「フラワーズ・イン・ザ・ダート」を最後にポールのソロを聴くのをやめてしまった(コステロ効果なのか世評は高いようですが、個人的にはもういいやと思ってしまったアルバムです。シングル曲は好きでしたけれど・・・。)ので、このアルバム、はじめて聴きました。どうして、このアルバムを20数年前に聴かなかったのかと後悔するような、素晴らしい作品でした。わたしの中では、これは名盤、愛聴盤になると思います。このアルバムを買うにあたっては、最新のレコードコレクター誌を参考にしました。そんなもの参考にしなくても、純粋に音楽だけで十分と言われてしまいそうですが、どのバージョンを買うかというので迷ったので参考にしました。価格的に、初めからデラックスエディションを買う選択肢はなかったかもしれませんが、もし20年来このアルバムを聴きこんでいたら、それもありだったかなと思ったりしました。ただ、このスペシャルエディションのCD2は、デラックスエディションのCD2の全曲と、CD3の10曲から6曲、CD4の6曲から4曲の抜粋とのことで、内容も充実している。レコードコレクター誌の記事では、このアルバムの魅力をアコースティックな音作りと、シンガーソングライターとしてのポールを再確認したことと書かれていましたが、すごく共感しました。それで、シンガーソングライターとしてのポールの魅力を堪能するには、ギター、ピアノの弾き語りが独立した作品としても楽しめるこのCD2は必須アイテムといえるのではと思った。楽曲がより内省的に響いてきます。本編CD1のジェフ・リン色を抑えた、繊細で丁寧なプロデュースぶりは、ジェフ・リンのプロデュース作としても最高のものじゃないのかと思います。それでも、シングルになったヤ「ヤングボーイ」など、ちらりとポールwithELO?という瞬間があったりして、鳥肌たちました。このシングル、発売当時も聴いたはずなのですが、どうせジェフ・リンの音だろうみたいな先入観がさきにたっていて、純粋に音楽と向き合っていなかったなぁと大いに反省。スティーブ・ミラーのギターも大きな聴きどころです。アルバム全体にブルース的な雰囲気がただようのに大きく貢献していると思う。ビートルズの「アンソロジー」後の作品というのも何か目に見えない(音の中に漂う)その影響を感じさせるのかもしれない。このアルバムに不満を感じる人は、もしかすると、今でもかつてのポールを追い求めているかなぁとも思う。わたしの中では「フラワーズ~」からは、ポールの成熟が一気に深まったように思えて、この次の作品を聴くのが楽しみになった。アーカイヴを待つか、中古屋さんで探してみるか、考えてみたい。国内盤は、ポールのコメントと楽曲ごとの解説の翻訳、歌詞対訳が付くのがありがたい。盤がきっちりと内袋に入っているのも嬉しい。願わくば、昔のCDみたいに、日本盤独自の微に入り細に入りの解説が読んでみたかった(ビートルズ・シネ・クラブの人による解説です)。
ざっと思いつくままに感想を書いてしまいましたが、なんと「ヤングボーイ」ジェフ・リンのプロデュースではなく、ポールのセルフプロデュースだったのですね!ジェフ・リンの音楽の根っこのほうには、ビートルズ(ポール)があるはずなので、本家のポールからELOが聴こえてきてもおかしくはないのですが。全14曲のうち8曲がジェフ・リンと、2曲がジョージ・マーチンとの共同、4曲がポール単独のプロデュース。ジェフ・リンのこの作品(アルバム)でのプロデュースが素晴らしいという気持ちにかわりないが、このアルバムの一番のポイントは、ポール自身によってアルバム全体がコントロールされているということにあるのでは思った。コステロやトレバー・ホーンらによる「フラワーズ~」にくらべて、ポールがより近く感じられてリラックスしてポールの音楽にひたれるように思う。当時、評論家たちはジョン・レノンにかわるパートナー探しで盛り上がっていたように思うが、ポールのソロで一番いいのは、他人にゆだねずに、本人自身が自分のやりたいことに没頭している作品なのでは?と思った次第です。CD2に収録のシングルB面曲も良かった!