…田舎町の獣医マクデューイは、動物を愛する気持ちを解さない冷酷な男。
かつて傲慢な父親によって、志していた医師の道を閉ざされた彼は、
人命を救う医者になれなかった苛立ちと憎しみを、周囲に撒き散らしている。
7歳になるメアリ・ルーは、猫のトマシーナが立てなくなったのに気付き、
父を信じて治療室に運ぶが、マクデューイは碌な診察もせず安楽死させる。
その時からメアリ・ルーは、父を見ず、言葉も聞かず、話もしなくなった。
半身であるトマシーナを奪われた少女は、復讐に心中で父を抹殺したのだ…
この物語は“ペット”と呼ぶには余りにも愛しく大きな存在について
―メアリ・ルーにとってトマシーナが親友であり母代りであり分身であるように―
語り部としての役割を人にも猫にも持たせることで、命を平等に描いています。
『あたし、あたし、このあたしが、死にたくないのに死を迎えようとしているだなんて。
あたしは生きたい、生きたい、生きたい、病気だろうと、身体がきかなくなろうと、
捨てられようと、ずっと生きていたいのに―』p101 トマシーナの悲痛な叫びに、
人間の身勝手、想像力の無さ、他の命への軽視を思い、涙が出ました。
子どもの宝物を理解できない(またはできなくなった)大人は少なくありません。
大切な棒や小石はガラクタ扱いされ、それには時に小さな命も含まれます。
トマシーナの子猫も『みんな連れていかれて、溺れさせられてしまいました』p30。
大人が子どもだった頃の記憶を無くした時、我が子の魂を傷付けてしまうのです。
子どもが、魂の欠けた大人に傷付けられ、大人になり、また子どもを傷付ける。
父親に傷付けられたマクデューイが、何よりも愛するはずの娘を傷付けたように。
傷付くことが大人になること、という考え方もあるとは思います。
しかし何に傷付いたかを憶えていれば、哀しみの連鎖は防げるでしょう。
父娘の未来を左右するのが、語り部の一人であるエジプトの猫の女神バスト・ラーと、
町はずれに住む癒し手の持ち主“赤毛の魔女”と呼ばれるローリです。
読み始めたらどんどん引き込まれる作品です。 本好きにも猫好きにもお薦めします。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
トマシーナ (創元推理文庫) 文庫 – 2004/5/25
購入を強化する
スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。獣医でありながら動物に愛情も関心も抱かない彼は、幼い一人娘メアリ・ルーが可愛がっていた猫トマシーナを病気から救おうとせず、安楽死させる。それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、《魔女》と呼ばれるローリとの出会いが、トマシーナに新たな魂を与え、二人を変えていく。『ジェニィ』と並ぶ猫ファンタジイの名作を新訳で。解説・河合隼雄
装画/装幀・和田誠
装画/装幀・和田誠
- 本の長さ382ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2004/5/25
- ISBN-104488560016
- ISBN-13978-4488560010
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
あたしはトマシーナ。毛色こそちがえ、大叔母のジェニィに生きうつしと言われる猫。あたしもまたジェニィのように、めったにない冒険を経験したの。自分が殺されたことから始まる、不可思議な出来事を…。スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。動物に愛情も関心も抱かない彼は、ひとり娘メアリ・ルーが可愛がっていたトマシーナの病気に手を打とうともせず、安楽死を選ぶ。それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、“魔女”と呼ばれるローリとの出会いが、頑なな父と孤独な娘を変えていく。ふたりに愛が戻る日はいつ?『ジェニィ』と並ぶ猫ファンタジイの名作、新訳決定版。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山田/蘭
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2004/5/25)
- 発売日 : 2004/5/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 382ページ
- ISBN-10 : 4488560016
- ISBN-13 : 978-4488560010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 284,427位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 979位創元推理文庫
- - 2,678位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- - 5,463位英米文学
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.6
星5つ中の4.6
31 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年5月5日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
11人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年11月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本が来た時、わくわくしましたが、読み始めて暗い気分になってきました。獣医師が冷たい性格で、病院にやってくる甘やかされた犬や猫を見下していて、簡単に殺してしまうからです。
娘の愛猫トマシーナまで、ろくに治療もしないで安楽死させ、娘は落胆から重病になってしまいます。街はずれに住む魔女と呼ばれる女性が、たまたま薬が少なくて死に切らなかったトマシーナを見つけて介抱し治します。
トマシーナが帰ってきたので、娘は元気が出て病気は快復して行きます。しばらくやもめだった父の獣医師は、偏見を捨てて、魔女さんを新しい妻に迎え、ハッピーエンドで締めくくられて、ほっとします。
娘の愛猫トマシーナまで、ろくに治療もしないで安楽死させ、娘は落胆から重病になってしまいます。街はずれに住む魔女と呼ばれる女性が、たまたま薬が少なくて死に切らなかったトマシーナを見つけて介抱し治します。
トマシーナが帰ってきたので、娘は元気が出て病気は快復して行きます。しばらくやもめだった父の獣医師は、偏見を捨てて、魔女さんを新しい妻に迎え、ハッピーエンドで締めくくられて、ほっとします。
2013年9月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
幼い頃、祖母と見に行った唯一の映画が「トマシーナ」でした。今頃になってふと思い出し、原作本があることを知り購入しました。
映画での記憶は女の子の「トマシーナーーー!」と叫ぶ声のみだったのですが、原作本を読み、最後のほうのトマシーナがメアリの住む家へ向かって走っているシーンを思い出しました。今は亡き祖母はこの映画が気に入ったのか、しきりにトマシーナかわいいかったねと話していたのが思い出されます。
ポール ギャリコの本は初めてでしたが、情景描写が素晴らしく本の中にどっぷり浸れる感じで、しかも物語の展開が面白くて一気に読みました。人に対する思いやりや、何かを信じる心とかいろいろと考えながら。
こんなに素敵なお話だったとは!もっと早く読めば良かった!
