本書は、東京バレエ団の創立者であり、モーリス・ベジャールなど有名振付家の作品を日本に紹介したり、海外の有力なバレエ団などを日本に招いた、佐々木忠次の生涯を描いている。本書の中にも登場するディアギレフについては、もう10年以上も様々な本を読んできたが、佐々木忠次については全く知らなかった。
佐々木自身は踊らないものの、バレエやオペラに対し強い情熱を持っていること、海外の有力バレエ団などと不可能に近いような交渉を粘り強く重ね、自身の願望を実現していく姿は、ディアギレフと重なる部分が多い。
その熱意と美への強い愛が、ベジャールをはじめ多くのバレエ・オペラ関係者の気持ちを動かし、日本への来日に繋がったことがよく分かる。
芸術に対する援助については冷たかった日本政府を少しずつ動かしているし、常に裏方に徹したことはとても好感が持てる。
興行師という言い方は、日本の場合だとかつて「呼び屋」と言ったりもしていて、あまりいいイメージはないが、佐々木の場合は、まさしく「インプレサリオ」というのが相応しい。
世界のバレエコンクールで日本人が上位入賞するニュースを目にする機会が増えた。それは、日本で世界の優秀なバレエ団を見られるようになったこと、日本のバレエ団が世界で踊る機会が増えたことと無関係ではないだろう。それも佐々木の功績の一つなのだ。
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