本書は昇進した管理職のために、最初の九〇日を乗り切るロードマップを示す。本書を執筆したのは、移行期が新任リーダーにとって非常に重要な時期だと考えたからである。この時期には、些細なことが将来に重大な影響を及ぼす。CEOからチーム・リーダーまで、どんなレベルの管理職も、移行期の数カ月間は無防備である。直面する課題に立ち向かう準備がまったくできておらず、どうすればうまく乗り越えられるかもわかっていない。そのうえ親身にアドバイスをしてくれるような人脈も持ち合わせていない。移行期に部下からやる気を引き出し目標に向かう士気を高められないと、その後の在任期間中ずっと苦労することになる。この時期に信頼を勝ちとり何らかの成果を上げておくことは、長期的な成功につながる第一歩と言えるだろう。
本書はアメリカで出版されて以来、圧倒的な支持を受け、いまや新任リーダーのバイブルとなっているハーバード・ビジネス・プレスのロングセラーの邦訳です。CEOからチーム・リーダーまで、昇進した管理職が直面する、組織、能力、スキルの「壁」を徹底的に分析し、緒戦に勝利するためのプランを提示する画期的マネジメント論です。
内容(「BOOK」データベースより)
CEOからチーム・リーダーまで、昇進した管理職が直面する、組織、能力、スキルの「壁」を徹底的に分析し、緒戦に勝利するための実践プランを提示する画期的マネジメント論、遂に邦訳。
抜粋
はじめに
リーダーが存在する限りリーダーの昇進や異動があり、それに伴って必ず移行期がある。そのたびにリーダーがさまざまな課題に直面するのは大昔から変わりがない。だが企業組織が複雑化しビジネスのサイクルが短くなるにつれ、課題は一層厳しいものになってきた。こうした事業環境では、昇進先の新しいポストのことがよくわからないと不安に思うのは、すこしもめずらしいことではない。
本書は昇進した管理職のために、最初の九〇日を乗り切るロードマップを示す。本書を執筆したのは、移行期が新任リーダーにとって非常に重要な時期だと考えたからである。この時期には、些細なことが将来に重大な影響を及ぼす。CEOからチーム・リーダーまで、どんなレベルの管理職も、移行期の数カ月間は無防備である。直面する課題に立ち向かう準備がまったくできておらず、どうすればうまく乗り越えられるかもわかっていない。そのうえ親身にアドバイスをしてくれるような人脈も持ち合わせていない。移行期に部下からやる気を引き出し目標に向かう士気を高められないと、その後の在任期間中ずっと苦労することになる。この時期に信頼を勝ちとり何らかの成果を上げておくことは、長期的な成功につながる第一歩と言えるだろう。
本書では移行期を迎えたリーダーのためのフレームワークを紹介するが、これは、ダン・チャンパとの共著"Right from the Start"(Harvard Business School Press、1999年)で行った研究成果の延長線上にある。なかなか実り多い研究だったと自負しているが、やや足りない面があることは否めない。第一に、移行期をスムーズに乗り切るノウハウはあらゆるレベルの管理職が身につけておくとよいものだが、"Right from the Start"の対象は主に経営幹部である。同書で紹介したアドバイスのほとんどは誰にでも応用できるけれども、どれがエグゼクティブ向けでどれが万人向けなのか、いまひとつはっきりしない。私としては、あらゆるレベルの管理職に役立つような、より柔軟なフレームワークを提示したかった。また、上司との関係、部下の評価、組織戦略など、もっと深く掘り下げたいテーマもあった。
第二に、移行期にはさまざまな状況があり、その点を詳しく研究して新任リーダーが状況に応じた戦略を立てられるようにしたかった。新事業を立ち上げるプロジェクトのマネジャーになるのか、好業績部門を引き継ぐのかによってリーダーの仕事は大きく異なる。また、社外から引き抜かれてきた人と社内で昇進した人とでは直面する課題が違ってくる。つまり移行期の戦略は状況によって変わってくるということだ。
そして第三に、移行期を組織的にバックアップする効果についても研究したかった。貴重な人材が移行期に悪戦苦闘しているというのに、組織として何らかの措置を講じている企業があまりに少ないことに私はショックを受けた。移行期はキャリアのなかで非常に重要な節目である。なぜ企業は前途有望な人材を背の立たないところに放り込み、泳ぐか溺れるかプールサイドで傍観しているのだろう。新任リーダーが新しいポストではやく実力を発揮できるようになったら、企業全体にとって計り知れないメリットがあるというのに。
三年間にわたって私はこれらの問題に取り組んできた。さまざまなレベルの管理職について移行期を研究し、大企業のために移行期のマネジメント・プログラムを設計したり、新任管理職のためのオンライン・ツールを開発したりした。こうした研究の成果をまとめたのが本書である。
本書を読んでくださるのは、新しいポストで移行期を迎えた人が多いかも知れない。この本を読んで移行期を乗り切るノウハウを身につければ、新しい職場でのびのびと力を発揮し、はやく目標に近づくことができるだろう。新しい職場で遭遇する状況を正確に診断し課題と機会を見抜く、自分自身の能力を冷静に見きわめ弱点に気づく、新しい職場について効率的に学習する、組織設計のポイントを押さえる、部下を評価し人脈をつくり自分自身のバランスをとる―本書を通じてこれらをマスターしていただければ幸いである。まずは通読し、ぜひ読者自身の<九〇日プラン>を立ててほしい。そうすれば、きっと思っているよりもはるかにスムーズに移行期を乗り切れるにちがいない。
著者について
ハーバード・ビジネススクール助教授。リーダーシップと交渉術を専門に研究する傍ら、企業外交に関する講座を受け持っている。企業経営者が他社、政府高官、マスコミその他のステークホルダーとどのように関係を築き自社を取り巻く環境を整えていくかを考える、人気の講座である。一九九六年に現職に就くまでは、同大学ケネディ行政大学院の助教授を務め、中東、韓国、バルカン半島を巡る複雑な国際外交交渉術を研究。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ワトキンス,マイケル
ハーバード・ビジネススクール助教授。リーダーシップと交渉術を専門に研究する傍ら、企業外交に関する講座を受け持っている。企業経営者が他社、政府高官、マスコミその他のステークホルダーとどのように関係を築き自社を取り巻く環境を整えていくかを考える、人気の講座である。1996年に現職に就くまでは、ハーバード大学ケネディ行政大学院の助教授を務め、中東、韓国、バルカン半島を巡る複雑な国際外交交渉術を研究。著書に、邦訳『ビジネス交渉術―成功を導く7つの原理』(PHP研究所)がある。同書は、交渉分野で最も優れた著作に与えられるCPR紛争解決研究所賞を2002年に受賞した
村井/章子
上智大学文学部卒業。経済・経営、環境関係の翻訳を主に手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)