「農業を成長産業に」というスローガンは、ずっと“眉唾もの”感じていたのだが、この本を読んで考えが変わった。農業改革は、小泉構造改革に端を発し、近年のTPP加入問題に至るまで常に並行して議論されてきた、ある種政治的なイッシューだったことから、TPP等を推進したい、時々の政権の言い訳として掲げられてきたスローガンというのが私の基本的な理解だったが、著者は、極めて実証的にフードバリューチェーンの構築によって農業を成長産業化する道筋を本書で描いている。日本では長く保護農政のみが展開された結果、「農業の失われた20年」が生まれ、欧州のような成熟経済型の農業への脱皮の機会が失われてしまった。兼業農家がばかりが農業の担い手の中心となり、産業としての主体性やダイナミズムが失われ、若い世代にとっては魅力が感じられなくなってしまったのだ。しかし、今、急速にその状況が変わりつつある。農家の数は、2015年には137万戸あったが、15年後には3分の一の40万戸にまで激減するといわれており、そのこと自体は危機的な状況と見ることもできるが、逆にあらたな担い手が登場せざるをえない環境が生まれている。新たなフードバリューチェーンを構築する担い手としての農業経営者が登場し、農業がリセットされる客観的な条件が揃いつつあるというのが著者の基本的な時代認識である。
政治の世界も変わった。かつては農水省、農協、族議員が、改革の壁になったが、既存の農業の衰退を背景に「抵抗勢力」としての力は明らかに退潮しており、「改革」が可能になったのだ。その経緯や今後の見通しについて、長く農業改革に関わってきた著者が歴史認識として展望していることも傾聴に値する。
購入オプション
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
フードバリューチェーンが変える日本農業 (日本経済新聞出版) Kindle版
◆農家の数はこれから10年で110万戸から40万戸に急減する。ただ減るのではなく、全体の中で新規の就農者が3分の1を占め、大規模農家の生産シェアが7割を超えるようになる。一般産業並みのICT化や流通チェーンの高度化、生産物の高付加価値化や、マーケットインの導入が急速に進み生産性革命が起きようとしている。本書は、日本の農業、農政に精通し、現場を知る著者が、農家の目線にたち、これから起きる変化、リスクとチャンスを伝える。
◆1990年から2010年までの20年は日本の農業の生産性は停滞していたが、それからの10年ですでに大きな変化が起きている。生産性を比較すると、都道府県レベルでは2、3倍、市町村レベルでは5倍、経営体レベルでは10倍に格差が広がりつつあるという調査結果もある。それを主導するのがICT化とフードバリューチェーン化だ。
◆一口でICT化といっても、一般企業と変わらない経営効率化やデータ利活用から、農業特有の機具の高度化まで様々。フードバリューチェーン化も大きく垂直型と水平型に分かれ、企業主導のものから、販売部門を強化した農業経営体まで様々な事例を紹介。コメ政策だけでない経営強化策も含めた幅広い意味での農政の動向もまじえながら、これからを展望する。
◆1990年から2010年までの20年は日本の農業の生産性は停滞していたが、それからの10年ですでに大きな変化が起きている。生産性を比較すると、都道府県レベルでは2、3倍、市町村レベルでは5倍、経営体レベルでは10倍に格差が広がりつつあるという調査結果もある。それを主導するのがICT化とフードバリューチェーン化だ。
◆一口でICT化といっても、一般企業と変わらない経営効率化やデータ利活用から、農業特有の機具の高度化まで様々。フードバリューチェーン化も大きく垂直型と水平型に分かれ、企業主導のものから、販売部門を強化した農業経営体まで様々な事例を紹介。コメ政策だけでない経営強化策も含めた幅広い意味での農政の動向もまじえながら、これからを展望する。
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2020/3/25
- ファイルサイズ20676 KB
この本はファイルサイズが大きいため、ダウンロードに時間がかかる場合があります。Kindle端末では、この本を3G接続でダウンロードすることができませんので、Wi-Fiネットワークをご利用ください。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
農家半減でも、生産性は倍増―成長農業これからの10年を描く。食品産業との連携や農業の成長産業化を主導してきた第一人者が、先進経営の紹介と統計分析で、2030年の農業を見える化! --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大泉/一貫
宮城大学名誉教授/経団連21世紀政策研究所研究主幹/日本政策金融公庫農業経営アドバイザー活動推進協議会会長/日本地域政策学会名誉会長。1949年宮城県生まれ。東京大学大学院修了。農学博士。農業経営の成長を目指す農業改革や、農業政策、地域政策への提言活動に取り組んでいる。内閣府『規制改革会議』(地域経済・農業部会)、内閣官房『食と農林漁業の再生実現会議』、同『産業競争力会議農業分科会』等の委員や専門委員、有識者等を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
宮城大学名誉教授/経団連21世紀政策研究所研究主幹/日本政策金融公庫農業経営アドバイザー活動推進協議会会長/日本地域政策学会名誉会長。1949年宮城県生まれ。東京大学大学院修了。農学博士。農業経営の成長を目指す農業改革や、農業政策、地域政策への提言活動に取り組んでいる。内閣府『規制改革会議』(地域経済・農業部会)、内閣官房『食と農林漁業の再生実現会議』、同『産業競争力会議農業分科会』等の委員や専門委員、有識者等を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者について
大泉 一貫
宮城大学名誉教授。新潟食料農業大学学術顧問。21世紀政策研究所研究主幹
