された、理想的なバランシンダンサーです」
──ミスター・Bは自分の妻タナキル・ル・クラークをこのように褒め讃えていました。小さな頭、華奢な骨格、長い腕と脚の彼女は、まさにこの天才振付家のために生まれてきたようなバレリーナだったのです。
亡命ロシア人で、アメリカに渡ったときにはすでに“バレエ界のシェイクスピア”と世界中にその名を轟かせていたジョージ・バランシン。その彼の愛を勝ち取り、五番目(正式には四番目)の妻となったタナキルは、バレエ団でベストパートを踊るだけでなく、ファッション雑誌のモデル、テレビ女優、また著名な音楽家、文学者、知識人と交流する社交界の花形として、華麗で多忙な生活を送っていました。
ところが悲劇が彼女を襲います。1956年、公演先のコペンハーゲンで、27歳のタナキルは高熱に倒れ、死のような眠りから目覚めると、長く美しい脚が動かなくなっていた。小児マヒ──彼女は一夜にしてバレリーナ生命を絶たれてしまったのです。
バランシンは仕事を辞め、愛する妻の介護に専念します。タナキルの肉体に筋力を甦らせようと、彼独自のエクササイズを考案し、リハビリの手助けもします。当時の二人は、これまでになかったほどの強い絆と愛で結ばれていました。
しかし、もう二度と歩くことはできないと悟ったタナキルは、これからの自分の生き方を模索し苦しみ、バレエ団に復帰したバランシンは、妻よりも若く新鮮で優秀なダンサーたちのための振付に没頭。二人のあいだには亀裂が生じ始めるのです。
新たな夢を追い求めるタナキル、そして自分の芸術に身を投じるバランシン……。
神と謳われた天才振付家
その神の創造力を喚起した女神
──これは二人の真実の愛の物語──
- 言語日本語
- 発売日2014/12/27
- ファイルサイズ4248 KB
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
亡命ロシア人で、アメリカに渡ったときにはすでに“バレエ界のシェイクスピア”と世界中にその名を轟かせていたジョージ・バランシン。若くしてバランシンに愛されながらも悲運に翻弄される主人公タナキル・ル・クラーク…彼女を通してバランシンの人としての姿や創作する光景が見えてくる。神と謳われた天才振付家。その神の創造力を喚起した女神―これは二人の真実の愛の物語― --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
オコナー,ヴァーレー
小説家。ケント・ステイト大学及びノースイースト・オハイオ大学コンソーシアム芸術修士課程にて、小説と文芸ノンフィクションの書き方を教えている。ニューヨークのブルックリン在住
鵺子
日本リーダーズダイジェスト社、ニューズウィーク東京支局、新潮社(FOCUS、SINRA、文庫編集部、出版部)に勤務。リサーチ、翻訳、取材、執筆、編集などの仕事を経験し、現在は(株)チャイコの専属の編集者として書籍制作・商品企画に携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
小説家。ケント・ステイト大学及びノースイースト・オハイオ大学コンソーシアム芸術修士課程にて、小説と文芸ノンフィクションの書き方を教えている。ニューヨークのブルックリン在住
鵺子
日本リーダーズダイジェスト社、ニューズウィーク東京支局、新潮社(FOCUS、SINRA、文庫編集部、出版部)に勤務。リサーチ、翻訳、取材、執筆、編集などの仕事を経験し、現在は(株)チャイコの専属の編集者として書籍制作・商品企画に携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00RKAKP5S
- 出版社 : 株式会社チャイコ; 第1版 (2014/12/27)
- 発売日 : 2014/12/27
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 4248 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 344ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 253,058位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 182位芸能人評伝
- - 3,491位エンターテイメント (Kindleストア)
- - 12,393位歴史・地理 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年7月30日に日本でレビュー済み
Kindleの読み放題unlimitedで見つけて読み始めた。止められずに、一気に読んでしまった。これはバレエ振付家バランシンと、彼の5番目の妻であり才能あふれるバレリーナだった女性の数奇な人生を描いた小説である。非常に丁寧なリサーチやインタビューをもとにしており、ほぼノンフィクションのような、自叙伝のような仕上がりになっている。抑制された感情、美しい自然の描写、繊細な翻訳。バランシンのロシアでの幼少期や亡命から、アメリカでの新たな人生は、1950年代の息づかいを感じさせ、ロシアの生んだ大河小説のようでもある。
読んでいると私もいつしかバランシンに恋い焦がれ、動かない脚に絶望し、若いダンサーに嫉妬していた。彼も、妻も、けして平和な安穏とした人生ではない。でも苦しみながらも、生きてゆく。しなやかで強い姿に胸を打たれる。
ひとだびバレエの神様に見初められたら、バレリーナの女の子たちは彼のために踊る妖精であり、彼の夢を形にすることに命をかけてしまう。彼のインスピレーションは湧き出る泉で、芸術は食べ物のように必要なもので、美しいものを愛でることは止められない欲望なのだ。
いつかバランシンの振付のヴァルスをDVDで鑑賞しよう。とりあえず今夜はチャイコフスキーかストラヴィンスキーを聴きながら眠ろう。熱くなりすぎて、少し疲れた。あー、ひさびさに濃い読書体験だった!
読んでいると私もいつしかバランシンに恋い焦がれ、動かない脚に絶望し、若いダンサーに嫉妬していた。彼も、妻も、けして平和な安穏とした人生ではない。でも苦しみながらも、生きてゆく。しなやかで強い姿に胸を打たれる。
ひとだびバレエの神様に見初められたら、バレリーナの女の子たちは彼のために踊る妖精であり、彼の夢を形にすることに命をかけてしまう。彼のインスピレーションは湧き出る泉で、芸術は食べ物のように必要なもので、美しいものを愛でることは止められない欲望なのだ。
いつかバランシンの振付のヴァルスをDVDで鑑賞しよう。とりあえず今夜はチャイコフスキーかストラヴィンスキーを聴きながら眠ろう。熱くなりすぎて、少し疲れた。あー、ひさびさに濃い読書体験だった!