文庫化に際し、「この書物を書き改めるのではなく、むしろ本書を補うような続編を書くという課題」が表明されており、実際にその後、著者の訳書、解説書が出されている。同シリーズ今道友信の『アリストテレス』が書き替えられたのとは対照的で、逆に謂えば本書はそれ自体総合のトマス神学=哲学の総合的基点になり得る不変(普遍)のものになっているとも謂えよう。
神学などという事は無味乾燥な訓詁学、教条主義の代名詞だし、神学論争などと云えば堂々巡りの無駄な言い合いの代名詞であるが、それをこそ最初の知的探究の現場に還して、改めてその体系性の生成、形成過程を辿る事でその哲学的神学、神学的哲学の総合による甦生を図ったアキナスの営為を跡付け革新している。マルクス主義やニーチェ主義、カント主義、プラトン主義等々が姓名で呼ばれるのに対し、アキナスだけがトマス主義とファーストネームで主義とされる理由を私は知らないままだが、その内実は宗派と学派の鬩ぎ合う現実の中で闘われ何とか辛うじて生き残ってきたものに他ならない事が明白になるだろう。
著者は勿論最終は、哲学の方の探究と革新としてそれを読み切ろうとするのだが、もう一度還せば、幼児のトマスが聖霊に惹き付けられて修道士に思わず発した「神とは何か」という問いを、更に「神とは何者か」と問い直す事で、哲学と神学、神学と哲学の総合でも離反でも棲み分けでもなく、ただ両方相俟っての答えが畏れずにあるとしたら、神話論にも宇宙論にも応えられるそれは回答として明解にあるはずであろう。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。

Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。