現在、ソフトウェア開発におけるシステム設計の解決策といえば、すべてがオブジェクト指向によって解決されているかのように認知されている。しかしながら実際には、オブジェクト指向の設計を実現するための選択肢であるC++では、要求される仕様に対し、オブジェクト指向の範ちゅうには含まれない機能を使うことでうまく対応している例をよく見かける。
本書は、ソフトウェアシステムを設計する手法として、複数のパラダイム(オブジェクトパラダイムや生成的プログラミング等)を組み合わせてアプローチする、マルチパラダイムについて書いた本であり、設計のプロセスをサポートするような形式、アイディア、フレームワークなどについて述べている。主な内容は、アプリケーションドメインとソリューションドメイン、それぞれについての共通性分析や可変性分析、そしてマルチパラダイムデザインの使用法の説明、その実装方法となっている。
本書の構成は、各章がそれまでの章に基づいた新しい概念を説明するものになっており、読者は不明な点を前章に戻ることで確認することができるよう工夫されている。またこれにより、ドメインエンジニアリングとマルチパラダイム技法についても読者が理解しやすいようになっている。
しかしながら、内容のレベルは高く、読者対象は、実務上C++を1年以上にわたり使用した実績のある技術者としている。新しいシステム設計の手法に興味のあるC++プログラマーにおすすめしたい。(大塚佳樹)
本書では、オブジェクトパラダイムを越えた設計プロセスをサポートする形式、アイディア、フレームワークを提供していく。ドメイン分析結果に基づく、これまでよりも広範な設計の視点が必要になるが、その結果として、そのドメインのためのエンジニアリングされた実装が可能になる。このためのテクニックを、マルチパラダイムデザインと呼ぶ。本書ではC++に焦点をあて、具体的、実践的に考えていく。
内容(「MARC」データベースより)
オブジェクトパラダイムを越えた設計プロセスをサポートする形式、アイディア、フレームワークを提供。マルチパラダイムが必要とされる背景から、共通性分析、可変性分析、共依存ドメインについてまで詳しく解説。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
コプリン,ジェームズ・O.
独立コンサルタント。Manchester工科大学コンピューテーション学部客員教授。Wisconsin大学でMSCSを取得後、ベル研究所に勤務。マルチパラダイムデザインの研究でベルギーVrije大学のPh.D.を取得した。現在は、フランス、ノルウェー、イスラエルなどの企業および大学で、マルチパラダイムデザインやソフトウェアパターンの実践を行っている。国籍はU.S.A.。イリノイ州にて妻、子供、2匹の猫とともに暮らしている
金沢/典子
大阪大学大学院理学研究科前期課程修了。(有)インアルカディア勤務。事業模型倶楽部。千葉県船橋市在住
平鍋/健児
1989年東京大学工学部卒。(株)永和システムマネジメントにて、オブジェクト指向開発を研究・実践するC++プログラマ。オブジェクト倶楽部、XP‐jpメーリングリストを主宰。福井県大野市にて、親二人、妻一人、子供三人、猫一匹と生活している
羽生田/栄一
東京下町深川生まれ。東工大理学部情報科学科卒。富士ゼロックス情報システムでXEROX PARCの技術とくにSmalltalkとオブジェクト指向に出会い、それ以後、世界のあらゆる事柄をモデリングすることが趣味かつ仕事に。OO‐CASEツールの研究開発やOOシステム開発のコンサルティング・メンタリング・教育に携わり、オージス総研室長を経て2000年より豆蔵で活動開始、現在豆蔵CEO兼代表取締役社長。オブジェクト指向や開発方法論、UML、パターン、ビジネスモデリング、ナレッジマネジメント等に関連した活動を広く行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)