著者ピーター・リンチは、全米NO.1ファンドマネジャーとまでいわれた株式投資界の伝説の人物である。リンチはアメリカの株式市場が不況に吹き荒れていた1977年から1990年の13年間で、2000万ドルだったマゼラン・ファンドを140億ドルという驚異的なファンドに育て上げた。
本書は、そのファンドマネジャーの座を降りた直後の1989年に出版された原書『ONE UP ON WALL STREET』の邦訳である。翌年の1990年に日本でも出版されたが、2000年を期に「ミレニアム版への序章」が新たにつけ加えられて再出版された。その序章で「アマチュアの強み」が述べられていることからもわかるが、本書はリンチが個人投資家に向けて「基本的な情報と勇気を与えるため」に書いたものである。プロの投資家として成功の秘訣を余すところなく語る一方で、プロが買う株や市場の噂に惑わされず、アマチュアの優位性を遺憾なく発揮した投資法を説く。
そのなかでリンチは、「ピーター・リンチや他のプロが買っている株は無視しろ」と、ものすごいことを平気で言う。同様に「株で金儲けをするのに株式市場全体の予測をする必要はない」など、率直なアドバイスとその理由を明快に語る。また、投資の対象は、単純な事業をやっていて、退屈な名前ほどいいと言ったり、株式に成功する人を遺伝や環境のせいにする人について、「私の寝た揺りかごの上に株価ボードがあったわけではない」と言ったり、ユーモアのある話ぶりには飽きるところがない。
本書は「投資を始める前に」「有望株の探し方」「長期的視野」の全3部からなり、株の判断に役立つ数字の解説や株の分類による株動向のとらえ方、情報収集のポイント、ポートフォリオ、売買のタイミングなど、投資の基本から実践的な内容までが並ぶ。
ただ、本書はアメリカ市場に基づいているため、リンチの投資法をそのまま日本市場に当てはめて考えるわけにはいかない。しかし、本書から得られる投資の基本的な知識、考え方、心構えは普遍的なもので示唆に富んでおり、初心者だけでなく、ある程度経験を積んだ投資家にとっても得られるものは多いはずだ。(大角智美)
内容(「MARC」データベースより)
自分はどんな投資家か見抜く法、株式と債権のリスクの比べ方や成功するための原則、証券会社の使い方や営業報告書などの情報の利用など、プロの投資家としての著者の成功の秘訣について紹介する。90年刊の新版。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
リンチ,ピーター
1944年生まれ。ボストン大学を経て、ペンシルバニア大学ウォートン校でMBA(経営学修士)を取得。1969年フィデリティ社に入社。2年間の兵役義務の後、1977年から90年までマゼラン・ファンドの運用を担当。この間に同ファンドの資産を2000万ドルから140億ドルへ世界最大規模に育て上げ、全米No.1と称される伝説のファンドマネジャー。現在、フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ社副会長
ロスチャイルド,ジョン
金融コラムニスト
三原/淳雄
1937年生まれ。九州大学経済学部卒業。日興証券入社。米ノースウェスタン大学経営大学院留学。ニューヨーク勤務、ロサンゼルス支店長などを経て、同社退社。現在、金融・経済評論家として活躍中。著訳書多数。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会特別顧問。日本FP学会顧問。(社)日本商品投資販売業協会理事
土屋/安衛
1933年生まれ。東京大学経済学部卒業。山一証券入社。ペンシルバニア大学ウォートン校留学。ロサンゼルス、香港、アムステルダムに勤務。海外金融業務室長などを経て、同社退社。現在、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)