この物語は第3部の60ページほどがすべて。
一人の女子高生の、彼女を取り巻く世界に対して抱く思いが、そこに凝縮されている。
第1部、2部はなが〜い序章的なものに過ぎない。
でも、その長い序章も興味深いストーリーで読ませてもらった。
魔女狩りの嵐吹き荒れる中世ドイツを舞台にする第1部、そして男女の性差が極端に変化している近未来のシンガポールが舞台の第2部との比較で
現代を舞台にした第3部の女子高生の思いが生きてきている。
残念なのは第1部の幼女は何者であり、何者になるのか、彼女を取り巻いていた魔術的な世界は何だったのかが描かれないままになってしまった事。
いつか別の物語で語られないだろうか。
それも含めて全体に語り不足という気がする。
歴史を管理する、強化老人なんて、言葉面だけでとても醜い印象が伝わってくるのに、書きこまれなくて残念だ。
そのせいだろうか。
少女の『せかい』はとてもちっぽけな世界じゃないかな、と感じてしまう。
それがすべてと思いながら終わっていく彼女の人生は哀れだ。
ところで、この本の装丁は非常に美しい。
青い空を表現しているのでしょうが、素晴らしい色です。
久しぶりに装丁、デザインに感動する書籍に出会いました。
ただし、帯を取ると文字の配置やらが変わり、やや感動が薄れましたけど。
だから帯のついているうちに買いましょう!
2012年8月25日追記です。
出版社が変わり表紙も変更。
あたりさわりのないものになりました。
デザイン的にはハヤカワ文庫の当初のものに軍配をあげたいと思います。
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