フランスで出版された、映画監督アルモドーバルに対するロング・インタビュー本です。複数年にわたって幾度もインタビューを重ねていて、初期の作品から最新作「ボルベール<帰郷>」に至る監督作品についてアルモドーバルが語っています。
私自身は必ずしもアルモドーバル作品すべてを手放しで評価するわけではありません。
彼の作品で最初に触れた「神経衰弱ぎりぎりの女たち」に魅入られて、それからしばらく初期の作品を見てみましたが、「
マタドール 〜炎のレクイエム〜 [DVD
]」や「
アタメ 私をしばって! [DVD
]」、「
High Heels (1991) (Sub) [VHS] [Import
]」などには全くなじめませんでした。しかし世界的にも高い評価を受けた「
オール・アバウト・マイ・マザー [DVD
]」や最新作の「ボルベール」は文句なしの面白さだと思っています。
そんな私の中のアルモドーバルを整理してみたいと考えていた時に出たのが本書。一も二もなく手にしました。
私自身の思い込みを正してくれるところがありました。
例えば「キカ」の色彩について、インタビュアーもそれが「とてもスペイン的」だと述べるくだりがあります。(123頁)
私も同じように考え、DVD「
キカ <ヘア無修正版>
」のレビューで「スペイン的な味わいを楽しむ映画」だと書いたことがあります。しかし、アルモドーバルは「すごくスペイン的だけど、スペインでは使われない色だ」と語ります。彼の故郷ラマンチャは、すさまじく禁欲的で彼の使う派手な色彩は故郷への「厳めしさへの反抗の表れ」だというのです。そしてポップアートが花開いた60年代に自己形成をしたことが大きく影響していると自己分析しています。
この箇所はアルモドーバルの新しい側面を見せてくれ、新鮮な驚きをもって読みました。
そのほか、女優カルメン・マウラとの確執、「ボルベール」の舞台裏話など、興味の尽きないエピソードがあちこちに顔を出す、楽しい一冊となっています。
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