まだ冷戦時代であった頃、当時はやりのバックパッカー的貧乏旅行に興じていた小生にとって、似たような、けれどもスケールと目的においては遥かに及ばない音楽「修行」を綴った本書は、自分の若かりし頃を思い出しながら、感情移入と首肯を繰り返す、過去の自分探しのきっかけにもなる一冊だった。
ちろん内容は昔の話だし、時代外れではある。しかし、日本からスクーターを貨物船で運びながら本人も一緒に船旅でヨーロッパに渡った話は、今より世界は実は安全で、心荒む人の割合も少ないのではないかと思わせてくれる。
また、執筆当時26歳の小澤征爾氏の文章は(多少の校正はなされたであろうが)、とても26歳とは思えない、実にテンポよく癖もなく、そしてまた表された内容は常人には経験できないことなのでぐいぐい引き入れられていく。感受性の鋭さは、ご本人自身のものはあろうが、小生の経験に照らしても、年齢の若さからくるものが多分にあるはずで、その鋭さがところどころの洞察にも表れている気がする・・・本当に素晴らしい!印象になったところはこんなところ:
●大人になるということは、度重なる経験のために次第にこうした体の震えるような新鮮な感激が薄れ、少なくなることだそうだが、もしそれが本当ならさみしいことだと思う。
●兵隊だかポリスだか知らないが、バカに威張っている。戦争中の日本のようだ。
●ベルリンの街はどこか東京に似ている。どちらも長いこと米軍がいたためだろう。
●外国にいて体を壊して寝ていると全く心細い限りだ。
●写真と何か日本語が書いてあれば、どんなモノでも大日本国自動車免許証になる。国際語でない日本語の利点だ。
●よその国で同じ日本人から受ける親切ほどありがたいものはない。同じ親切であっても、外国の場合は何十倍かの有難みがある。
●大きくなるだけがいいものではない。人間を見ても、大人になると子供のころの一途な心が失われる。雑音を気にして純粋でなくなる。
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ボクの音楽武者修行 (新潮文庫) 文庫 – 2002/11/1
小澤 征爾
(著)
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1959年、神戸から貨物船に乗りヨーロッパへ向かう。そのとき著者は24歳……。
「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。貴重写真多数収録。
「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、そこに住んでいる人間をじかに知りたい」という著者が、スクーターでヨーロッパ一人旅に向かったのは24歳の時だった……。
ブザンソン国際指揮者コンクール入賞から、カラヤン、バーンスタインに認められてニューヨーク・フィル副指揮者に就任するまでを、ユーモアたっぷりに語った「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。
【目次】
日本を離れて
音楽家の感激
ぼくの履歴/音楽武者修行への出発/日本を離れて/フィリッピン娘/シンガポールの音楽家/インドでのロハ入場/アフリカから地中海へ/美人のいるシシリー島
棒ふりコンクール
上陸第一歩のつまずき
ユースホステル/スクーター旅行/風邪と坐薬/パリ見物/棒ふりコンクール/ブザンソンのコンクール入選/コンクールのご利益/ベルリン便り/ふたたびドイツへ/食う むずかしさ/ノルマンディの修道院/スキーは楽し/チロルっ子/クリスマスと大晦日/故郷の匂い/音楽界への夢/エンビ服の校服/自動車免許証を手に入れる/故障続出のドライブ/トゥールーズでの演奏会/戦争はおわっていない
タングルウッドの音楽祭
アメリカへ行く
自動車での失敗/タングルウッドの音楽祭/シャルル・ミュンシュの弟子になる/ミュンシュの思い出/アメリカ便り/フジヤマ/望郷の念/ジャズ/バーンスタインに会う/カラヤンの弟子になる/音楽の都ベルリン
さらば、ヨーロッパ
さらば、ヨーロッパ
思い出すままに/食物へのノスタルジー/忘れられない音楽家たち/世界のオーケストラ/アメリカ演奏旅行
日本へ帰って
日本へ帰って
今後のこと
あとがき
解説:萩本晴彦
【本文冒頭より】
まったく知らなかったものを知る、見る、ということは、実に妙な感じがするもので、ぼくはそのたびにシリと背中の間の所がゾクゾクしちまう。日本を出てから帰ってくるまで、二年余り、いくつかのゾクゾクに出会った。
神戸から貨物船に乗って出発、四日目に、ぼくにとって、物心ついてから最初の外国であるフィリッピンのエスタンシヤという島が見えだした時――
六十日余りの気の遠くなるほど長い長い船旅のあと、何日ものスクーター旅行でパリにだんだん近づき、やっとパリのセーヌ河のふちにたどり着いた時――