1949年生まれ。74年東京大学農学系研究科修士課程修了。東北大学農学博士。東北大学助教授、宮城大学教授などをへて現職。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
宮城大学名誉教授。新潟食料農業大学学術顧問。21世紀政策研究所研究主幹
1949年生まれ。74年東京大学農学系研究科修士課程修了。東北大学農学博士。東北大学助教授、宮城大学教授などをへて現職。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B086MFFLXG
- 出版社 : 日経BP (2020/3/25)
- 発売日 : 2020/3/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 20676 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 296ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 86,377位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 10,789位ビジネス・経済 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
カスタマーレビュー
5つ星のうち3.8
星5つ中の3.8
38 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年5月28日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
6人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2020年5月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
フードバリューチェーンをやるには売上高5,000万以上の規模がないと出来ない。地域のリーダーによってフードバリューチェーンをつくっていくしかないとの本。日本の農家の9割が小規模農家。日本の土地柄区画整備等で農地の拡大を行う事が難しく、補助金を出して小規模農家を生かしているのが現状。 フードバリューチェーンについてはマーケットインの発想でやりましょうともう何年も前から言っているのに未だにこのような本が出版されるとは農家にその考えが浸透していない証。補助金もらえば生きれるから小難しい事をやりたくないのは事実。
2020年11月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
過去30年に渡る日本の農業の歴史と2030年以降を見据えた日本農業の進むべき方向性の提言を網羅する良書。
私の理解をまとめると、90年から2010年に渡る20年間はそれ以前の高度成長期には機能していた保護農政が合わなくなった日本の農業の衰退期。保護農政の価格維持と参入規制の組み合わせが機能しなくなり、農業の産出額と生産性が著しく減退した。原因はコメ中心の保護政策が米価支持のための生産調整により生産意欲の減退と共に、農業従事者の高齢化が進み、自作農は小規模兼業農家となり、労働集約や規模拡大が進まなかったことに起因する。ここ10年は農政が成長政策に転じ、産出規模も生産性にも好転していることは良い傾向と言える。
しかしながら、今後さらなる日本の農業の発展のためには、農業を経営と捉え、実践していく経営者がより一層増えることが重要と著者は唱えている。単に畑仕事ではなく、市場のニーズを捉え、また需要の創出を行い、それに合わせた農作物の計画生産、経営管理の合理化、生産性の改善、人材の育成、まさに「経営」をする「経営者」が増えることが重要であり、そのような環境を整えることが農政の要となるだろう。スマート農業は様々な側面があるものの、経営する農業者が増えれば、自ずと推進されると思う。
儲からない苦痛の農業から脱皮し、楽しい安定した農業になれば、良い多くの若い就農者が増え、日本の農業が発展し、強くなり、輸出も増えて、産出額が大きくなっていくことは十分可能と感じた。
私の理解をまとめると、90年から2010年に渡る20年間はそれ以前の高度成長期には機能していた保護農政が合わなくなった日本の農業の衰退期。保護農政の価格維持と参入規制の組み合わせが機能しなくなり、農業の産出額と生産性が著しく減退した。原因はコメ中心の保護政策が米価支持のための生産調整により生産意欲の減退と共に、農業従事者の高齢化が進み、自作農は小規模兼業農家となり、労働集約や規模拡大が進まなかったことに起因する。ここ10年は農政が成長政策に転じ、産出規模も生産性にも好転していることは良い傾向と言える。
しかしながら、今後さらなる日本の農業の発展のためには、農業を経営と捉え、実践していく経営者がより一層増えることが重要と著者は唱えている。単に畑仕事ではなく、市場のニーズを捉え、また需要の創出を行い、それに合わせた農作物の計画生産、経営管理の合理化、生産性の改善、人材の育成、まさに「経営」をする「経営者」が増えることが重要であり、そのような環境を整えることが農政の要となるだろう。スマート農業は様々な側面があるものの、経営する農業者が増えれば、自ずと推進されると思う。
儲からない苦痛の農業から脱皮し、楽しい安定した農業になれば、良い多くの若い就農者が増え、日本の農業が発展し、強くなり、輸出も増えて、産出額が大きくなっていくことは十分可能と感じた。
2021年1月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
農業については全く無学の身です。
最近食料問題と一緒によく新聞で取り上げられる最新の農業を深く理解したく講読しました。
あくまで参考としてですが
第1〜第3章までは畑違いの私にはとっつきにくく、挫折しかけていました。
第4章で「第6次産業」という言い回しと一緒に、個人的には多少馴染みがある経営ビジネスモデルというような理解しやすい話の流れへ。
端的には農業という「業種の特殊性」を加味したビジネスモデルの構築?
