ハプスブルク家の傍系子孫貴族、ヴィスコフスキ・エネスコ家の当主が主人公の物語。
エネスコ家は代々カスパール・メルヒオール・バルタザールの3つ、何れかのファーストネームを名付ける事が語られ、父カスパールは、主人公の双子2人に何故か1つのファーストネームしか授けなかった事で不都合が生じたように語られる。
この説明で筆者は頭が混乱した。
どうやら周りの人間には一人に見えているのに、双子なのか?それが名前を一つしか付けなかった事により生じた不都合なのか?
単純に、主人公が双子ではなく多重人格なのだろうか?
それとも双子なのに名前が一つしか無いので周りの人間には一人として認識されている不思議な現象なのか?
主人公の状況の詳細が語られない状況なので、頭の中の???が解決されないまま話が進んでいく。
時代は第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間の時代の欧州。
アドルフ・ヒトラー率いるナチスがドイツに暗い影を落とし始めた頃です。
貴族制度が崩壊して、主人公の家も没落貴族として時代に取り残される様子が語られ、そんな中でも、欧州各地での人との交流、一族との交流、また父の若い後妻(義母)との不義などが語られるが、ここまでは筆者の読書力が拙いからだと思われるが、他のレビュアーさんが高評価している作者の純文学のような文体、と言うのが自分には合わないのだろうか?と感じた。
正直、内容が頭に入って来なくて読むのが苦痛に感じていました。
振り返って、もうちょっと自分なりに読むのが苦痛だった原因を考えたところ、多分、主人公の双子が置かれている特殊な状況があるからだと思いますが、主人公が内証?内省?を語ったり、二人の考えの違いを語ったりと、とにかく心の中の語りが多い。
また純文学的に物事の説明をされるのが、状況把握を難解にしているように感じました。
それらが多すぎて、双子の周りで起こっている出来事が頭に入って来ないような印象を受けて、ただただ文章を読んでいる感じでした。
この頃までは、もう読むのを止めて脱落しようか?と思っていたのですが、私はファンタジーノベル大賞(正確には第一回受賞作の後宮小説)が好きなので、その受賞作であるこの作品も最後までは読もうと思いました。
それが、この双子の不思議な状況が、特殊な体質だからと言うことが語られ、段々と二人の特殊な状況が真相が解って来た辺りで面白く成ってきます。
そして、この特殊な体質は、父からの遺伝かも?という事が匂わされた辺りで、文体も気にならなくなってきて(内面を語る場面も少なくなってきた気がします)、双子が周りで起こる出来事に巻き込まれて行き、次はどうなるの?次はどうなるの?と、続きが気になり引き込まれて行きます。
私は上記しましたが、ファンタジーノベル大賞が好きで購入しました。
「バルタザールの遍歴」という西洋を思わせるタイトルにファンタジー的な要素を感じてタイトル買いでしたが、内容としては、一般的なイメージのファンタジーではなく、ジャンルで言うとサスペンス小説だと思います。
途中から、これはサスペンス小説だと認識できてからは、どこへ向かうか解らない暗闇の中から、進む道を示されたようで面白くなりました。
難解だと思って頭から煙を出しながら読んでいた部分に伏線が巡らされていたり、膝を叩いて得心できたりしたのも良かったです。
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