サメ映画専門のレビュアーさんが紹介していて興味がわいたので拝見した。開始1分でわかるが、今作は映画作品として最低限のラインを下回る類の作品、つまりサメ映画、ゾンビ映画で大多数を占めるタイプの作品だ。カメラワークやカットが稚拙で、特撮はチープという言葉ですら高級に思えるほどだ。さらにはサメ映画でありながら恐怖や緊張感を感じるシーンはなく、俳優たちは大根ぞろいときている。人造ザメの研究をするマッドサイエンティストが主人公に秘密の計画をペラペラしゃべったり、終盤でポッと出てくる殺意の高い牧場の人々にサメが退治されてしまったりと筋書きもおかしなところばかりだ。
だが、今作は同系統の作品の中では観れるほう、少なくとも私は苦痛を感じることなくエンディングを迎えられるレベルに達していた。まず、1時間ちょっとと尺が短く、さらに資料映像やシーンの使いまわしも乱用はされておらず、口論などの足の引っ張り合いも少なくテンポがそれなりにいい。次にキャラだ。白衣や制服など外見で区別がつくキャラや、セリフは一切なく身振り手振りでコミュニケーションをとるキャラなど、演技力に依存せずにキャラを描き分ける工夫をしているため誰が誰だかわからなくなる心配がない。あまりストレスを感じずに観ることができたのでチープさも笑って許容できた。
酷評したものの、私はこの手の映画は嫌いではない。なぜなら観ることで謙虚さというものを忘れずにいることができるからだ。私たちが目にする映画のほとんどは大作と呼ばれるものだ。そのようなものばかり観ていると、ついつい評価基準が『スターウォーズ』や『バックトゥザフューチャー』などの歴史的大傑作になってしまう。もちろん、大作として作られる映画のほとんどは大傑作たちに劣り、レビューしようとすると悪いところに目がいきがちだ。
だが、この手の映画をみることで、それら大作というものがとんでもないほどの技術と努力の集大成で、そもそも映画作品として最低限の形をとったものをつくることがいかに高度なことかがわかる。私たちは結果だけ見て偉そうに文句を垂れているだけということに気づく。後出しじゃんけんは誰だって勝てるのだ。

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