甲賀忍者と伊賀忍者の最も優れた各十人が雌雄を決するというメインストーリーがただ単に展開していくだけの物語。
横軸として甲賀の男と伊賀の女のカップルの「ロミオとジュリエット」的な要素があるが、二人のバックボーンがまったく説明されないし、争いにほとんど関係して来ないので興味の引くものになっていなくて残念です。
引き裂かれる運命ならば、それがいかほど重大で、読者に愛おしさを感じさせるものとして描写するかが「フリ」として不可欠だったと思います。
ここがはっきり本編に存在しません。
徳川家の三代目を決めるという政争に関しても、特に物語上、重要な位置を示してないので蛇足に感じてしまう。
物語に直接関係して来ないのであれば冒頭で長々やる必要は皆無だと思います。
それより誰の何の話かをもっと明確にする必要があったはずです。
政争によって敵味方に分かれざるを得ない二人の悲恋として物語を構成するのであれば、時代に翻弄されつつも恋に心を燃やす普遍的なお話として感情移入することも可能だったと思うのですが、ひたすら荒唐無稽な魔法のような忍者同士の殺し殺されを淡々と見せられるに終始していて誰にも想いを寄せられず不満でした。
また忍者同士の異形の戦いを主軸に置くのであれば、彼らがどのような環境で、どのような意志を持ってそれらを研鑽し、発揮していくかを描くことがエンタメとして必須だったと思われます。
歴史的、地理的なリアリズムにおいては、甲賀、伊賀の藩は今で言う三重県にあり、そこから東京の間というかなり広い範囲に渡って攻防が描かれているはずなのですが、その辺の市中くらいの範囲で闘いが行われていると錯覚するくらい背景の描写が薄くて、国家のあり方を決定する戦いには到底見えませんでした。もう少し甲賀や伊賀の藩領がどの程度の規模感なのかや、それぞれの因縁、雌雄が決した後の世界線の変遷、さらに細かくいえば戦いが行われる街道や山中がそれぞれどう趣が違うのか描写すべきだと感じました。はっきり言って代わり映えしなくて退屈です。建物内や水場、山中、追撃、逃亡戦、篭城戦などいくらでも見せ場を作れたと思います。
また、戦闘描写においては何が起こっているのかわかりずらい箇所があまりに多かったです。
作中の魔術のような、仕掛けのまったくわからない(説明されもしない)忍術が、一体どのように展開されてどのような効果を発揮されたのかが一見して腑に落ちないので何度も読み直してしまいました。
二十人いる精鋭の忍者たちが、並みの者達に対してどれほど実力差があるのか、などのケレン味溢れるフリを効かせるエピソードなどをもっともっとはさんでも良かったと思います。
倒される相手がどの程度の強さなのかわからないのでカタルシスや危機を脱出した安堵感などがまるで表現されておりません。
それからキャラクターが一気に出てくる割には描き分けができておらず、そして特定の誰かに感情移入させるような構成にもなっていないので非常に読みづらかったです。
横山光輝先生の三国志もそういったきらいはありましたが、章ごとに誰が主人公か明確に示されていたのでそこまで混乱しませんでしたが、この作品においては色々なキャラクターをほとんど同時に描写するために大混乱してしまいます。髪の色を変えるなり、敵味方で明確にコスチュームを分けるなり、覚えやすい名前にするなり、キャラが存在する場所を読者に特定させるなり(同じような造りの屋敷や森、山が多すぎます)色々な方法があったはずです。
(もっと言えば、例えば政争を有利に進めようとするキャラ、ひたすら頭目に忠誠を誓うキャラ、野心家、裏切りを画策するキャラetcもっとバリエーションが作れたはずです)
絵に関しても、一見クォリティが高いように思わせられますが、その実、そのコマにおける文成分(何を読者に読み取らせたいか)を満たしていないものが多かったり、そもそも背景が写真を加工して間を埋めただけのような形になっていたり、一枚絵で「おおっ」と思わせられるものがなかったりと、表紙で期待するようなものはあまり見受けられませんでした。
あまり意味のない大ゴマも多いです。
これはヒキやオチといった読者が満足する脚本上の展開を用意できない作者に多く見られる傾向です。
全5巻なので、買って凄く後悔するか、というほどでもありませんが、値段的な期待に沿うようなものでも無いと思います。
せめて心に残るようなキャラクターが一人でも居れば印象も違ったかなという感想です。
ご購入の参考になれば幸いです。
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バジリスク~甲賀忍法帖~(1) (ヤングマガジンコミックス) Kindle版
