「私の浮遊霊が、私のあり方をじっと見て示唆してくれる」
そんな感覚を覚えることができました。この浮遊霊の正体は後述するとして……。
現在、人材育成講座の事務局運営をしているのですが、その講座で受講生に対する「宿題」として課せられたのが、この「マンガでやさしくわかるU理論」です。講座の講師である大学の教授が、原書の翻訳版を読んだ上で、マンガでも大事なところがよくわかると「課題図書」として指定したのがきっかけです。
日頃、理論とか原理とか全く馴染みがなく、即効性の高い「やり方」ばかり追い求めてきました。が、根本的な「あり方」を見直さないといけないというのは薄々感じてきました……。とはいえ、すでに固定化した考え方を変えるのは、それこそ子どもを一から産み育てるようなもの。仕事の延長で、まあ、ひとつでも何か参考になれば、と読んでみました。
「U理論」とは、MITのシャーマー博士が生み出した「変容やイノベーションを個人から社会レベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論」です。130人ほどの学者やビジネスパーソンなど、革新的なリーダーにインタビューが行われ、彼らの「内面のあり方」「意識の変容」を理論として可視化しています。
MITとか学者とか聞くと、「えっへー、レベル高っ!」と感じましたが、漫画の物語は、私と同世代のキャリア志向の女性が主人公となり、効率的なやり方と自分のあり方、そして部下や同僚との意識のギャップに苦しみながら、「U理論」を体得していく様が描かれ、自分のことに置き換えて読み進められます。
で、さて、「U理論」のエッセンスをかいつまんで書き記しておくと。
U理論の「U」の形が示すカーブの通り、「自分の内面や状況を観察する」、「内省する」、「新しい感覚を受け入れて即効的に行動する」というプロセスに分けられます。さらに、「U」の字の左側が示す意識の変容では、「ダウンローディング」「シーイング」「センシング」「プレゼンシング」というステップを踏んでいきます。
ここで気づかされるのが、私たちは過去の経験から習慣化したルールにしたがって情報を解釈したり、自分なりの思考パターンを繰り返しているということ。でも、そこから脱却すること(さらに、脱却していいと許すこと)によって、内面をより深く見ようとしていくことを、U理論では重視しています。この「観察」こそ、自分自身の浮遊霊なのではないかと思います。目に見えるもの、目にしてきたものだけ信じていると、新しいアイデアや価値観を得ることはできません。ちょっと自分の過去や身から離れて自分を観察することがいかに大事か、気づかされました。
さて、具体的な理論の説明や物語は本書を読めば明快ですが、ひとつ心に残ったシーンを。物語の主人公は、最後に、同僚に自分の気持ちを赤ちゃんのように開示し、これまでのことや思いを伝えます。これって本当に難しい! 自己開示ができていれば、どれだけうまくいっていたことか……。ただ、Uカーブのプロセスをきちんと踏んでいけば、過去の価値観に縛られることはないのですから、自己開示はより大きな目標や関係づくりに比べて本当に些細なことと感じるのかもしれません。
……ということで。
最近では、このU理論を全て実践できているかわかりませんが、少しずつ自分を頭上から観察して、家族や友人、ご近所さん、仕事の関係者に接していこうとするようにしています。まだまだアイデアの創出にまで至りませんが、心なしか、応援してくださったり、温かい反応が増えてきた気がします。変なプライドでこじらせつづけていた頃の私に読ませたい、そして、婚活中、就活中など、ゴールを急いでいる人にもぜひオススメしたい一冊です。
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