奨学金のローンを抱えた主人公が自分の父親を探し・・・というお話。
全部で7部に分かれていて、それぞれ視点になるキャラが違い、時間や場所も過去・現在を行きかう小説で、過去のドイツやボリビア、現在のアメリカを舞台にしながら、それぞれのキャラがそれぞれの章で絡み合い、人間関係の中で悩み、葛藤し、人生を歩んで行くという感じの小説だと思いましたがどうでしょうか。
そこに更に、訳者あとがきにある通り、「ジャーナリズムとインターネット、西と東、ジェンダーとしての男と女といった二者関係も重要になっている」という問題を含ませた小説だと思いました。
また、女性キャラの父親探しが、マルチメディアの発達で自分の事を主張しやすい反面、ほんの少しの事で炎上したり誹謗中傷されてアイデンティティの喪失や混乱に悩む現代社会を反映している小説にも思えました。主人公の名前をピュリティ=潔白としたのも現代ではそんな物はない、というアイロニーを感じました。
著者は家族小説を創作していると言われるのがあまり好きではないそうですが、家族の価値観が希薄化した現代にこういう小説やその他の作品で家族の問題を扱っているので、どうしても家族小説に思えてしまいます。
そこに更に、核兵器の問題や環境問題や東欧の民主化等を絡めて大変重曹な大作に仕上がっているとも思いました。
難を言えば、一つ一つのシチュエーションが長く、普通なら一行あける所でもべたに続ける文体なので、読むのに疲れました。しかも800ページもあるし。昔のヨーロッパの作家(プルースト、バルザック等)みたいで読み難い事この上ない小説でもありました。最近一番好きな作家ですが。
今一番脂ののった作家の最新作。是非ご一読を。
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ピュリティ 単行本 – 2019/4/18
ジョナサン フランゼン
(著),
岩瀬 徳子
(翻訳)
購入を強化する
ピップ・タイラーは23歳。高額の学生ローンを抱え、自宅はアナーキストたちとのシェアハウス。仕事は歩合制の電話営業。ただひとりの身内である母親は、どうも偽名を使っているらしく、さらに父親が誰なのか教えてくれない。 父親の素性がわかるのではないか――そんな希望をもって、ピップは南米に本拠地を置く情報公開組織〈サンライト・プロジェクト〉に参加し、謎めいたリーダー、アンドレアス・ヴォルフを知る。ヴォルフは彼女にある秘密を打ち明けるのだが……
秘密と嘘、理想主義、正義と不正、愛情、憎悪、そして殺人――壮大なスケールで織りなされる現代版『大いなる遺産』。全米図書賞受賞作『コレクションズ』、破格の大作『フリーダム』の著者が放つ最新作。
秘密と嘘、理想主義、正義と不正、愛情、憎悪、そして殺人――壮大なスケールで織りなされる現代版『大いなる遺産』。全米図書賞受賞作『コレクションズ』、破格の大作『フリーダム』の著者が放つ最新作。
- 本の長さ832ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2019/4/18
- 寸法14.3 x 2.3 x 19.4 cm
- ISBN-104152098546
- ISBN-13978-4152098542
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ピップ・タイラーは23歳。高額の奨学金ローンを抱え、自宅はアナーキストたちとのシェアハウス。仕事は歩合制の電話営業。ただひとりの身内である母親は、どうも偽名を使っているらしく、さらに父親が誰なのか教えてくれない。父親についてわかるのではないか―そんな希望をもって、ピップは南米に本拠地を置く情報公開組織“サンライト・プロジェクト”に参加し、謎めいたリーダー、アンドレアス・ヴォルフを知る。ヴォルフは彼女にある秘密を打ち明けるのだが…秘密と嘘、理想主義、正義と不正、愛情、憎悪、そして殺人―壮大なスケールで織りなされる現代版『大いなる遺産』。
著者について
長篇The Twenty-Seventh City(1988)でデビュー。第二長篇Strong Motion(1992)を経て、2001年に発表した第三長篇『コレクションズ』(ハヤカワ文庫)で全米図書賞を受賞。2010年に発表した第四長篇『フリーダム』(早川書房)も100万部を突破するベストセラーとなり、アメリカの国民的作家としての地位を確立した。2015年に発表された第五長篇にあたる本書も有力紙誌より高い評価を得た。他にエッセイ集や自伝など三作の著作がある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
フランゼン,ジョナサン
長篇The Twenty‐Seventh City(1988)でデビュー。2001年に発表した第三長篇『コレクションズ』(ハヤカワepi文庫)で全米図書賞を受賞。2010年に発表した第四長篇『フリーダム』(早川書房)も100万部を突破するベストセラーとなり、アメリカの国民的作家としての地位を確立した
