男性が「ドン・ファン」「カサノヴァ」と言われるのであれば、女性は「ファム・ファタール」でしょうが、その筆頭で思いつく名はやはり「マタ・ハリ」であると思います。今回、彼女の本格的な評伝が刊行されたということで読んでみましたが、その情報量はもちろんのこと、読みやすさにかなり驚きました。各所に、彼女自身の発言が登場するので、評伝というよりも小説のようでページをめくる手が止まりませんでした。
本書で書かれている彼女の姿は、ダンサーとしてのプライド、称賛への素直な喜び、恋について……等々、つつましく生きた一人の女性の姿です。これまで、男性の側からの都合の良い解釈・意味付けをされつづけてきた彼女の一生を、思わぬ形で知ることができました。なかに収録されている多数の貴重な写真も、文中の彼女の姿と相まって、非常に魅力的で、また一層、マタ・ハリという人物に魅せられました。
本書は、1932年の映画制作に合せたリサーチ出発点とするものだそうですが、ぜひまた新しい映画の形で見てみたい気にさせられます。
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