充分にためになる内容です。
それぞれの競技で代表的な6つの人材の宝庫ゴールドマインを取り上げ、それらの地域でなぜ常にトップクラスの選手が生まれ続けるのかを考察しています。
指導者たちのやり方から共通点を洗い出す手法なので、タイトル通り指導者向けの内容だと言えますが、それだけには止まりません。この本の内容は、軽視されがちな練習の「量」の重要性を説いており、それは選手の目線からでも非常に参考になるものです。
また、量を強調するため欧米の効率化重視のアプローチを必ずしも肯定的に書いてはいませんが、読んだ感じ否定的ということはありません。あくまで欧米の効率重視のアプローチに足りないものは何か、という観点です。間違っても「質」を否定してはいません。
平たく言えば結局「根性論」ではありますが、クリスティアーノ・ロナウドやコービー・ブライアントが練習の虫であるというのを知っていれば、練習をすることこそがまず大事であるというのはむしろ当然の結論です。付け加えるなら、この「量」の大半を占めるのは自身の向上にフォーカスした「個人練習」です。例えばサッカーで主流である「練習は試合と同じ90分」と言ったチーム練習の理論とは別です。
この本を「質」と「量」どっちかが大事なんだという二元択一的な考え方で読むなら駄書でしょう。そういう考え方の人には、終始練習量を強調する本書は「量さえ確保すればいい」という極論且つ明らかに破綻した主張をしていると感じられるだろうからです。また、「質」を追求する方が、より理知的で「自分は勉強している」感がして好まれやすいのも事実です。
しかしながら、事実としてトップクラスの選手たちはどれだけ「量」をこなしているのかを知ることができるのは大きい。
指導者は「選手のモチベーションを刺激し練習に打ち込ませる」事がどれだけ大事か、選手は「可能な限り練習すること」がどれだけ重要か、を教えてくれます。要は選手がそれだけの熱意を持っている事が「まず」大事ということです。本書で引用される「ビジョナリー・カンパニー」という本と合わせて読めば、モチベーションこそが成長の「土台」であるという風に解釈できます。
重ねて言いますが、「質の重視」を否定しているのではなく、「量の軽視」を否定しているのです。
現実には選手を育てる上では「質」も「量」もどちらも大事で、そこを認識できているなら「この本は練習量ばかり強調している、だから質を度外視している」という二元論的な印象は受けないはずです。この本で欧米のアプローチを否定する場合というのは、質・効率を重視する考え方それ自体ではなく、「質」を重視する過程で選手のモチベーションが低下してしまっているパターンです。この場合も、質の重視をではなく、あくまでハングリーさというモチベーションの欠如を問題としています。やり方が良くない、と言っているだけです。
欧米からの知識の流入に伴い、練習の「質」の重要さは今や素人に至るまで多くの人が認識しています。だからこそ、「質」を重視しすぎるがゆえに起きてしまいうる「魔法のような、秘密の育成ノウハウがあるはず」という安直な怠慢を戒めたうえで、「量」の重要性を改めて強調し、どちらか一方に偏るのではなく、2つの要素が最大限・しかし過剰にならない程度に確保されることが、育成で最も重要なのだと、そういう気づきをくれる本だと思います。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
トップアスリート量産地に学ぶ 最高の人材を見いだす技術 単行本(ソフトカバー) – 2012/12/15
才能とは何か。どうやって見極め、育てるのか。
●なぜ世界最高の短距離選手のほとんどがジャマイカの1陸上クラブの出身なのか?
●なぜ世界ランク上位の女子プロゴルファーの35%が韓国人なのか?
●なぜエチオピアのある村から世界屈指の中距離ランナーが何人も輩出しているのか?
●なぜロシアは2、3年で女子テニス世界ランク上位の25%を占めるようになったか?
●なぜケニアには世界一の長距離ランナーを継続的に送り出す村があるのか?
●なぜ欧州チャンピオンズ・リーグに南米ブラジルから67人もが出場しているのか?
