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プラスチックの現実と未来へのアイデア 単行本(ソフトカバー) – 2019/8/26
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人類に大きな利便性と利益をもたらした一方、水に溶けない、腐食しないという素材の特性は、生態系に悲惨な影響をもたらしました。
中でも近年、国連環境計画(UNEP)が、世界が直面する最大の危機と考えているのが、プラスチックによる海洋汚染=「プラスチックスープ」も含めたプラスチックの環境汚染です。
そのプラスチックの現状をつまびらかにし、これから進めるべきポストプラスチックの世界を実現するためのアイデアを提案します。
読者が今日からできるアイデア満載!
- 本の長さ144ページ
- 言語日本語
- 出版社東京書籍
- 発売日2019/8/26
- ISBN-104487812607
- ISBN-13978-4487812608
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出版社より
プラスチックごみだらけで川面が見えない河川(本書口絵より)

はじめに
廃プラスチック、使い捨て、海洋プラスチックごみ問題……。最近、そんな言葉をよく耳にします。2019年1月、安倍晋三首相はスイス・ダボスでの世界経済フォーラムの基調講演で、「太平洋の最も深い場所で今、とんでもないことが進行中です。そこにいる小さな甲殻類の体内から、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が高い濃度で見つかりました。原因をマイクロプラスチックに求める向きがあります」と強い危機感を表明しました。
プラスチックをめぐって今、何かが起きている──。仕事仲間が数人集まって、そんな話題になりました。
プラスチックは私たちの暮らしを支える必需品です。現代社会の代表的なインフラは電気やガス、水道ですが、電線の被覆には絶縁体のプラスチック、ガス管には軽くて丈夫なプラスチックが使われています。着ている衣服は合成繊維、乗っている車はハンドルからガソリンタンクまでプラスチック製で、タイヤの材料は合成ゴム。そしてレジ袋やペットボトル、日用品や文房具類、パソコンの外装品……。やがて老いると紙おむつのお世話になりますが、これはむしろプラおむつと呼ぶべきでしょう。このように、私たちはプラスチックに全面依存の毎日を送っているのです。
そのプラスチックが実はとんでもない悪さをしでかしているらしい。ここで議論していても埒(らち)があかないから、何が起きているか、皆で手分けしてリサーチし、その結果を大勢の人たちに伝えよう。そうして始めた調査の結果をまとめた緊急レポートが、この『プラスチックの現実と未来へのアイデア』です。
調査にあたって、マイクロプラスチックによる海洋汚染研究の第一人者で、政府のプラスチック資源循環戦略小委員会委員の一人でもある、東京農工大学農学部の高田秀重教授の指導を仰ぐことにしました。
調べてみると、確かにとんでもない事態が生じていました。現在、世界のプラスチック生産量は約4億t(合成繊維、合成ゴムを含む)ですが、1950年以降、83億t超のプラスチックが生産され、63億tがごみとして廃棄されたという推計があります。また、エレン・マッカーサー財団の報告(2016年)では、今後20年で現在の生産量の2倍に増え、2050年には海洋中のプラスチック量が海洋に棲(す)むすべての魚の量以上に増加すると予想しています。
憂慮すべきは、陸上で生産・消費・廃棄されたプラごみが河川を経て海洋に流出し、海の環境を汚染していることです。特にプラごみが細かく砕けたマイクロプラスチックは海の生態系に深刻なダメージを与えています。マイクロプラスチックはまず、小魚類や海鳥の体内に蓄積され、食物連鎖を通じてより上位の海洋生物に移行・蓄積。その結果、最上位グループの海洋哺乳類ほど生物濃縮の度合いが高くなっていきます。もちろん、私たち人間も例外ではありません。すでに私たちの体の中に、マイクロプラスチックが移行し、いつ健康被害が発生してもおかしくないとさえ言われているのです。
海洋プラごみ汚染は、陸上でのプラスチックの生産・消費・廃棄に起因しています。海を汚しているのは、陸上で暮らしている私たち自身なのです。
私たちは地質年代の第四紀、完新世という時代に生きていますが、プラスチックの利用が世界中に広がり、人間活動が地球環境に大きな負荷を与えている1950年代以降は「人新世」と呼ぶべきだとも提案されています。
海洋プラごみ汚染の全貌はまだ明らかになっていませんが、これ以上、汚染が深刻化すると、取り返しのつかないことになってしまいます。ここは「予防原則」の立場から、厳しい対策を打ち出すべきです。
アメリカ先住民のネイティブ・アメリカンには「我々は子孫から大地を借りて生きている」という言葉があるそうです。借りた大地は、海も含め汚さずにきれいな状態で返すのが当然でしょう。では、どこから手をつけるか? 水漏れを防ぐには元栓をしっかり閉めることが必要です。プラスチック製品の使用削減──。まず、そこから始めるべきではないでしょうか。

