タイトルが変わって早くも6号目の「フットボール批評」。2018年のロシア大会に向けての
第一歩となるシンガポール戦、ホームゲームでまさかのスコアレスドローという結果に
「なんでこうも決められんのだ?」と頭を抱えた人が多い今だから問う「決定力って何?」
…と、書いてみたけど意外な事に決定力関連の記事はそれほど多くない。厳密に寄り分ければ
巻頭カラーページの約20頁、四つの記事が該当するミニ特集レベルだと思って読んだ方が吉
ただし、ページ数が少ないからといって詰まらん訳ではなく、相手が疲れておらず中央から
崩しにくい時間帯でのセットプレーの重要性を数字的な裏付けから説いた清水英斗の記事や
安易なポゼッション批判や「縦に早いサッカー」賞賛に対して西部謙司の警鐘とも言えるコラム
退いて守る相手に対するサイドの使い方を図解した北条聡や小澤一郎の記事は大いに参考になった
今回の目玉はこの特集の直後に掲載された前日本代表監督アギーレのロングインタビューかと
退任した今だから言える日本サッカーに対する印象は貴重。特にMLSにも共通する日本人の
「教科書通りのサッカー」、言い方を変えると欧州や中南米で見られる本物の「競争」としての
サッカーができない日本人の「お行儀の良さ」について語った部分は必見。日本サッカーの
分析記事としては庄司悟のJ1とブンデスリーガの「走行距離」「スプリント回数」を比較した
記事も面白い。走る距離は同じでも「走り」その物の質が全く違う事が明かされ非情に興味深い
[J1ってなんかもっちゃりしているなあ」と感じる方には「なるほど!」と思われるかと
この他、インタビュー記事ではオシム、ジーコといったかつての日本代表監督への取材記事が
載っている他、元横浜マリノスのストライカー安永への連載インタビューではセカンドキャリア
というものについて色々考えさせられる(違う仕事をする事によるストレスで二度も肺炎って!)
先日大分トリニータを解任された田坂監督の四年半を振り返るインタビュー記事も金の無い
中で何が出来て何が出来なかったのかが伝わってくるものがあった
サッカー外の関連人物の特集では最近報道を賑わせている「新国立競技場問題」についての
建築エコノミスト森山高至へのインタビューや川崎フロンターレの社長を十数年に渡って務めた
武田信平氏への取材記事がなかなか読ませてくれる
変わった所ではようやく会長が選挙制になったJFAの会長に誰を望むか?という質問に
対する各ジャーナリストへの質問記事。岡田武史氏や原博美、宮本恒靖といった常識レベルの
人選がある一方で、イビチャ・オシムや松本育夫といった大胆な人選もあるが…一番驚いたのは
「党首」こと大島和人氏の超意外な人選…いや、熱い人ではあるけど…どうなんだろうねえ???
毎度おなじみフランチェスコ・マクリによる日本サッカーにおける守備文化の無さをぶった切る
連載は今回で頂点に。マクリの虫の居所が悪かったのかもしれないけど、本当に容赦なく、今季
J11stステージにおけるJ1各クラブの守備を根こそぎボロンチョに批判しまくっている
(特に甲府と浦和のサポの方は要注意。本っ当に容赦ないです…気分が悪くなっても自己責任で!)
特にマクリが指摘しているのが日本人DFの「スライディング病」。イタリア人にしてみれば
守備の最後の手段であるスライディングを安易にやらかしてはスコスコ抜かれるJ1各チームの
守備はお笑い草らしい。例に挙げられているのが2000年元旦・天皇杯決勝でのストイコビッチの
「伝説のゴール」だが、これはマクリに言わせれば広島守備陣の滑りまくりが産んだ物だとか…
個人的ベスト記事は小田嶋隆によるコラム「フットボール星人」。ユースのサッカーと部活サッカーを
比べ、時代遅れと笑われながら何故か修羅場では相変わらず強さを見せる部活サッカーの強さの
正体についての考察は「なるほど!」と言わざるを得なかった
毎度毎度楽しませてくれる雑誌だけど、今回も内容充実。買って損は無し!
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