ジャマイカ、韓国、エチオピア、ロシア、ケニア、ブラジル――元プロサッカー選手のビジネスコーチが、
世界6カ所の「人材の宝庫(ゴールドマイン)」を訪ね、
世界トップクラスの才能を輩出する秘訣を探り出した。
そこからわかったのは、スポーツに限らず、どんな分野にも応用できる能力開発の「8つのコンセプト」。
他者が見逃した才能を見極め、明日のスーパースターを発掘する方法だ。
【8つのコンセプト】
才能・人材発掘・訓練・信念・心構え・指導力・子育て・モチベーション
●なぜ世界最高の短距離選手のほとんどがジャマイカの1陸上クラブの出身なのか?
●なぜ世界ランク上位の女子プロゴルファーの35%が韓国人なのか?
●なぜエチオピアのある村から世界屈指の中距離ランナーが何人も輩出しているのか?
●なぜロシアは2、3年で女子テニス世界ランク上位の25%を占めるようになったか?
●なぜケニアには世界一の長距離ランナーを継続的に送り出す村があるのか?
●なぜ欧州チャンピオンズ・リーグに南米ブラジルから67人もが出場しているのか?
ジャマイカ、韓国、エチオピア、ロシア、ケニア、ブラジル――元プロサッカー選手のビジネスコーチが、
世界6カ所の「人材の宝庫(ゴールドマイン)」を訪ね、
世界トップクラスの才能を輩出する秘訣を探り出した。
そこからわかったのは、スポーツに限らず、どんな分野にも応用できる能力開発の「8つのコンセプト」。
他者が見逃した才能を見極め、明日のスーパースターを発掘する方法だ。
【8つのコンセプト】
才能・人材発掘・訓練・信念・心構え・指導力・子育て・モチベーション
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社CCCメディアハウス
- 発売日2012/12/15
- ISBN-104484121220
- ISBN-13978-4484121222
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
才能とは何か。どうやって見極め、育てるのか。なぜ世界最高の短距離選手のほとんどがジャマイカ出身なのか?なぜ世界ランク上位の女子プロゴルファーの35%が韓国人なのか?元プロサッカー選手のビジネスコーチが世界6カ所の「人材の宝庫」から導き出した能力開発の秘訣。
著者について
ラスムス・アンカーセン
1983年生まれ。デンマーク出身。ベストセラー作家。
能力開発分野で講演活動を行なうかたわら、アドバイザーとして世界中の企業やアスリートから厚い信頼を受けている。
22歳で処女作『The DNA of a Winner』(未邦訳)を発表。
その1年後には、アナス・フォー・ラスムセンNATO事務総長、レゴ・グループのヨアン・ヴィー・クヌッドストープCEOなど、
世界の著名なリーダー25人を実際に調査して書きあげた第2作『Leader DNA』(未邦訳)を発表、
デンマークで販売されているリーダーシップ関連書籍のなかでは、5年連続で売上ナンバーワンを記録するなど高い評価を受けている。
デンマークのベアリングスケ・ビジネス・マガジン(Berlingske Business Magazine)から賞を授与され、
デンマーク3大ビジネス・タレントのひとりとして名を連ねている。
最近ではデンマークの首相から新作『The Danish Dream』への寄稿を依頼された。
アンカーセンは本書で、すぐれたパフォーマンスの秘密にまた一段、深く切りこんでいる。
世界のトップアスリートたちと実際に生活をともにし、そのトレーニングを肌で体感することで、
この分野で唯一のエキスパートとしての地位を確立したといえるだろう。
ロンドンに戻ったいまは、実例と結果から導き出したノウハウを駆使して、
世界水準のパフォーマンスを実現する「人ゴ ールドマイン材の宝庫」の築き方を組織や企業に指南している。
1983年生まれ。デンマーク出身。ベストセラー作家。
能力開発分野で講演活動を行なうかたわら、アドバイザーとして世界中の企業やアスリートから厚い信頼を受けている。
22歳で処女作『The DNA of a Winner』(未邦訳)を発表。
その1年後には、アナス・フォー・ラスムセンNATO事務総長、レゴ・グループのヨアン・ヴィー・クヌッドストープCEOなど、
世界の著名なリーダー25人を実際に調査して書きあげた第2作『Leader DNA』(未邦訳)を発表、
デンマークで販売されているリーダーシップ関連書籍のなかでは、5年連続で売上ナンバーワンを記録するなど高い評価を受けている。
デンマークのベアリングスケ・ビジネス・マガジン(Berlingske Business Magazine)から賞を授与され、
デンマーク3大ビジネス・タレントのひとりとして名を連ねている。
最近ではデンマークの首相から新作『The Danish Dream』への寄稿を依頼された。
アンカーセンは本書で、すぐれたパフォーマンスの秘密にまた一段、深く切りこんでいる。