岩瀬/徳子
お茶の水女子大学文教育学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
長篇The Twenty‐Seventh City(1988)でデビュー。2001年に発表した第三長篇『コレクションズ』(ハヤカワepi文庫)で全米図書賞を受賞。2010年に発表した第四長篇『フリーダム』(早川書房)も100万部を突破するベストセラーとなり、アメリカの国民的作家としての地位を確立した
岩瀬/徳子
お茶の水女子大学文教育学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2019/4/18)
- 発売日 : 2019/4/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 832ページ
- ISBN-10 : 4152098546
- ISBN-13 : 978-4152098542
- 寸法 : 14.3 x 2.3 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 744,909位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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800頁を超す、手に重い長篇小説です。広く深い物語です。サスペンスの緊張感も味わえました。
行方不明の父親を探し出すまでの娘ピップの旅の物語。
嫁と姑の仲が原因となった悲劇の物語です。
「清らかさも、結婚も、くそくらえ」(614頁)の物語。
破綻した結婚の物語。相性の悪い妻を捨てた夫の物語。捨てられた妻の復讐の物語。
「友情以上の友情」(685頁)の物語。サスペンス小説。
莫大な財産が、三人の息子たちを、父親と娘の関係を、夫と妻の関係を、
どんな風にダメにしてしまうかを描いた物語です。
これだけの幅の物語を語る著者の声(ヴォイス)は、何オクターブ必要でしょうか?
タイトルの『ピュリティ』は、抽象的、哲学的な意味の英単語です。
本文中のプロットにも、“purity” に関する言葉がいろいろ出てきます。
訳者の岩瀬徳子さんは、本文中では「ピュリティ」を「潔白」とか「純粋」と訳しています。
75頁 その気持ちが“潔白(ピュリティ)”という単語と結びついてしまった。
91頁 ヴォルフの名前に“潔白(ピュリティ)”という語を足して検索すると
96頁 どう? ミスター・潔白(ピュリティ)。
303頁 ピップの本名はピュリティ――純粋――だった
406頁 ミスター・潔白は一巻の終わりってことね
656頁 純粋さ(ピュリティ)によって名声を得ていることに皮肉めいた満足を感じ
「潔白」という訳語は傑作です。不倫はしていないという身の潔白を示す語だから。
「純粋」という訳語は、皮肉っぽいです。何事も純粋では、この不純な俗世は渡れないから。
まして性的に純粋ってことになると、意味が分かりません。
体は純粋だが、心は不純ということもあります。誰しも不純になりやすい。
「わたしたちふたりの計画は、慎ましく目立たない純粋な暮らしをして」(574頁)
「純粋に幸せなのだ、と言った」(576頁)
この小説に描かれたプロットは、どれも不純なものばかりのように思います。
不純を描けば、純粋のイメージがあぶり出されて浮かび上がってくるとばかりに、
性的不純、体の不潔、トイレの不浄、嘘、信頼の裏切り、アルコール中毒、
インターネットでの不正行為、殺人などの不純のプロットが次々に、
これでもかこれでもかと描かれています。
この本は、興味深くて途中で読むのを止められなくなります。
この世に100%純粋なものなんて実在しないということがイメージできました。
「ピュリティ」に囚われてしまっては、苦しくて呼吸できません。生きていけなくなります。
お金に関しては特に、「ピュリティ」に囚われてしまっては、生活が苦しくなります。
お金は魔物です。あり過ぎても、足りなくても、生活問題の原因になりやすい。
ピュアな道徳観、潔癖な性格も、やっかいです。
「セックスそのものについて潔癖症というわけではなく、問題だったのは、両親のセックスに対する奇妙な態度がピップにとってあまりに異質で、古風で、耐えがたいほど悲しく思えたことだった。
ほかにも胸のざわつくことが山のように書かれていたが、最後まで読みきるころには、最大の障害は財産だと理解できた」(761頁)
「きみの金は受けとれない」(559頁)
「一ドルも二千万ドルも同じことよ。道徳から見れば」(809頁)
こういう古い道徳観、ピュアな金銭感覚が、今のアメリカ人の中にまだ残っているのでしょうか?