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言語日本語
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出版社講談社
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発売日2003/5/2
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ファイルサイズ142290 KB
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商品の説明
著者について
せがわ まさき
1997年『千魔物語り』が週刊モーニングに掲載されデビュー。1998年より初の長期連載『鬼斬り十蔵』をアッパーズにて連載。2003年からは山田風太郎原作『甲賀忍法帖』を漫画化した『バジリスク~甲賀忍法帖』を連載、同作では講談社漫画賞を受賞。さらにヤングマガジンにて『Y十M~柳生忍法帖』を連載している。
山田 風太郎
1922年、兵庫県に生まれる。東京医科大在学中に作家デビュー、『眼中の悪魔』などの推理小説から、後に一大ブームをまきおこす『忍法帖』シリーズや『魔界転生』などの時代小説、さらに『あと千回の晩飯』『人間臨終図鑑』などのエッセイを幅広く執筆、国民的作家となる。2001年7月28日に惜しまれつつ逝去。 --このテキストは、kindle_edition版に関連付けられています。
1997年『千魔物語り』が週刊モーニングに掲載されデビュー。1998年より初の長期連載『鬼斬り十蔵』をアッパーズにて連載。2003年からは山田風太郎原作『甲賀忍法帖』を漫画化した『バジリスク~甲賀忍法帖』を連載、同作では講談社漫画賞を受賞。さらにヤングマガジンにて『Y十M~柳生忍法帖』を連載している。
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1922年、兵庫県に生まれる。東京医科大在学中に作家デビュー、『眼中の悪魔』などの推理小説から、後に一大ブームをまきおこす『忍法帖』シリーズや『魔界転生』などの時代小説、さらに『あと千回の晩飯』『人間臨終図鑑』などのエッセイを幅広く執筆、国民的作家となる。2001年7月28日に惜しまれつつ逝去。 --このテキストは、kindle_edition版に関連付けられています。
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.0
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2003年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
甲賀と伊賀。剣呑な関係の狭間にありながら愛し合う弦之介と朧。
彼らの祝儀こそ里の平和をもたらしてくれると思われたが、ここにて
両者の休戦協定破れ、忍法合戦の命が徳川家康から下る。
なんたる宿怨、恐ろしき天意。彼らの運命はいかに。
甲賀卍谷十人衆「甲賀弾正、甲賀弦之介、地虫十兵衛、風待将監、
霞刑部、鵜殿丈助、如月左衛門、室賀豹馬、陽炎、お胡夷」
伊賀鍔隠れ十人衆「お幻、朧、夜叉丸、小豆蝋斎、薬師寺天膳、
雨夜陣五郎、筑摩小四郎、蓑念鬼、蛍火、朱絹」
彼らは全て一騎当千、ただただ己の忍術だけを頼みに闘い抜く。
その闘いの凄まじさよ。この山田風太郎氏の「甲賀忍法帖」を
せがわ氏が見事にリメイク。通常は大作のリメイクは、その中身が
名前!負けしてしまうのだが、せがわ氏の画力は十分期待に応えるものである。
忍法帖を読み、頭の中で想像した以上の闘いが絵の中にしたためられている。
登場する忍者も名状しがたき者ばかり。また、原作を忠実にたどるのではなく、
絵で見せるべき場面を取捨選択しているため、読んでる内にこの世界に
惹きこまれるようである。
この作品は連載時から読んでいるのだが、単行本化して
線がはっきりした分、絵が見やすくなっている。しかし、
連載時の黄昏のような全体的な暗さが無くなっているので、
おどろおどろとした忍法帖らしき雰囲気がなくなっている
のはちょっと残念である。それにしても雨夜陣五郎は忍法を通り越して
クリーチャーと言ってもいいくらいですな。
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