本書はノンデザイナーズつまりデザイナーでない人のための本であると謳っていますが、わたしが見た限り若干語弊があります。
本書の真の対象読者は「デザインという概念を全く意識した経験のないひと」だと思います。なぜなら、この本に書いてあることの多くの部分はデザインを意識したことのある人間であれば既に(言葉としては知らなくても)実践していると思われるからです。
デザインの基本原則を言語化しているという意味では、確かに知識のない人間には為になります。
が、「伝えたい情報に優先順位を付けて優先順位の高いことは文字を大きくしましょう」「面白いフォントを使って見る人を退屈させないようにしましょう」とは書いてあっても、文字の大きさはどれくらい違いをつければいいのかとか、スペースは3mmがいいのか3.5mmがいいのかとか面白いフォントってどれ? とか実践的なことは書かれていません。
Before(ワードで文章打っただけみたいなの)とAfter(デザイナーがガチで作ったやつ)だけ見せられても、素人的にはそのあいだが知りたいわけです。したがって、この本を読むだけであなたのデザインがずっとぐっとよくなるとは、わたしには思えませんでした。
とはいえデザインを勉強したことのない人間にとって、知っておいて損はないことを言語化したということには大きな価値があり、一定の知見は確実に得られます。
惜しむらくは、メインの原書翻訳部分の日本語が微妙に読みづらいことです。おそらく翻訳者の日本語が下手なんですね。後半の日本語版用に書き下ろされた部分と比べれば前半がいかに読みづらいか分かります。海外のウェブサービスの日本語ヘルプを読んでいるようなもどかしさと言えば、伝わるかたには伝わるでしょうか。
なんとなくデザインの真似事はできるけどそれが本当にいいのか知りたいという自分のようなかたには、おそらくもっと別の本が向いてます。デザインの考え方を根本から知りたいというなら、和訳の読みづらさを我慢できるなら買ってもよろしいかと。
たぶん原書は素晴らしい本だと思うので、英語が苦にならないなら確実に原書を買ったほうがいいです。
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