国際社会への貢献が期待される海洋プラスチックごみ問題
海洋プラスチックごみ問題で明らかになった、国内だけを視野に入れた環境政策の限界
プラスチックは1930年代から工業化が進み、20世紀後半には生活に なくてはならない存在になりました。
このプラスチック100年の歴史の中で、比較的最近になって注目を集めるようになったのが海洋プラスチックごみ問題です。
海岸に漂着したプラスチック廃棄物が美観を損ねる といった問題は以前から知られていました。
しかしその量が想像以上に多いこと、漁具や廃棄物だけではなく、プラスチック製品の原料であるペレットやマイクロプラスチックまで海洋に流出していることが最近わかってきたのです。
河川などにポイ捨てされた容器や包装がそのまま海に流出するというのが海洋プラごみのわかりやすい説明です。
しかし日本のように廃棄物の管理が行き届いた国でも津波、水害など災害時には大量の海洋プラご みが発生しており、日常的にも無視できない量の海洋への流出があることが国内河川などの調査の結果わかってきました。
日本でさえそうですから、経済発展によって世界全体の生活スタイルが先進国型に近づき、 その一方で廃棄物処理や環境意識が追いつかなければ、今後地球規模の 問題が出てくるのは明らかです。
海は世界とつながり、波間に漂うプラごみに国境はありません。
海外に生産を委託するなど経済もグローバル化しています。
日本のプラスチック廃棄物の再生処理が海外依存していたことからもわかるように、国内対策だけで問題を解決することは難しくなっているのです。
本文より

もくじ1

もくじ2

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
著者について
東京農工大学農学部環境資源科学科教授。環境中における微量有機化学物質の分布と輸送過程をテーマに、河川、沿岸域、 大気、湖沼など、地球表層全般を対象に、国内外をフィールドとした研究を続けている。
2005年からは、世界各地の海岸で拾ったマイクロプラスチックのモニタリングを行う市民科学的活動「International Pellet Watch」を主宰。
また、国連の海洋汚染専門家会議のグループのメンバーとして、世界のマイクロプラスチックの評価を担当。
日本水環境学会学術賞、日本環境化学会学術賞、日本海洋学会岡田賞、海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)など受賞多数。共著書に、『環境汚染化学』(丸善出版)がある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
東京農工大学農学部環境資源科学科教授。環境中における微量有機化学物質の分布と輸送過程をテーマに、河川、沿岸線、大気、湖沼など、地域表層全般を対象に、国内外をフィールドとした研究を続けている。2005年からは、世界各地の沿岸で拾ったマイクロプラスチックのモニタリングを行う市民科学的活動「International Pellet Watch」を主宰。また、国連の海洋汚染専門家会議のグループのメンバーとして、世界のマイクロプラスチックの評価を担当。日本水環境学会学術賞、日本環境化学会学術賞、日本海洋学会岡田賞、海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 東京書籍 (2019/8/26)
- 発売日 : 2019/8/26
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 144ページ
- ISBN-10 : 4487812607
- ISBN-13 : 978-4487812608
- Amazon 売れ筋ランキング: - 109,444位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 98位環境問題
- - 157位都市開発・都市問題 (本)
- - 395位建築・土木工学
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著者について

