現在(2018年)まで日本各地の祭り(主に盆踊り)で踊られる集団舞踊「音頭」の歴史を「東京音頭」(昭和8年)をルーツとし、流行歌として、どのように音頭(「音頭モノ」と呼ばれるジャンル)が流行、変遷してきたかを時代や社会背景、レコード会社の事情などの内幕も絡めてまとめた労作。
前半の河内音頭成立までの歴史を知りたくて購入したが、戦中の戦時歌謡としての軍国音頭の隆盛も興味深かった。また1970年代以降、高度経済成長による地域コミュニティの変質がTVアニメキャラクターのタイアップによる音頭の流行と結びついていく過程は、当時のレコード会社の担当者からも聴き取りしており単なるノスタルジーだけではなく、あらゆるニーズを商機と見て商品を開発して売り込んでいく、この時代ならではの商魂のたくましさ(余談だがこれは先日参加した「聴くメンタリー」と題したレコード・イベントでかかったジャングルの元日本兵、横井さん、小野田さんの帰国記念レコードや新潟の平安閣で制作した結婚式記念レコードなどでも)強く感じた。
デフレがほぼ20年続き、大都市とそれ以外の地方の経済格差が(あるいは大都市内部での経済格差)が拡大しつつある現在、コミュニティ持続のため再び盆踊りと音頭が見直されているという。また戦前の集団移民にルーツを持つ海外の日本人コミュニティでも盆踊りは若い世代に引き継がれているとのことで、なかむらとうよう氏の著作に代表されるワールドワイドな大衆音楽の伝搬に興味がある方にも一読をお勧めしたい。
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