……
小澤征爾
1935(昭和10)年、奉天(中国・現瀋陽)生れ。成城学園中学・高校を経て、桐朋学園で斎藤秀雄に指揮を学ぶ。1959年、仏・ブザンソンで行われたオーケストラ指揮者国際コンクールで第1位を獲得。ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタインに師事し、1961年ニューヨーク・フィルの副指揮者となる。その後、トロント交響楽団、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督などを経て、1973年からボストン交響楽団の音楽監督を29年にわたり務めた。2002年、日本人として初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを指揮し、同年秋にはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任(~2010)。2008年、文化勲章受章。現在、サイトウ・キネン・フェスティバル松本総監督、小澤征爾音楽塾塾長、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀主宰、新日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者、水戸室内管弦楽団顧問として活躍中。
「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。貴重写真多数収録。
「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、そこに住んでいる人間をじかに知りたい」という著者が、スクーターでヨーロッパ一人旅に向かったのは24歳の時だった……。
ブザンソン国際指揮者コンクール入賞から、カラヤン、バーンスタインに認められてニューヨーク・フィル副指揮者に就任するまでを、ユーモアたっぷりに語った「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。
【目次】
日本を離れて
音楽家の感激
ぼくの履歴/音楽武者修行への出発/日本を離れて/フィリッピン娘/シンガポールの音楽家/インドでのロハ入場/アフリカから地中海へ/美人のいるシシリー島
棒ふりコンクール
上陸第一歩のつまずき
ユースホステル/スクーター旅行/風邪と坐薬/パリ見物/棒ふりコンクール/ブザンソンのコンクール入選/コンクールのご利益/ベルリン便り/ふたたびドイツへ/食う むずかしさ/ノルマンディの修道院/スキーは楽し/チロルっ子/クリスマスと大晦日/故郷の匂い/音楽界への夢/エンビ服の校服/自動車免許証を手に入れる/故障続出のドライブ/トゥールーズでの演奏会/戦争はおわっていない
タングルウッドの音楽祭
アメリカへ行く
自動車での失敗/タングルウッドの音楽祭/シャルル・ミュンシュの弟子になる/ミュンシュの思い出/アメリカ便り/フジヤマ/望郷の念/ジャズ/バーンスタインに会う/カラヤンの弟子になる/音楽の都ベルリン
さらば、ヨーロッパ
さらば、ヨーロッパ
思い出すままに/食物へのノスタルジー/忘れられない音楽家たち/世界のオーケストラ/アメリカ演奏旅行
日本へ帰って
日本へ帰って
今後のこと
あとがき
解説:萩本晴彦
【本文冒頭より】
まったく知らなかったものを知る、見る、ということは、実に妙な感じがするもので、ぼくはそのたびにシリと背中の間の所がゾクゾクしちまう。日本を出てから帰ってくるまで、二年余り、いくつかのゾクゾクに出会った。
神戸から貨物船に乗って出発、四日目に、ぼくにとって、物心ついてから最初の外国であるフィリッピンのエスタンシヤという島が見えだした時――
六十日余りの気の遠くなるほど長い長い船旅のあと、何日ものスクーター旅行でパリにだんだん近づき、やっとパリのセーヌ河のふちにたどり着いた時――
……
小澤征爾
1935(昭和10)年、奉天(中国・現瀋陽)生れ。成城学園中学・高校を経て、桐朋学園で斎藤秀雄に指揮を学ぶ。1959年、仏・ブザンソンで行われたオーケストラ指揮者国際コンクールで第1位を獲得。ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタインに師事し、1961年ニューヨーク・フィルの副指揮者となる。その後、トロント交響楽団、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督などを経て、1973年からボストン交響楽団の音楽監督を29年にわたり務めた。2002年、日本人として初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを指揮し、同年秋にはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任(~2010)。2008年、文化勲章受章。現在、サイトウ・キネン・フェスティバル松本総監督、小澤征爾音楽塾塾長、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀主宰、新日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者、水戸室内管弦楽団顧問として活躍中。
