基本的に初出時を遵守した収録とのことで、
そのコンセプト自体は大変評価しますが
「しず子さん」→「しずちゃん」
「自動コジ機だったわ」→「これもちがうわ」
「黒べえ(原文ママ)も狂人軍も」→「両方とも」
など一部のセリフに改ざんがあるので注意が必要です。
特に巻末に収録された『ドラえもん誕生』で藤子・F・不二雄先生が『ドラえもん』の構想で頭を悩ませていたときに、藤子不二雄A先生が『黒ベエ』と『狂人軍』の連載があるから『ドラえもん』に付き合えないというくだりを全カットしたのが許せません(F全集はそのままだったのに!!)。この改竄によって『ドラえもん』の作風と対極にあるA先生のブラックユーモア作品が同じ「藤子不二雄」名義で、当時の少年誌に連載されていたという「歴史的事実」すら隠蔽されたような感じがします。きっと小学館にとってA先生の作品は「この世に存在すらしてはいけない」のでしょうかね。初出時を楽しみたい人間からして、これらの改変は大変残念の一言に尽きます。
そもそも出来る限り「オリジナルのまま」をモットーに掲げておいて、版元の勝手な都合でカットするのは卑怯じゃないんですか? 読み手はそういう姑息なやり口が一番嫌いだと思います。あと「23年ぶりの新刊」とかいう大嘘惹句や、そもそもプラスシリーズでなく「0巻」というスカしたナンバリングで出すとか、いちいち売れ線を狙ったやり方が明け透けに見えて姑息に思います。また資料性を重視した編集をコンセプトに掲げるなら、今後こうした中途半端な改変はやめていただきたいです。それさえ無ければ星5つだったんですが。
2019.12.11 追記
いま見たら私のレビューが500人以上ものカスタマーの参考になったそうです。版元にとってはホンの些細なことなのかもしれませんが、かつて、つげ義春先生の『ゲンセンカン主人』を文庫化した時も不穏当な台詞は全て改竄した前科があり、これによって初版の持つ価値が著しく損なわれました。以来、版元が勝手に作家の原稿に手を加える行為が大変許し難いものだと考えるようになったのです。こうした逃げを前提とする版元の弱腰姿勢は、表現の自由を出版界全体で萎縮させ、また同一性保持権にも抵触しかねない、理解しがたい愚行であるということを小学館側は強く認識していただきたいです。これ以上、出版界に悪しき慣例を残さないためにも。
- コミック: 136ページ
- 出版社: 小学館 (2019/11/27)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4091431569
- ISBN-13: 978-4091431561
- 発売日: 2019/11/27
- 梱包サイズ: 17.6 x 11.4 x 1.4 cm
- おすすめ度: 49件のカスタマーレビュー
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