分厚いこの本をやっと読み終わってみると、本のタイトルの『ピュリティ』とは、
単に娘「ピップ」の正式な名前「ピュリティ・タイラー」の「ピュリティ」のこと。
外国人の名前なのだから、訳さずに『ピュリティ』とするのが妥当です。
「ピュリティ」をしいて日本語に訳すとしたら、本のタイトルは「純」となるかな?
本文中の「ピップ」は、「純(ジュン)」と置き換えられそうです。
正式な名前は、「純子・タイラー」と訳せそう?
純血ではなく、混血みたいな名前。
「ピュリティ」を無理して漢字に訳すのは無理。止めます。カタカナだって日本語です。
“purity”という英語の意味は、
(道徳基準上の)高潔さ、清らかさ、純潔、純度、純粋、清潔、清浄、清廉、潔白、純正、善など。
“purity”の反対語は、
穢(けが)れ、下劣、卑猥、不道徳、不純、不潔、不浄、嘘、裏切り、中毒、不正、偽善、悪、汚れたお金、など。
主人公は、ピュリティ・タイラー。愛称「ピップ」
「この名前は母親がこめた願いとは正反対の人間を作り出した。名前の重みから逃れるようにして、高校では薄汚れたふるまいばかりしていたし、いまも、他人の夫を望むような薄汚れた人間だ」(75頁)
この娘ピップはお金に関しても「ピュア」じゃないんです。むしろ、ドロドロで汚い。でも、仕方ない。
高額の奨学金ローンを抱えていて生活が苦しいのですから。
「奨学金ローンも清貧の誓いと同じ役割を果たしていた」(63頁)
アメリカ合衆国を建国したピューリタンたちは清貧でした。
それが今、マネー・マネー・マネーの国に、すべてが金の国になっているように見えます。
「オバマが大統領になっていろいろ変わると思っていたのに、何も変わっていない。銃も、ドローンも、グアンタナモのことも」(726頁)
著者のジョナサン・フランゼンさんは、この本に逆説的なタイトルを付けたのではないか、と感じました。
人生、誰しも「ピュア」なままでは生きていけないからです。
「悪を知ったうえで、善を選んだ」(674頁)
読後、本を閉じて、表紙の「装幀」(石黒潤)が暗示的であることに気付きました。
純色(pure color)の赤と青と緑で区分けした分割画面が、とても鮮やかで美しい。
しかし、表紙の中の「写真」の、荒れて波立つ海の部分だけは、純色ではなく、混濁色の灰色です。
灰色の海。その海に向かって立つ若い娘の後ろ姿。
海の色は、汚れた灰色、汚れちまった灰色です。
純色から最も遠い、彩度の低い、鮮やかさのない灰色の海です。現実を表象しているように見えました。
《備考》
<各章の舞台>
オークランドのピュリティ: 米国カリフォルニア州オークランド
悪趣味共和国: 1970年代の東ドイツ
トゥー・マッチ・インフォメーション: テキサス州のアマリロ市。コロラド州デンバー市
月光酪農場: アルゼンチンのブエノスアイレス。ボリビア
[le1o9n8a0rd]: ニューヨーク
殺人者: ライプツィヒ。ベルリン。
雨が来る: オークランド。ウィチタ。
<主な登場人物>
ピップ(ピュリティ・タイラー):
「24歳」(332頁)。本名「サンドリーヌ」(775頁)。トムの娘。
「奨学金ローンの支払いがまだ続いていた」(755頁)。「子どものころはずっと極貧生活」(783頁)
アナベル・タイラー(本名アナベル・レアード):
「36歳」(476頁)ピップの母親。「億万長者」(754頁)。トムの二歳年上の元妻。
倫理規範を持つ大企業マカスキル代表取締役兼会長の娘。
「無尽蔵の財産を持ちながらそれを受けとろうとはせず」(574頁)
トムとの11年の結婚生活の後、トムに捨てられて離婚。
妊娠したとわかって、夫が子どもを奪うのを恐れて、姿を消す。名前も変えて。
2002年、失踪から11年経っても行方不明。
デイヴィッド・レアード(641頁): アナベルの父。2003年死亡。
トム・アベラント:
トマス(523頁)。アナベルの元夫。「清らかな人」(571頁)。大学四年生(505頁)。記者。
アナベルと離婚後、デンバーにレイラと25年間、住む。「トムの回想録」(786頁)
レイラ・ヘルー: 52歳(320頁)。ピュリッツァー賞記者(441頁)
シンシア・アベラント: トムの姉。
アンドレアス・ヴォルフ:
「東ドイツの著名な反体制主義者」(656頁)。「体制批判者」(609頁)
「彼のなかで何かが壊れている」(615頁)。「殺人者」(662頁)。
「自分は自分を殺し、自分になった」(671頁)。「自殺」(758頁)
カーチャ・ヴォルフ: アンドレアスの母親。
アンナグレット: アンドレアスと十年間暮らす。
行方不明の父親を探し出すまでの娘ピップの旅の物語。
嫁と姑の仲が原因となった悲劇の物語です。
「清らかさも、結婚も、くそくらえ」(614頁)の物語。
破綻した結婚の物語。相性の悪い妻を捨てた夫の物語。捨てられた妻の復讐の物語。
「友情以上の友情」(685頁)の物語。サスペンス小説。
莫大な財産が、三人の息子たちを、父親と娘の関係を、夫と妻の関係を、
どんな風にダメにしてしまうかを描いた物語です。
これだけの幅の物語を語る著者の声(ヴォイス)は、何オクターブ必要でしょうか?
