全世界で1000万部、日本で110万部。科学の本としては空前のベストセラーになった
『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』で、世界的な宇宙論、いや、ホーキングブームを巻き起こした著者の続編がついに登場した。
現代物理学の基礎を築いたアインシュタインの偉業を紹介する第1章「相対論小史」と、相対論と量子論の融合を目指した第2章「時間の形」をベースに、最新の宇宙論がもたらす宇宙像やタイムマシン、人類の未来など、読みごたえのあるテーマが続く。アリストテレスやプトレマイオスの時代から、経時的に宇宙論をたどる前著とは対照的に、章ごとにテーマを設定。カラーイラストをほぼ見開きごとに使い、よりわかりやすく宇宙論や著者のメッセージを伝えるように工夫されている。
本書の真骨頂は、やはり宇宙論だ。前著の英語初版が刊行されたのは1988年。以後、実は宇宙論は新たな局面にさしかかっている。これまでの理論では説明のつかない「真空のエネルギー」といった課題や、超新星の観測による宇宙の加速膨張の発見、気球による宇宙背景放射の観測結果などにより、従来の定説が揺らいでいるのだ。こうした状況下、「無境界仮説」や「虚時間」を提案する著者は、新しい宇宙像を示している。「われわれは“クルミの殻”に閉じ込められていてもなお、自分自身を限りなく広がった宇宙の王者だと考えるのです」という「クルミの殻の中の宇宙」像こそ、本書の原題であり、一番のメッセージにほかならない。有力な5つの超ひも理論を統一し得る夢の「M理論」も注目だ。
著者の本は、相変わらず難解といえば難解である。だが、ちゃめっ気たっぷりのイラストや写真が多数あり、「現代の生きる伝説」といわれる天才は意外にもユーモアたっぷりだった。宇宙論のほかに、「私たちが自滅することがないとすると、まず100年以内に太陽系内の惑星へと生存圏を広げる」、「いずれヒトの遺伝子工学は始まるだろう」といった大胆な予測もある。前著は途中で挫折した人も、本書なら楽しく読み通せるかもしれない。(齋藤聡海)
未来に何が起きるか予測する。自由に時間旅行を楽しむ。別の場所へ瞬時に移動する―そんな人類の夢に、「車椅子の天才科学者」ホーキングが果敢に挑んだ。最新宇宙論からゲノム研究の将来、M理論から人類の未来へ、ホーキングの話は果てしなく広がり、人々を魅了する。250点以上の図版を駆使し、ホーキングが宇宙と人類の未来に秘められた謎を解き明かす。超ベストセラー『宇宙を語る』待望の続編。
内容(「MARC」データベースより)
最新宇宙論からゲノム研究の将来、M理論から人類の未来へ。250点以上の図版を駆使し、ホーキングが宇宙と人類の未来に秘められた謎を解き明かす。89年早川書房刊のベストセラー「ホーキング、宇宙を語る」の続編。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ホーキング,スティーヴン
1942年、オックスフォード生まれ。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学大学院で物理学と宇宙論を専攻。ブラックホールの特異点定理や蒸発理論などで、早くから理論物理学の第一人者として認められる。1974年に史上最年少の32歳でイギリス王立協会会員になる。1979年、ニュートンも就いたケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授に選出され、今も在職中。筋萎縮性側索硬化症と闘いながら精力的に研究を続け、「現代でもっとも優れた科学者の一人」として世界中で高く評価されている
佐藤/勝彦
1945年、香川県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業。現在、東京大学大学院理学系研究科教授、同研究科長・理学部長。理学博士。専門は宇宙物理学、宇宙論。インフレーション宇宙論の提唱者の一人。国際天文学連合宇宙論部会長、日本物理学会会長を務めるなどその功績は世界的に広く知られている。1989年度井上学術賞、1990年度仁科賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)