映画での記憶は女の子の「トマシーナーーー!」と叫ぶ声のみだったのですが、原作本を読み、最後のほうのトマシーナがメアリの住む家へ向かって走っているシーンを思い出しました。今は亡き祖母はこの映画が気に入ったのか、しきりにトマシーナかわいいかったねと話していたのが思い出されます。
ポール ギャリコの本は初めてでしたが、情景描写が素晴らしく本の中にどっぷり浸れる感じで、しかも物語の展開が面白くて一気に読みました。人に対する思いやりや、何かを信じる心とかいろいろと考えながら。
こんなに素敵なお話だったとは!もっと早く読めば良かった!
2006年1月14日に日本でレビュー済み
トマシーナの語りで進んでゆく最初の辺りはこの調子でずっと続くのだろうか、と少し不安に思った。同じギャリコの「猫語の教科書」のように進んでいくのかと。ところがトマシーナが死んでしまった辺りから話は重苦しい雰囲気に変わっていく。心を閉ざしてしまう少女、自分中心の獣医の怒りや不機嫌さが前面に出て来始めると、これはどうなっていくのだろう・・と読み進まずにはいられなかった。
特に子供が苦しんでいる姿は胸が痛む。体に何も悪い所がなくても心が体まで衰弱させてしまうと言うことが、悲しいほどに伝わってきた。
父親である獣医は長い間それに気づかない。娘の衰弱によってほんの少し自分以外のそして娘以外の人々にも関心が向き始めるのだが・・・。
いったいどんな形でこの話が終わるのだろうと、まったく予想が付かなくなり、ページもなくなる、と言うところまで暗い雰囲気がつづく。神に祈り、途中知り合った魔女と呼ばれる女性の力も届かずに終わるか、と思った頃急に光が差し込み、大団円を迎えるのだ。
事が解決した時本当に心からほっとし、よかったねと本の中の人々に言いたくなった。最近読んだ本でここまで話に引き込まれ、やきもきさせられたものはない。人々の会話の端々にも考えさせられるものがあり、読んでよかった、と思わせるもの。
特に子供が苦しんでいる姿は胸が痛む。体に何も悪い所がなくても心が体まで衰弱させてしまうと言うことが、悲しいほどに伝わってきた。
父親である獣医は長い間それに気づかない。娘の衰弱によってほんの少し自分以外のそして娘以外の人々にも関心が向き始めるのだが・・・。
いったいどんな形でこの話が終わるのだろうと、まったく予想が付かなくなり、ページもなくなる、と言うところまで暗い雰囲気がつづく。神に祈り、途中知り合った魔女と呼ばれる女性の力も届かずに終わるか、と思った頃急に光が差し込み、大団円を迎えるのだ。
事が解決した時本当に心からほっとし、よかったねと本の中の人々に言いたくなった。最近読んだ本でここまで話に引き込まれ、やきもきさせられたものはない。人々の会話の端々にも考えさせられるものがあり、読んでよかった、と思わせるもの。
2004年7月24日に日本でレビュー済み
『トマシーナ』それは、この本の主人公(?)の猫の名前。
この猫が「語り手」となって物語が進んでいくのが、なんとも面白い。
しかし、この猫、あろうことか、途中であっさりと死んでしまう。
そして突然、別の猫が「語り手」となって物語が続いていくのだが...
正直言って私は、この主人公の猫ちゃんが死ぬ場面までは、
『あ~ 退屈な本』と思った。
しかし、猫の死後あたりから、グイグイと物語に引き込まれていく。
読者は、まんまと、原作者ギャリコの手法にのせられてしまうだろう。
ちょっと『かったるい言いまわし』や『クドクドと続く表現』が
知らず知らずのうちに、快感にさえ変わっていく。
そして、読み終わった後は、『あ~ いい話だった』と、快い気分に
ひたれる事になるだろう。
医者になる夢を絶たれ、妻を亡くした獣医マクデューイは
神をも信じられず、動物への愛情も持てない。
そのひとり娘のメアリー・ルーは、母を亡くした寂しさから
飼い猫のトマシーナを何よりも可愛がっていた。
が、父は愛猫を安楽死させてしまう。 愛猫を殺されたことで
心を閉ざしてしまう娘は、気の病で次第に衰弱していく...