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カスタマーレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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本書で指摘、提言されている事柄は、恐らく多くの日本人にとって「心地よい」内容ではないだろう。だからこそ、多くの方に本書をお薦めしたい。少なくとも「プラスチックごみ問題」に関しては、いわゆる「先進国」のみならず全世界レベルで見ても、残念ながら日本は「後進国」である、という冷徹な現実がさらけ出されているのだから。
人口一人当たりのプラスチック容器包装廃棄量が世界2位にも関わらず、2018年の「海洋プラスチック憲章」への署名を(米国と共に)拒否して批判を浴びた(P.20)日本。その国が、サッカーW杯などでの「会場でのゴミ集め」に関して「世界中が絶賛しています!」などと自己陶酔している様は、全くの悲劇としか言いようが無い。もちろん「ゴミ集め」という行為自体は推奨すべき事であって、それをとやかく言うつもりは毛頭ないが、「ゴミ集め」という行為を自画自賛する割に日本人には「集められ、出されたゴミは結局その後どうなるのか」「ゴミの量そのものを減らすために自分たちは一体何が出来ているのか」という肝心な事柄に対する知識、行動があまりに欠けていないだろうか。
タイトルにもあるように、本書ではまずプラスチック問題への対応に関する(多分に「残念」な)現実が述べられている。日本に暮らす人々の多くは、回収されたプラスチックごみはキチンと「リサイクル」されているものと無邪気に信じているかもしれないが、実際にはその多くは焼却され(「熱回収」)、文字通りの「再利用」はされていない。日本の「プラスチック有効利用率」は85.8%と言われているが、そのうち58%は「熱回収」であり、これは本当の意味でのリサイクルとは言えないという指摘(P.114)は、多くの人が認識すべき事柄だろう。また「バイオプラスチック」をはじめとした新素材に関しても、プラスチック問題を根本的に解決できるような「万能の代替品」ではない事も本書を読めば明らかになる。結局、プラスチック問題を改善する最も有効な方法は「プラスチックごみ」自体の量を減らすしかない、という事だ。
「プラスチックごみ減量」のために日本が行なっている事の現状が、また全くお寒い限りである。その典型例が野放し状態の「レジ袋」。P.103の表に掲載の通り、今や世界レベルではレジ袋の有料化や課税はもちろん、使用そのものの制限、禁止すら「当たり前」の流れになりつつあるのに、日本はいまだにレジ袋をタダでどんどん配っている。自分たちは「一人当たり廃棄量世界2位」の国であるという認識も、その状態を改めようという認識も全く感じられない。P.120で指摘されているような、安易なペットボトル化やプラスチック容器化も(これは日本に限った話ではないが)確かに大問題だ。
本書の後半では、プラスチックごみ自体を減らすためにどうすべきか、という具体的な提言がされている。P.131の「アクションリスト」を是非読者の方もチェックして頂きたい。すぐに実践できる事も、中々難しい事もあるが、このリストからは「安易にプラスチックに頼る事から一人一人が意識的に脱却をはかる」事以外、プラスチックごみの減量は容易ではない事が読み取れる。この問題に限らず、環境破壊や温暖化の防止は、誰か「悪者」を仕立てて非難すれば解決する事ではない。温暖化を批判するデモに参加する人々が、仮に自分たちはSNSやネットゲームはやり放題、肉も食べ放題という状態であるのなら「他人を非難する前に自分たちのやっている事から変えれば?」と言われても仕方ないだろう。程度の差こそあれ、環境破壊に関しては全ての人が「悪者」であるという自覚を持ち、多少の「不便」は我慢しても「破壊の要因」を一人一人が減らす行動を起こさない限り、事態は悪化する一方だと痛感する。本書を特に若い方にお薦めしたいと思った理由はここにある。
読後色々な事を考えさせられる、問題提起に満ちた良書として強くおススメ。