筆者がバイエルの生きた街を巡りながら、バイエルの心情にまで行き着いたとき、涙が出そうでした。
私自身、初めてバイエルの1番と2番を、先生と連弾で弾いたとき、その美しさに感動したのを、今でもはっきりと覚えています。
もう一度伴奏を弾いてほしいと思いながら、言えずに、次の曲に進んでしまうのが、ためらわれるくらいでした。
小さくかわいらしい子が、「静かな手」で、はじめてのピアノを奏でた時、本当なら、隣にいる大好きな母が、美しい伴奏をつけてくれる、
そうであればいいなと願って、バイエルの教則本は作られた。
バイエルの幼い日々が、そうであったように。
バイエルの上巻を退屈だという人も多いようですが、バイエルの上巻こそ、長い歴史の間、ピアノを通し、母と子の幸せな時間を作ってくれたのではと思います。
私自身も、娘がバイエルの上巻を取り組むとき、娘の幼い演奏に、つたない伴奏をつけてあげたのを、思い出しました。娘は、きれいなハーモニーに、うれしそうに微笑みました。幸せな時間だったと思います。
筆者が、バイエルを探し求め、バイエルの心情に行き着いたとき、私自身も、そのかけがえのない思い出にたどり着きました。その思いが、歴史の中で繰り返されてきたからこそ、バイエルが、こんなにも長い間、愛され続けてきたのかもしれません。
バイエルの上巻は、やはり、母と子の宝物だったんだなと思います。
1980年代からの古い批判にさらされても、今でも愛される理由は、小さい子の最初の手ほどきに、母の愛が加わっていけるからかもしれません。
この本を読んで、ますます、バイエルが大好きになりました。
追伸
バイエルにヘ音記号が遅れて出てくる理由は、小さい子のピアノの手ほどきの最初の段階では、お母さんとの連弾で、美しいハーモニーを体験することを想定されていたからではないでしょうか。
また、バイエルに載っている「先生の伴奏」のルーツが、ドイツの古く伝統のある教会の讃美歌(コラール)の伴奏だったのではと知り、驚きました。もう一度、伴奏を弾いてみたくなり、バイエルを手に取りました。教会で、讃美歌とともに歌うイメージで、心を込めて弾いてみようと思いました。
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バイエルの謎: 日本文化になった教則本 (新潮文庫) 文庫 – 2016/2/27
ミドミドミソミド……。誰もが知る初級ピアノ教則本として、明治以来100年以上、日本人の音楽教育の基礎を担った「バイエル」。でも、その作者の経歴はなぜか誰も知らない。疑問に感じた著者はチェルニー偽名説、ペンネーム説など通説を再検討する一方、各国のオリジナル初版を手がかりに、そのルーツを探す旅に出たが。そして出会った驚きの新事実とは? 魅惑の音楽紀行が始まる!
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2016/2/27
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101202869
- ISBN-13978-4101202860
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ミドミドミソミド…。誰もが習う初級ピアノ教則本として、明治以来100年以上、日本人の音楽教育の基礎を担った「バイエル」。でも、その作者の経歴はなぜか誰も知らない。疑問に感じた著者はチェルニー偽名説、ペンネーム説など通説を再検討する一方、各国のオリジナル初版を手がかりに、そのルーツを探す旅に出た。遠く異郷で出会った驚きの新事実とは?魅惑の音楽紀行が始まる!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
安田/寛
1948(昭和23)年山口県生れ。’74年国立音楽大学大学院音楽研究科音楽美学修士課程修了。2001(平成13)年奈良教育大学教授。’13年定年退官し現在同大学名誉教授。’01年放送文化基金賞番組部門個別分野「音響効果賞」、’05年社団法人日本童謡協会日本童謡賞・特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1948(昭和23)年山口県生れ。’74年国立音楽大学大学院音楽研究科音楽美学修士課程修了。2001(平成13)年奈良教育大学教授。’13年定年退官し現在同大学名誉教授。’01年放送文化基金賞番組部門個別分野「音響効果賞」、’05年社団法人日本童謡協会日本童謡賞・特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2016/2/27)
- 発売日 : 2016/2/27