タイトルの『ピュリティ』は、抽象的、哲学的な意味の英単語です。
本文中のプロットにも、“purity” に関する言葉がいろいろ出てきます。
訳者の岩瀬徳子さんは、本文中では「ピュリティ」を「潔白」とか「純粋」と訳しています。
75頁 その気持ちが“潔白(ピュリティ)”という単語と結びついてしまった。
91頁 ヴォルフの名前に“潔白(ピュリティ)”という語を足して検索すると
96頁 どう? ミスター・潔白(ピュリティ)。
303頁 ピップの本名はピュリティ――純粋――だった
406頁 ミスター・潔白は一巻の終わりってことね
656頁 純粋さ(ピュリティ)によって名声を得ていることに皮肉めいた満足を感じ
「潔白」という訳語は傑作です。不倫はしていないという身の潔白を示す語だから。
「純粋」という訳語は、皮肉っぽいです。何事も純粋では、この不純な俗世は渡れないから。
まして性的に純粋ってことになると、意味が分かりません。
体は純粋だが、心は不純ということもあります。誰しも不純になりやすい。
「わたしたちふたりの計画は、慎ましく目立たない純粋な暮らしをして」(574頁)
「純粋に幸せなのだ、と言った」(576頁)
この小説に描かれたプロットは、どれも不純なものばかりのように思います。
不純を描けば、純粋のイメージがあぶり出されて浮かび上がってくるとばかりに、
性的不純、体の不潔、トイレの不浄、嘘、信頼の裏切り、アルコール中毒、
インターネットでの不正行為、殺人などの不純のプロットが次々に、
これでもかこれでもかと描かれています。
この本は、興味深くて途中で読むのを止められなくなります。
この世に100%純粋なものなんて実在しないということがイメージできました。
「ピュリティ」に囚われてしまっては、苦しくて呼吸できません。生きていけなくなります。
お金に関しては特に、「ピュリティ」に囚われてしまっては、生活が苦しくなります。
お金は魔物です。あり過ぎても、足りなくても、生活問題の原因になりやすい。
ピュアな道徳観、潔癖な性格も、やっかいです。
「セックスそのものについて潔癖症というわけではなく、問題だったのは、両親のセックスに対する奇妙な態度がピップにとってあまりに異質で、古風で、耐えがたいほど悲しく思えたことだった。
ほかにも胸のざわつくことが山のように書かれていたが、最後まで読みきるころには、最大の障害は財産だと理解できた」(761頁)
「きみの金は受けとれない」(559頁)
「一ドルも二千万ドルも同じことよ。道徳から見れば」(809頁)
こういう古い道徳観、ピュアな金銭感覚が、今のアメリカ人の中にまだ残っているのでしょうか?
分厚いこの本をやっと読み終わってみると、本のタイトルの『ピュリティ』とは、
単に娘「ピップ」の正式な名前「ピュリティ・タイラー」の「ピュリティ」のこと。
外国人の名前なのだから、訳さずに『ピュリティ』とするのが妥当です。
「ピュリティ」をしいて日本語に訳すとしたら、本のタイトルは「純」となるかな?
本文中の「ピップ」は、「純(ジュン)」と置き換えられそうです。
正式な名前は、「純子・タイラー」と訳せそう?
