ドラえもんをはじめ、藤子作品で育った人間には既知のエピソードもありましたが非常に興味深く読めました。
現役の読者だった頃から「パラレル西遊記」の原作が描けなかったり、とある大長編の最終回が絵本調になったりと
たびたび体調の問題で執筆に支障をきたしているのは知っていましたが、若くして本当に亡くなるとまでは思ってませんでした。
本来の想定読者が現代の小学生という事で、分かりやすく明るくしている部分もありますが、
一人の若者がF先生と出会ってから別れまでの切ない青春と成長の物語でもあります。
勉強熱心で好奇心旺盛で勉強熱心で、どこかとぼけているF先生。
A先生の「まんが道」や様々なインタビューで語られてきた人物像と重なって大切なF先生の証言本となりました。
とりわけむぎわら先生が描いた野球漫画の1コマ1コマに改善案を直筆で書いて返してもらうシーンが泣けてきます。
もう自分が長くないと分かってて、身近な若い筆者に可能な限り経験を伝えておきたかったのかなって。
ジャイアンは「剛田武」なのにジャイ子が「剛田ジャイ子」なのは何でですか?
それはね、ジャイ子の本名は〇〇だよ、と言ったら同じ名前の女の子がからかわれて可哀想でしょ。
有名なエピソードですが、大人なのになんて優しく子供の目線で物を考えられる人なんだろうと。
その半面、若い頃にA先生ととある出版社に持ち込んだ時に編集者に改善点を指摘され始めたら、ぱっと立ち上がって「もう結構です。二度と来ません」と告げて帰ってしまったり(阿川佐和子さんによるA先生のインタビューより)。
勉強熱心で優しいだけでなくそういうプライドの高い厳しい一面も読みたかったとも思いましたが、もう晩年だったのでむぎわら先生にはF先生のそうした一面は見られなかったのかもしれません。
トキワ荘のメンバーも次々に鬼籍に入ってしまいました。
現代の少年たちにそんな世代の偉大さを伝えてくれる一冊が今の時代に出たのが嬉しいですね。
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