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2002/11/1
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101228019
- ISBN-13978-4101228013
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登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (2002/11/1)
- 発売日 : 2002/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 244ページ
- ISBN-10 : 4101228019
- ISBN-13 : 978-4101228013
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 50,931位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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2021年3月14日に日本でレビュー済み
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4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年2月3日に日本でレビュー済み
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小澤征爾が世界的に有名になっていく、初期の頃の自伝。
若かりし頃なので、記述は赤裸々といっても過言ではありませんが、自伝なので不明瞭なところがあります。
何故、フランスに向かったのか、最大の謎です。
また、それ以前の日本ではどうだったのかは全く触れられていません。
その辺が分かる本があると良いなと思っています。
それにしても、前向きで、小さな事などものともしないような感覚は音楽家特有の気質なのでしょうか。
とんとん拍子に世界の檜舞台で成功し、認められていく。なんて素晴らしいsuccess storyでしょう!
羨ましいと思いました。
若かりし頃なので、記述は赤裸々といっても過言ではありませんが、自伝なので不明瞭なところがあります。
何故、フランスに向かったのか、最大の謎です。
また、それ以前の日本ではどうだったのかは全く触れられていません。
その辺が分かる本があると良いなと思っています。
それにしても、前向きで、小さな事などものともしないような感覚は音楽家特有の気質なのでしょうか。
とんとん拍子に世界の檜舞台で成功し、認められていく。なんて素晴らしいsuccess storyでしょう!
羨ましいと思いました。
2016年7月30日に日本でレビュー済み
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日本、そして世界を代表する指揮者に上り詰めた小澤征爾が、26際の頃に記した海外武者修行の回顧録。
海外にコネも何もない著者が、それこそ自身の"腕"でコンクールへの入賞を果たし、
世界を代表する指揮者から指導を受け、数年の修行を経て日本へ凱旋公演を果たす。
これがこの本の大筋である。
が、それとは別に、慣れない海外での生活を記したサイドストーリーが大半を占める。
そしてそれらが、著者の音楽に対する考え方に大きく影響を与えていると感じた。
中でも貴重な経験だと思ったのが、クリスマスのエピソードだ。
教会に集まった素人だらけのオーケストラ、そしてコーラス隊。
彼らが奏でるヘンデルは、決して上手ではない。
しかし、上手下手という物差しでは測れない純粋な感動が、確かにそこに存在していた。
それまで感じたことのない、音楽の本質的な部分を著者は経験したのだ。
昨今、音楽はビジネスとして、商業として、
作られて消費されては忘れ去られるというサイクルが目立つようになってきた。
だがこの本を読んで、音楽という物が持つ別の側面を改めて気付かされた。
