長年名香ワールドに魅了されている一人ですが、このシリーズは一番読み返しています。
登場人物の私生活（といういい方は、妙ですが）は決して詳しく書き込まれているわけではないのですが、最初が不仲だった二人が少しづつ仲良くなっていったり、恋心が微妙に変化していっていたり、作品になっていない時間も、登場人物たちは活き活きと生活しているのね…と感じられて、作品を読むと、本当に「素敵な生活を垣間見た」という気分になって、幸せになるのです。
もちろん、いわゆる「悪役」的な人物もしばしば登場しますが、決して「懲悪」されることはなく、その人にはその人なりの人生があるんだな、と考えさせられる部分がきちんと表現されていて、名香先生の俯瞰的な視線に驚かされます。
そして、最近の作品によく描かれている「きちんと生活する事の大切さ」は、本当に考えさせられます。
百合子ちゃんが主に狂言回しとなっている「食」に関する作品群なんて、食育の授業に使ってもいいくらいだと思うのですよ。
これらのメッセージは、昔の名香作品にもずーっとあったことですが、このシリーズはエンターテインメント性と、名香先生の「伝えたいこと」（と、勝手に思っているのですが）のバランスが絶妙で、生意気ながら「円熟期」などと称させていただきました。
一生読み続けたい作品です。
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