Féminin:えぇ、また「復活」?しかもショルティ先生の…。
Masculin:あれ、お嫌いでしたっけ、昔一緒に実演聴いたのに。シカゴ交響楽団初来日の’77年6月、東京文化会館で5番だったけど。
F:そりゃあ確かにね。でも貴方の手引でやっとマーラーに興味が湧いたのに、あの筋骨隆々の力づくで正直ちょっと引いちゃったのよ…。
M:まあ名画座でヴィスコンティの「ベニスに死す」をお観せしてすぐだったかなぁ。レコードもバーンスタインのをお貸ししたけど。
F:私も期待してたしオーケストラはスゴいと思ったけど、それにしても力み過ぎじゃないって思ったわ。おかげであの後向かった銀座の老舗イタリアンSの、あの四角くて薄いクリスピーなピザがまるでシカゴピザみたいにボリュームたっぷりみたいに感じちゃったもの…。
M:…さすがの食いしん坊お姉様で。でもその印象は僕も同じでしたけど、全曲を一通り録音したあとのデジタル再録第一弾だったこの「復活」はやっぱり感銘深いものがあったんですよ。最初はLPで出たけど僕はCDを待ってから買ったんで。
F:そういえば初めて終楽章のコーラスの歌詞が最後まではっきり聴き取れたのがこのCDだったって言ってたわね、音割れも歪みもなく。。
M:そう、LPじゃどんなに優秀なカートリッジでも万全な再生は不可能でしたからね、最内周部に最大振幅での最強音が来るわけだし。また冒頭の低弦も暴力的ですらあるけど、同じショルティの旧盤みたいに歪まないんで意図が明確でした。
F:そうだわ、何年か前にN響をC.E.さんが振ったのをTVで観てたけど、冒頭から合奏がガタガタで終楽章の最終和音も同じくまるで不揃いだったんで妙に感心しちゃったわ。
M:えぇ、僕も観ていて不思議だなぁと。Eの指揮がそんなに判りにくいとも感じなかったけど最初と最後が辻褄合わせたみたいにズレまくりでしたからね。まあN響としては不名誉な珍事だったのか…話を戻すと、とにかくこのショルティ新盤を最初に聴いた時は驚きましたよ。勿論ショルティ一流のこれっぱっちも耽溺することのない割り切った解釈だけど、その明快さと圧倒的な力業に。
F:ほら少し前のアバドの最初の盤のオケとは別の団体みたいね。あれはガラス細工みたいに繊細で精密でそれでいて力強さにも不足はなかったけど。これはひたすらパワフルで。
M:あの頃シカゴ響はジュリーニと9番もDGに録音していて、アバドの「復活」同様に精細な表現力を遺憾なく発揮していたけど、やっぱりショルティとだと鎖を解かれたみたいに圧倒的な力を誇示していますね。ほらショルティが「モーゼとアロン」を指揮した時に到底演奏不可能なパッセージをオケが完璧に演奏してのけたんで本人も舌を巻いたって。
F:でも後でショルティ先生は
「もう少しリラックスしてくれたらもっと良かったかもなぁ」っておっしゃってたんでしょう。なかなかままならないものなのね。
M:入院中にたまたまショルティのマーラー初録音だったアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との4番をYou Tubeで聴いたんですけど、あれは意外なほどデリケートでたおやかな佳演でしたね。ただシカゴ響との録音はどれも本来のショルティらしさ満載で、その中でも一番成功しているのがこの「復活」じゃないかなあ。
F:金釘流じゃないけれど、きっちり楷書の演奏で迫力満点てとこね…。
(TBC)
ウェブプレーヤーを開く