純血ではなく、混血みたいな名前。
「ピュリティ」を無理して漢字に訳すのは無理。止めます。カタカナだって日本語です。
“purity”という英語の意味は、
(道徳基準上の)高潔さ、清らかさ、純潔、純度、純粋、清潔、清浄、清廉、潔白、純正、善など。
“purity”の反対語は、
穢(けが)れ、下劣、卑猥、不道徳、不純、不潔、不浄、嘘、裏切り、中毒、不正、偽善、悪、汚れたお金、など。
主人公は、ピュリティ・タイラー。愛称「ピップ」
「この名前は母親がこめた願いとは正反対の人間を作り出した。名前の重みから逃れるようにして、高校では薄汚れたふるまいばかりしていたし、いまも、他人の夫を望むような薄汚れた人間だ」(75頁)
この娘ピップはお金に関しても「ピュア」じゃないんです。むしろ、ドロドロで汚い。でも、仕方ない。
高額の奨学金ローンを抱えていて生活が苦しいのですから。
「奨学金ローンも清貧の誓いと同じ役割を果たしていた」(63頁)
アメリカ合衆国を建国したピューリタンたちは清貧でした。
それが今、マネー・マネー・マネーの国に、すべてが金の国になっているように見えます。
「オバマが大統領になっていろいろ変わると思っていたのに、何も変わっていない。銃も、ドローンも、グアンタナモのことも」(726頁)
著者のジョナサン・フランゼンさんは、この本に逆説的なタイトルを付けたのではないか、と感じました。
人生、誰しも「ピュア」なままでは生きていけないからです。
「悪を知ったうえで、善を選んだ」(674頁)
読後、本を閉じて、表紙の「装幀」(石黒潤)が暗示的であることに気付きました。
純色(pure color)の赤と青と緑で区分けした分割画面が、とても鮮やかで美しい。
しかし、表紙の中の「写真」の、荒れて波立つ海の部分だけは、純色ではなく、混濁色の灰色です。
灰色の海。その海に向かって立つ若い娘の後ろ姿。
海の色は、汚れた灰色、汚れちまった灰色です。
純色から最も遠い、彩度の低い、鮮やかさのない灰色の海です。現実を表象しているように見えました。
《備考》
<各章の舞台>
オークランドのピュリティ: 米国カリフォルニア州オークランド
悪趣味共和国: 1970年代の東ドイツ
トゥー・マッチ・インフォメーション: テキサス州のアマリロ市。コロラド州デンバー市
月光酪農場: アルゼンチンのブエノスアイレス。ボリビア
[le1o9n8a0rd]: ニューヨーク
殺人者: ライプツィヒ。ベルリン。
雨が来る: オークランド。ウィチタ。
<主な登場人物>
ピップ(ピュリティ・タイラー):
「24歳」(332頁)。本名「サンドリーヌ」(775頁)。トムの娘。
「奨学金ローンの支払いがまだ続いていた」(755頁)。「子どものころはずっと極貧生活」(783頁)
アナベル・タイラー(本名アナベル・レアード):
「36歳」(476頁)ピップの母親。「億万長者」(754頁)。トムの二歳年上の元妻。
倫理規範を持つ大企業マカスキル代表取締役兼会長の娘。
「無尽蔵の財産を持ちながらそれを受けとろうとはせず」(574頁)
トムとの11年の結婚生活の後、トムに捨てられて離婚。
妊娠したとわかって、夫が子どもを奪うのを恐れて、姿を消す。名前も変えて。
2002年、失踪から11年経っても行方不明。
デイヴィッド・レアード(641頁): アナベルの父。2003年死亡。
トム・アベラント:
トマス(523頁)。アナベルの元夫。「清らかな人」(571頁)。大学四年生(505頁)。記者。
アナベルと離婚後、デンバーにレイラと25年間、住む。「トムの回想録」(786頁)
レイラ・ヘルー: 52歳(320頁)。ピュリッツァー賞記者(441頁)
シンシア・アベラント: トムの姉。
アンドレアス・ヴォルフ:
「東ドイツの著名な反体制主義者」(656頁)。「体制批判者」(609頁)
「彼のなかで何かが壊れている」(615頁)。「殺人者」(662頁)。
「自分は自分を殺し、自分になった」(671頁)。「自殺」(758頁)
カーチャ・ヴォルフ: アンドレアスの母親。
アンナグレット: アンドレアスと十年間暮らす。




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