原書のタイトルは、「Ultimate Question 2.0」、NPS産みの親本人による、NPS誕生から10年の時を経た改訂版である。
NPSをこれから採用したいという方には、本書で取り上げられている豊富な事例が背中を押すだろう。私もまずは試してみることをお勧めしたい。
既に採用していて更に効果を高めたい方には、自分たちの行動の意義が再確認でき現場のモチベーションアップにつながるかと思う。
具体的には、短絡的な「悪しき利益」の追求による顧客の離脱と従業員の疲弊からの脱却、そして自社を応援してくれる顧客による経済性と動機
付けが、なぜ、どのように発生するのかが、アップル、ロジクール、ラックスペース、アメリカンエキスプレスなど豊富な事例をもとに論じられている。
本書はタイトルにネット・プロモーター「経営」とあるように、カスタマーサービスなどの現場の業務改善にとどまらない。
第3章 NPSが利益ある成長をもたらすメカニズム
第7章 経済性と動機付け:二つの欠かせない柱
で論じられている長期的な「良き利益」は経営者層を惹きつけるのに十分な指標となるはずだ。そして、部門を超えた経営者層の参画無しに
組織の変革はあり得ないし、それをなくして、NPSの向上は成し遂げられないだろう。
しかし、NPSを導入している企業でも、カスタマーサービス部門のためだけのKPIにとどまっている企業が多いのでないだろうか。
本書は、顧客と接点がないR&Dのスタッフ、役員などの上級経営者層こそ読むべきものだと思う。
また、NPSを活用しきれていない企業に対する問いかけも興味深い。
・少なくとも1年に1度NPS調査を受ける顧客比率は何%で、どのくらい回答が得られ、これらの顧客は売上高の何%を占めるか?
・ターゲット顧客セグメントの中で、推奨者と批判者の顧客生涯価値の違いはどのくらいか?
・推奨者を増やすために最も重要な取り組みは何か?推奨者1人を生み出すのにかかるコストはどのくらいか?
これらの問いに回答できるだけの調査を行うことは不可能ではないものの決して容易なことではない。
しかし、本書挙げられているNPSによる効果を考えるとこれらを行うだけの価値があることを腹落ちして進められるだろう。
また、私の印象ではあるが、本書のメインテーマは、
第8章 顧客との「クローズド・ループ」を回す
である。著者がNPS調査を受けた体験談から始まり、ミドルマネージャ、経営幹部それぞれに向けられた「クローズド・ループ」は、
NPSの「S」を「スコア」から「システム」へ、つまり「測定」から「自社の組織変革」に発展させるための必読のポイントになりそうだ。
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