DX、組織の組み立て、人材育成等…
他の業種でもとり組まれていることを、現代の農業に当てはめて。
新聞記事をより的確に理解するのには、もう少し入門書スタイルのものがベストと思いました。
ただし本書4章以降で、新聞で取り上げられる最新?の農業についての記事についてかなり理解しやすくなると思います。
最近食料問題と一緒によく新聞で取り上げられる最新の農業を深く理解したく講読しました。
あくまで参考としてですが
第1〜第3章までは畑違いの私にはとっつきにくく、挫折しかけていました。
第4章で「第6次産業」という言い回しと一緒に、個人的には多少馴染みがある経営ビジネスモデルというような理解しやすい話の流れへ。
端的には農業という「業種の特殊性」を加味したビジネスモデルの構築?
DX、組織の組み立て、人材育成等…
他の業種でもとり組まれていることを、現代の農業に当てはめて。
新聞記事をより的確に理解するのには、もう少し入門書スタイルのものがベストと思いました。
ただし本書4章以降で、新聞で取り上げられる最新?の農業についての記事についてかなり理解しやすくなると思います。
2020年5月24日に日本でレビュー済み
10年後の2030年の日本農業の姿を予測している。
農業を客観的にとらえた良書である。
特に、第1章の3「農業の生産性や農業所得は2倍から3倍にできる」は圧巻だ。
全国平均の2から3倍の生産性を上げている県が既にある。平均の5倍の市町村がある。経営ごとに見ると平均の6倍近い経営がある。
農業所得は、2010年から5年で1.4倍、7年間で1.8倍になった。
驚きのデータが並ぶが、こうしたデータは、県や市町村の農政担当者には大いに役立つ。
農業振興策はやはりエビデンスに基づいて考えるのが一番だ。
他にも2030年を予測させるデータがある。農家戸数は現在の約4割へ。
大規模農家の産出額シェアーは5割から7.5割へ、といったものだ
日本農業は、生産性の高い大規模農家を中心としたものになるといっている。その背景にはフードチェーン農業の実現があるというのが本書の意図といえよう。
食品産業とのアライアンス、マーケットイン、イノベーション、多事業化・規模拡大をキーワードとしている。
最近の農村の実態を反映していて、読んでいて「なるほど」と思わせ、説得力がある。
農業を客観的にとらえた良書である。
特に、第1章の3「農業の生産性や農業所得は2倍から3倍にできる」は圧巻だ。
全国平均の2から3倍の生産性を上げている県が既にある。平均の5倍の市町村がある。経営ごとに見ると平均の6倍近い経営がある。
農業所得は、2010年から5年で1.4倍、7年間で1.8倍になった。
驚きのデータが並ぶが、こうしたデータは、県や市町村の農政担当者には大いに役立つ。
農業振興策はやはりエビデンスに基づいて考えるのが一番だ。
他にも2030年を予測させるデータがある。農家戸数は現在の約4割へ。
大規模農家の産出額シェアーは5割から7.5割へ、といったものだ
日本農業は、生産性の高い大規模農家を中心としたものになるといっている。その背景にはフードチェーン農業の実現があるというのが本書の意図といえよう。
食品産業とのアライアンス、マーケットイン、イノベーション、多事業化・規模拡大をキーワードとしている。
最近の農村の実態を反映していて、読んでいて「なるほど」と思わせ、説得力がある。
2020年6月29日に日本でレビュー済み
農業には大きな変革が起きています。過去にも起きてきたし、今後も起きると考えるのが自然と思います。しかし農業界の人は、それに気づかないふりをしながら十年一日の説を唱えてきたのではないでしょうか。そうした業界にあって、たとえ10年後であってもこれだけ自信を持って予測できる人はいないのではないかと思いました。
農家は10年で6割減少、その代わり残った大規模農家が日本農業の7割以上を生産する。そのためのビジネスモデルが必要だ。それがフードチェーン農業だという。著者の慧眼に感服。
農家は10年で6割減少、その代わり残った大規模農家が日本農業の7割以上を生産する。そのためのビジネスモデルが必要だ。それがフードチェーン農業だという。著者の慧眼に感服。