海外にコネも何もない著者が、それこそ自身の"腕"でコンクールへの入賞を果たし、
世界を代表する指揮者から指導を受け、数年の修行を経て日本へ凱旋公演を果たす。
これがこの本の大筋である。
が、それとは別に、慣れない海外での生活を記したサイドストーリーが大半を占める。
そしてそれらが、著者の音楽に対する考え方に大きく影響を与えていると感じた。
中でも貴重な経験だと思ったのが、クリスマスのエピソードだ。
教会に集まった素人だらけのオーケストラ、そしてコーラス隊。
彼らが奏でるヘンデルは、決して上手ではない。
しかし、上手下手という物差しでは測れない純粋な感動が、確かにそこに存在していた。
それまで感じたことのない、音楽の本質的な部分を著者は経験したのだ。
昨今、音楽はビジネスとして、商業として、
作られて消費されては忘れ去られるというサイクルが目立つようになってきた。
だがこの本を読んで、音楽という物が持つ別の側面を改めて気付かされた。
2009年2月14日に日本でレビュー済み
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世界的に有名な「小澤征爾」の自伝的エッセイ。本書は20代の頃成功への一歩を踏み出した頃に書かれたもの。
指揮者となるべくとりあえずヨーロッパへ向うところから、数々のコンクールで評価され次第に指揮者としての地位を固めつつあるその時を飾ることなく記録している。
海外旅行が一般的でない時代に「とりあえずヨーロッパへ行こう」と決めそれを実行する行動力と、実力主義の音楽界で徐々に認められていく過程が、自身が家族に宛てた手紙と共に語られているので、まるで身近で見ているかのような臨場感がある。
小澤征爾が成功したのは、指揮者としての才能と実力があってこそだが、決して一人だけで成し遂げられたものではなく、それを支えた多くの人たちがいる。
その手を差し伸べてくれたのは、他ならない彼自身の人間性と魅力によると思う。
そして、これは40年も前のことだからとか、音楽の世界だからと限定されることではなく、いつでもどんなことに対しても当てはまることだろう。
指揮者となるべくとりあえずヨーロッパへ向うところから、数々のコンクールで評価され次第に指揮者としての地位を固めつつあるその時を飾ることなく記録している。
海外旅行が一般的でない時代に「とりあえずヨーロッパへ行こう」と決めそれを実行する行動力と、実力主義の音楽界で徐々に認められていく過程が、自身が家族に宛てた手紙と共に語られているので、まるで身近で見ているかのような臨場感がある。
小澤征爾が成功したのは、指揮者としての才能と実力があってこそだが、決して一人だけで成し遂げられたものではなく、それを支えた多くの人たちがいる。
その手を差し伸べてくれたのは、他ならない彼自身の人間性と魅力によると思う。
そして、これは40年も前のことだからとか、音楽の世界だからと限定されることではなく、いつでもどんなことに対しても当てはまることだろう。
2007年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世界的な成功と高名を得た、数少ない人物である著者が、何故現在の地位を
築いてきたか。その理由は、本人の天賦の才能があったからに他なりませんが、
それだけではなく、「強い意思と行動力・実行力、そしてフロンティア・スピリット」
があったからこそではないでしょうか。そんな事を実感させてくれる書物だと思います。
日本の学校をドロップアウトしてヨーロッパへ、しかもバイクで一人旅で出かける、
それだけでも凄いと思いますが、ヨーロッパでも自分自身を失うことなく清清しい
人生を切り開いていく氏の著述に、何度もうなずき、元気付けてもらいました。
若々しい考察、筆致。随所に盛り込まれた、日本の家族との手紙のやりとり、いずれも
当時の夢あふれた人々の機微も感じることが出来ます。どの年代の方にも是非一読して
いただきたい、そんなエッセイではないでしょうか。
築いてきたか。その理由は、本人の天賦の才能があったからに他なりませんが、
それだけではなく、「強い意思と行動力・実行力、そしてフロンティア・スピリット」
があったからこそではないでしょうか。そんな事を実感させてくれる書物だと思います。
日本の学校をドロップアウトしてヨーロッパへ、しかもバイクで一人旅で出かける、
それだけでも凄いと思いますが、ヨーロッパでも自分自身を失うことなく清清しい
人生を切り開いていく氏の著述に、何度もうなずき、元気付けてもらいました。
若々しい考察、筆致。随所に盛り込まれた、日本の家族との手紙のやりとり、いずれも
当時の夢あふれた人々の機微も感じることが出来ます。どの年代の方にも是非一読して
いただきたい、そんなエッセイではないでしょうか。