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 320ページ
- ISBN-10 : 4101202869
- ISBN-13 : 978-4101202860
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 432,667位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 233位クラシック音楽論・理論
- - 6,571位新潮文庫
- カスタマーレビュー:
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著者について
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1948 年山口県生まれ。1974年国立音楽大学大学院修士課程修了。2001年より奈良教育大学教育学部教授。2013年定年退職し現在奈良教育大学名誉教授。専門は、19~20世紀の環太平洋地域の音楽文化の変遷について。2001年放送文化基金賞番組部門個別分野「音響効果賞」、2005年社団法人日本童謡協会日本童謡賞・特別賞を受賞。主な著書に、『唱歌と十字架明治音楽事始め』(音楽之友社、1993年)、『バイエルの謎 日本文化になったピアノ教則本』(音楽之友社、2012年)、共著として、『仰げば尊し一幻の原曲発見と「小学唱歌集」全軌跡」(東京堂出版、2015年)、『バイエルの刊行台帳 世界的ベストセラーピアノ教則本が語る音楽史のリアル』(音楽之友社),2021年)などがある。
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バイエル・ピアノ教則本の作者は、音楽家フェルディナンド・バイエルである。
本書は、このバイエル・ピアノ教則本の誕生とその作者自身の誕生をめぐる冒険の書。偶然の出会いとそれらを発見に結びつける著者の推理力。本書には、ミステリー小説のような迫力とドラマのような展開がある。
そして、ついには、バイエルの誕生年の発見。よろこび、そして胸の鼓動。感動。何年間も自分の足で現地を歩いて史料を探し出す著者は、犯人を追い詰めていく探偵のようだ。この著者の探求手法は、地に足が付いているので迫力がある。人生をかけたロマンを感じる。
ところが、著者が六年間もドイツを飛び回ってやっと探し出した史料は、パソコンのグーグル・ブックという新しい「索引生成マシーン」を数回クリックするだけで直ちに画面に出てくることに著者は気付いた。このとき、著者は驚き、焦り、落胆して「六年間が無意味になった」と文庫版あとがきに書いている。
さらに「グーグル・ブックがやがて巨大な頭脳を持つ神となり、自らの手で研究を遂行するようになり、研究の主導権は人間ではなく、もはや全知全能のコンピュータにある」時代となったと、敗北宣言をしている。そして、自らの研究スタイルを「時代遅れになったようだ」と考え、後姿がさびしそうだ。
しかし、私は思う。大丈夫、安心して。コンピュータはバイエル・ピアノ教則本の誕生とその作者自身の誕生をめぐって、自ら冒険しようとはしない。コンピュータは自分で自分に課題を課さない。深く学ぶだけだ。
本書を読んで、研究者、探求者のロマンを感じた。このロマンこそ、人生の意味であり、夢だ。研究の世界は、将棋や碁の世界と同じではない。研究の主導権は人間でなければならない。研究の主導権をコンピュータに譲り渡してはならない。コンピュータを全知全能の神にしてはいけない。神の名のもとにコンピュータを使う悪い人間がいるからだ。神の名を語って人間がコンピュータを悪用することは、間違いだ、人間の罪だ。コンピュータに不可能なことこそ、人間が研究してゆく使命が、人間にはある。
本書は、このバイエル・ピアノ教則本の誕生とその作者自身の誕生をめぐる冒険の書。偶然の出会いとそれらを発見に結びつける著者の推理力。本書には、ミステリー小説のような迫力とドラマのような展開がある。
そして、ついには、バイエルの誕生年の発見。よろこび、そして胸の鼓動。感動。何年間も自分の足で現地を歩いて史料を探し出す著者は、犯人を追い詰めていく探偵のようだ。この著者の探求手法は、地に足が付いているので迫力がある。人生をかけたロマンを感じる。
ところが、著者が六年間もドイツを飛び回ってやっと探し出した史料は、パソコンのグーグル・ブックという新しい「索引生成マシーン」を数回クリックするだけで直ちに画面に出てくることに著者は気付いた。このとき、著者は驚き、焦り、落胆して「六年間が無意味になった」と文庫版あとがきに書いている。
さらに「グーグル・ブックがやがて巨大な頭脳を持つ神となり、自らの手で研究を遂行するようになり、研究の主導権は人間ではなく、もはや全知全能のコンピュータにある」時代となったと、敗北宣言をしている。そして、自らの研究スタイルを「時代遅れになったようだ」と考え、後姿がさびしそうだ。