この状況を、救ってくれるものは誰か?
そして物語は、父と娘と、その取り巻きの人々の心の動きを
細やかに綴りながら、ハッピーエンドへと向かっていく。
ポール・ギャリコの傑作である。
(猫好きの方には、猫の気持やしぐさの描写が、たまらなく愉快だろう)
この猫が「語り手」となって物語が進んでいくのが、なんとも面白い。
しかし、この猫、あろうことか、途中であっさりと死んでしまう。
そして突然、別の猫が「語り手」となって物語が続いていくのだが...
正直言って私は、この主人公の猫ちゃんが死ぬ場面までは、
『あ~ 退屈な本』と思った。
しかし、猫の死後あたりから、グイグイと物語に引き込まれていく。
読者は、まんまと、原作者ギャリコの手法にのせられてしまうだろう。
ちょっと『かったるい言いまわし』や『クドクドと続く表現』が
知らず知らずのうちに、快感にさえ変わっていく。
そして、読み終わった後は、『あ~ いい話だった』と、快い気分に
ひたれる事になるだろう。
医者になる夢を絶たれ、妻を亡くした獣医マクデューイは
神をも信じられず、動物への愛情も持てない。
そのひとり娘のメアリー・ルーは、母を亡くした寂しさから
飼い猫のトマシーナを何よりも可愛がっていた。
が、父は愛猫を安楽死させてしまう。 愛猫を殺されたことで
心を閉ざしてしまう娘は、気の病で次第に衰弱していく...
この状況を、救ってくれるものは誰か?
そして物語は、父と娘と、その取り巻きの人々の心の動きを
細やかに綴りながら、ハッピーエンドへと向かっていく。
ポール・ギャリコの傑作である。
(猫好きの方には、猫の気持やしぐさの描写が、たまらなく愉快だろう)
2004年7月13日に日本でレビュー済み
久しぶりに再読して、今まで抱いていた作品の印象が変わりました。これまでは、トマシーナという猫が魅力的に描かれた物語と、そのイメージが強くありました。そういう側面もあるのですが、本書の核となるテーマはもっと別のところにあるんじゃないか、これは心に傷を負った男と、彼がこの世で何よりも愛する娘が、愛の奇跡によって救われる物語なんじゃないか、そう思ったんですね。マクデューイ氏という動物嫌いの獣医が、娘の愛を失って苦悩する姿、彼がひとりの女性と出会うことで人間としての温かさを取り戻していく姿、そんな彼の姿が切迫した調子で描き出されていたところ、そこに本書の一番の読みごたえを感じたのです。
愛するトマシーナが父親の手によって殺された時、「トマシーナァァァァァ!」と絶叫するメアリ・ルー。それ以後、父親を心の中で抹殺したメアリ・ルー。彼女が深く傷つき、この世の中の出来事から心を閉ざすようになっていく姿は、見ていてどうにも痛ましく、やり切れない気持ちにさせられました。
親友のアンドリュー・マクデューイを救おうと、彼の心にそれとなく働きかけていくアンガス・ペディ牧師。《赤毛の魔女》《変人ローリ》と呼ばれる女性とともに、彼の存在が大きかったこと、その人となりが魅力的だったのも心に残ります。
山田蘭さんの訳文、なかなか見事だと思いました。特に、トマシーナが語る章での生き生きとした調子の文章と人称代名詞の用い方に、訳者のセンスの良さ、細やかな気遣いを感じました。
原題は、Thomasina 1957年の作品。
猫の名前がついた物語では、同じ著者の『ジェニィ』(新潮文庫 ※私が読んだのは、矢川澄子訳の『さすらいのジェニー』大和書房)とともに、深く心に残る、忘れがたい名作です。
愛するトマシーナが父親の手によって殺された時、「トマシーナァァァァァ!」と絶叫するメアリ・ルー。それ以後、父親を心の中で抹殺したメアリ・ルー。彼女が深く傷つき、この世の中の出来事から心を閉ざすようになっていく姿は、見ていてどうにも痛ましく、やり切れない気持ちにさせられました。
親友のアンドリュー・マクデューイを救おうと、彼の心にそれとなく働きかけていくアンガス・ペディ牧師。《赤毛の魔女》《変人ローリ》と呼ばれる女性とともに、彼の存在が大きかったこと、その人となりが魅力的だったのも心に残ります。
山田蘭さんの訳文、なかなか見事だと思いました。特に、トマシーナが語る章での生き生きとした調子の文章と人称代名詞の用い方に、訳者のセンスの良さ、細やかな気遣いを感じました。
原題は、Thomasina 1957年の作品。
猫の名前がついた物語では、同じ著者の『ジェニィ』(新潮文庫 ※私が読んだのは、矢川澄子訳の『さすらいのジェニー』大和書房)とともに、深く心に残る、忘れがたい名作です。