ハクティビズム(〜ism)というぐらいだから、それなりに深い思想があるのかと思えば、過去数十年に既に確立された社会的な現象や方法論があって、視点を単純化させるためにハクティビズムというレイヤを載せただけ、といった印象が残った。それも割りとつぎはぎな印象である。トピックの本質は、社会的背景と問題があって、人がどう関わったかであるが、そこへの記述が浅いことが原因に思える(物語が無いとも言える)。恐らくそれを扱うと新書の範囲を超えてしまうためであるが、読後、このハクティビズムが、それほど面白いものかどうか不明な感想を持った。
辛うじてコンピュータやネットワークを基盤にした社会現象がトピックであるためか、これらの歴史的経緯の説明にページが割かれているが、共用計算機からパソコンへの変遷や、シリコンバレーでのコンピュータ黎明期の話は、他書で頻出しており、内容も浅かったので、正直省いて良いと思われた。あと中盤、crowdとcloudを混同して使っている節があって非常に気になった。DDoS攻撃も、技術的には多種あるので、10年前ならいざしらず、現時点で十把一絡にしてしまうのは、すこし雑な印象があった。
サイバー空間もリアルの一部であるというのが、現代人の常識だと思われるので、その空間をツールとして利用できるリテラシーが地球規模で浸透しつつある、ということは十分伝わってきた。全般的に倫理面での観点が多かったが、特殊な事情で亡命を余儀なくしているような人物は別としても、大部分の匿名な人々は何らかの生活しているわけであるし、現代的なハクティビズムでマジョリティとなるであろうモブな人々をもう少し掘り下げて、どういう経済的な動機で関わっているか、ということも可能なら知りたかった。
最後に、Kindle割引で300円だったので星2とした。
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