朝起きたら別人に変身する男の話はSF小説でもよく目にする設定だが、こんなにもガチなラヴストーリーにぶちこんできた作品に出会ったのははじめて。下は小学生から上は70すぎの老人まで、性別国籍を問わない変身カテゴリーの広さはキューティー・ハニーを余裕で上回っている。そんな主人公のキム・ウジン(元は男)の秘密を知っているのはその母親と友人のサンベグのみ。人目につかないようオーダーメイド家具のデザイナーで生計を立てているが、ある日家具店で見掛けたイス(ハン・ヒョンジュ)に一目ぼれしてしまうウジンだった…
眠ったら最後、朝起きたらハゲ爺に変身してしまうかもしれないウジン君、イケメンの順番が回ってくるまでひたすら我慢しついに告白初デート。ひたすら眠らずにまたまた頑張ったウジン君だが、知り合って3日目にとうとう電車の中でうたた寝、ゲーハーオヤジに変身してしまいイスとの恋も終わったかに見えたが、ここで奇跡が起きる。なんと姿形が毎日変わるウジン君をイスが受け入れてくれるというのだ。
あの『パラサイト』を見た後だと、貧乏人が一切登場してこない、まるでバブル時代のトレンディドラマを思わせる映画の背景が嘘っぽく思えてしょうがないのだが、ある意味SFという本作のジャンルにはあっていたのかもしれない。上野樹里を含む総勢10人以上の役者さんをつかって演じられたウジン君はともかく、ドラマ『トンイ』のヒロイン役でブレイクした美人女優ハン・ヒョンジュの存在が、そんな嘘くさい設定をもっともらしく見せてしまっているから不思議だ。
ロングヘアのコンサバファッションがとてもお似合いのハン・ヒョンジュ、角度によって川井郁子→深田恭子→大塚寧々に見えたかと思えば、笑顔が若い頃のチャン・ツィや清野菜名にもどこか似ている阿修羅型美人女優さんなのである。前半ウジンによるナレーション→後半ハン・ヒョンジュ演じるイスのナレーションに変わっていて、ストーリー展開に合わせて主人公が途中で入れ替わる構成にも注目したい。相手によって態度を変えてきたのは、姿形が変わるウジンではなく実はイス自身であったことに観客は気づかされるのだ。
最初のうちは、ウジンがどんな姿で登場するのかドキドキしながら面白がっていたイスだが、男を取っ替え引っ替えしているという噂がたち、恋人を家族にも紹介できないことに悩みはじめる。姿形を特定できないウジンを本当に愛していると言えるのか。情緒不安定で仕事も手につかなくなったイスはついに不眠症にかかってしまう。仲良しの実姉にも秘密を打ち明けられないイスの台詞が泣かせるのだ。「デートした場所や二人で聞いた音楽、頼んだ料理のメニューまで全部覚えているのに、彼の顔だけが思い出せないの(T-T)」
イス同様に(上野樹里以外)顔がまったく思い出せないほどの数の俳優を使って入れ替わり立ち替わり一人の人物を演じさた大胆なキャスティンはある意味観客の感情移入を大いに妨げているわけで、それを一つのラブストーリーとして成立させてしまうハン・ヒョンジュの吸引力に是非とも注目したい1本。しかし入国審査で間違いなく引っ掛かるのにどうやってチェコに渡ったのだろう?ラストのオマケシーンでそこんとこ説明して欲しかった。

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