赤ちゃんが本当に理解できているおもちゃとは?
まず「ベビラボ」とはどのような商品ラインなのでしょうか?
村瀬:「赤ちゃんが本当に理解できているおもちゃを作りたい」というコンセプトで、脳科学を活用したラインアップです。もともと2007年ごろから日立さんと他のベビー玩具とは違うものを開発したいと話をしていたのですが、それから3年ほどかけて開発を行なってきました。通常のおもちゃは開発に1年ほどあれば充分なのですが、日立さんの研究者の方たちと開発するということで、ベビラボ、ブロックラボ共にブランドコンセプト設計から議論して、お互い納得がゆくものにするのに時間がかかりましたね。
開発においてどのような議論がなされましたか?
吉村:当時、脳科学という言葉が知られ始めていた頃で「頭が良くなるおもちゃを作りたい」というアイデアがあったんです。けれどもアカデミックな観点から言うと、本当に頭が良くなるかどうかというのは、20年くらい調査に時間をかけないと証明できないという話をしました。その後、バンダイさんと議論をするなかで、「赤ちゃんの成長に合わせたものを作ろう」ということになりました。
赤ちゃんの成長に合わせるというのは具体的にはどういうことなのでしょうか?
吉村:赤ちゃんには「○ヶ月の赤ちゃんは○○が理解できる」という過去の研究があるんです。そうした成長に合わせて赤ちゃんが本当に理解できていることを明らかにするために、商品企画と脳科学の面ですり合わせ、たくさんの赤ちゃんを調査しました。
商品のコンセプトができてから、商品化するにあたり、苦労した点や工夫した点はありますか?
村瀬:赤ちゃんは言葉で気持ちを伝えられないので、商品開発においてアンケートがとれないんですよね(笑) ですので、その知育玩具を本当に理解できているのか、楽しんでいるのかはなかなか分からないし、それによって親も何を与えていいかわからないというアンケート結果があったんです。ですので、今回は赤ちゃんの脳を測定してどう知ることで、商品企画に反映させています。
どのように脳を測定するのでしょうか?
吉村:日立の「光トポグラフィ技術」という、近赤外光を使って脳の血流を測定する、赤ちゃんから高齢者の方にまで使える安全な計測技術を使用しました。
そこまで入念な試験を行なった商品はあまりないでしょうね…
村瀬:そうですね。とても苦労した点として、試験に時間がかかることが挙げられますね。効果というものを本当に検証しようとすると、一つの商品を作るのにどうしても時間がかかってしまう。でも、その分しっかりした商品になっていると思います。
吉村:商品企画は内容に応じて専門性の高い大学の先生にご協力いただき検証を重ねています。その後Brain Science審査会という日立側の審査会において、誇大広告にならないか、パッケージの文言などを、論文をチェックするのと同じレベルで審査しています。