しかし、私は思う。大丈夫、安心して。コンピュータはバイエル・ピアノ教則本の誕生とその作者自身の誕生をめぐって、自ら冒険しようとはしない。コンピュータは自分で自分に課題を課さない。深く学ぶだけだ。
本書を読んで、研究者、探求者のロマンを感じた。このロマンこそ、人生の意味であり、夢だ。研究の世界は、将棋や碁の世界と同じではない。研究の主導権は人間でなければならない。研究の主導権をコンピュータに譲り渡してはならない。コンピュータを全知全能の神にしてはいけない。神の名のもとにコンピュータを使う悪い人間がいるからだ。神の名を語って人間がコンピュータを悪用することは、間違いだ、人間の罪だ。コンピュータに不可能なことこそ、人間が研究してゆく使命が、人間にはある。
2017年12月22日に日本でレビュー済み
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この本のおもしろさはすでに多くのレビュアーが書かれています。
知的興奮が伝わる良書です。
また素人探偵のような作者の探求旅行記もほのぼのとしてお人柄がしのばれます。
「文庫版あとがき」もおもしろいのです。そのなかで,学会誌から執筆依頼があって書かれた記事「Click and It Will Be Opened to You; How Google Has Changed Musicological Research」はさわりは無料で読めますが,全文は有料のようです。
このあとがきに小野亮祐さんと多田純一さんの名前がのっていますが,安田寛先生監修で『「バイエル」原典探訪: 知られざる自筆譜・初版譜の諸相』というタイトルで発売されています。おもしろい本ではありませんが,バイエル初版が掲載されているので,その意味では校訂版ばかりだった日本にとって,貴重かな(?)と思います。
安田先生が書かれているとおり,左右見開きの連弾曲になっていて,専門のピアノ教師につく前に,母が左手を伴奏し,子が右手を「静かにされた手」でメロディを弾く。それもルター以来の讃美歌の様式で和声づけをする。そういう変奏曲になっているそうです。なんと美しい話でしょう。
足で歩いてデータを集め,蓄えた知識でそれを解釈するという,歴史学の王道を見せていただきました。
知的興奮が伝わる良書です。
また素人探偵のような作者の探求旅行記もほのぼのとしてお人柄がしのばれます。
「文庫版あとがき」もおもしろいのです。そのなかで,学会誌から執筆依頼があって書かれた記事「Click and It Will Be Opened to You; How Google Has Changed Musicological Research」はさわりは無料で読めますが,全文は有料のようです。
このあとがきに小野亮祐さんと多田純一さんの名前がのっていますが,安田寛先生監修で『「バイエル」原典探訪: 知られざる自筆譜・初版譜の諸相』というタイトルで発売されています。おもしろい本ではありませんが,バイエル初版が掲載されているので,その意味では校訂版ばかりだった日本にとって,貴重かな(?)と思います。
安田先生が書かれているとおり,左右見開きの連弾曲になっていて,専門のピアノ教師につく前に,母が左手を伴奏し,子が右手を「静かにされた手」でメロディを弾く。それもルター以来の讃美歌の様式で和声づけをする。そういう変奏曲になっているそうです。なんと美しい話でしょう。
足で歩いてデータを集め,蓄えた知識でそれを解釈するという,歴史学の王道を見せていただきました。
2016年4月1日に日本でレビュー済み
筆者がバイエルについて推理をし、現地調査をし、丹念に資料を当たっていく過程がドキュメンタリータッチで書かれている。たとえばドイツのある街を訪ねてこういう調査をしたが空振りであった、宿に帰って云々、等々。そういう意味で、タイトルから予想されるものと内容は違っているかもしれない。しかし最後まで読むと、感動の大団円が待っている。ピアノ演奏の歴史に興味がある人、バッハや教会音楽に興味がある人、クラシック音楽の歴史について興味がある方は、必読である。まさかこういう結末が待っているなどと思わず読み始めて最後で大感動したので星5つとした。
ただし、効率よく知識だけを得たい人にとってはきわめて非効率な書き方がされている。そういう方は、感動なんてなくて良いと覚悟のうえ、最後だけを読むと良い。そうすると本書の魅力がほとんど消え失せてしまうが。
ただし、効率よく知識だけを得たい人にとってはきわめて非効率な書き方がされている。そういう方は、感動なんてなくて良いと覚悟のうえ、最後だけを読むと良い。そうすると本書の魅力がほとんど消え失せてしまうが。



