ティーレマン指揮のベートーヴェン交響曲全集(ウィーン・フィル)を聴いていて、この人が指揮するブルックナーはどのような演奏なのだろうかと考えた。ティーレマンのベートーベンはテンポをゆっくり目にとり、アーティキュレーションを大事にする。私はチェリビダッケのブルックナーが好きなので、ひょっとするとそれに近いものが聴けるのではないかと思ったのだ。
結果は大正解、そして更に予想を上回るものだった。オーケストラがミュンヘン・フィルなので、否が応でもチェリビダッケの面影を探し求める。その期待は冒頭から裏切られないが、それだけではなくティーレマン独自の意図が曲全体に行き渡っている、極めて説得力の高い演奏だと感じた。第5番はこれまで所々ちぐはぐな印象を受ける曲で、それはチェリビダッケでも朝比奈隆でも同じだった。それがこのティーレマンの演奏では見事に解決していて、目から鱗が落ちた思いである。