世界のトップアスリートたちと実際に生活をともにし、そのトレーニングを肌で体感することで、
この分野で唯一のエキスパートとしての地位を確立したといえるだろう。
ロンドンに戻ったいまは、実例と結果から導き出したノウハウを駆使して、
世界水準のパフォーマンスを実現する「人ゴ ールドマイン材の宝庫」の築き方を組織や企業に指南している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
アンカーセン,ラスムス
1983年生まれ。デンマーク出身。ベストセラー作家。能力開発分野で講演活動を行なうかたわら、アドバイザーとして世界中の企業やアスリートから厚い信頼を受けている。22歳で処女作『The DNA of a Winner』(未邦訳)を発表。その1年後には、アナス・フォー・ラスムセンNATO事務総長、レゴ・グループのヨアン・ヴィー・クヌッドストープCEOなど、世界の著名なリーダー25人を実際に調査して書きあげた第2作『Leader DNA』(未邦訳)を発表、デンマークで販売されているリーダーシップ関連書籍のなかでは、5年連続で売上ナンバーワンを記録するなど高い評価を受けている
清水/由貴子
1968年生まれ、東京都出身。上智大学外国語学部卒
磯川/典子
東京都出身。桜美林大学文学部英語英米文学科卒業。カピオラニ・コミュニティ・カレッジ卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1983年生まれ。デンマーク出身。ベストセラー作家。能力開発分野で講演活動を行なうかたわら、アドバイザーとして世界中の企業やアスリートから厚い信頼を受けている。22歳で処女作『The DNA of a Winner』(未邦訳)を発表。その1年後には、アナス・フォー・ラスムセンNATO事務総長、レゴ・グループのヨアン・ヴィー・クヌッドストープCEOなど、世界の著名なリーダー25人を実際に調査して書きあげた第2作『Leader DNA』(未邦訳)を発表、デンマークで販売されているリーダーシップ関連書籍のなかでは、5年連続で売上ナンバーワンを記録するなど高い評価を受けている
清水/由貴子
1968年生まれ、東京都出身。上智大学外国語学部卒
磯川/典子
東京都出身。桜美林大学文学部英語英米文学科卒業。カピオラニ・コミュニティ・カレッジ卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : CCCメディアハウス (2012/12/15)
- 発売日 : 2012/12/15
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 320ページ
- ISBN-10 : 4484121220
- ISBN-13 : 978-4484121222
- Amazon 売れ筋ランキング: - 103,357位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 237位企業革新
- - 564位マネジメント・人材管理
- - 3,319位スポーツ (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.2
星5つ中の4.2
7 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年2月10日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
10人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2013年5月30日に日本でレビュー済み
本書で取り上げられるのは6つの「ゴールドマイン」、すなわち陸上短距離のジャマイカ、
陸上中距離のエチオピア、陸上長距離のケニア、女子ゴルフの韓国、女子テニスのロシア、
そしてサッカーのブラジル。「ゴールドマインから量産される並はずれた成績は、エリート
選手の育成方法について一般に信じられてきた説に疑問を投げかけ、何世代にもわたって
人々を虜にしてきた謎をあらためて突きつけていると言えるだろう。才能とはいったい
何なのか? 大きな成功を収めている人がいる一方で、大きな挫折を味わう人がいるのは
どうしてなのか? 抜群の成績をあげられる秘密を解明する暗号など、そもそも存在する
のだろうか? ……本書では、私が発見した人材の宝庫(ゴールドマイン)を築くための
方法やコツを紹介していく。このとおりにすれば、誰にでも世界水準の成績があげられる
ゴールドマインを築くことも夢ではない」。
別に本書の言い分のすべてが間違っているとは思わない。
「どんな人でも、何を達成するにおいても、いちばん大切なのはモチベーションである」、
本書で再三再四強調される「根性」の重要性を一概に否定しようとは思わない。
しかしこのテキストにおける議論はそのいちいちが粗雑、そして時に悪質。
「ケニアのランナーは、一流選手となるための欧米式の論理的かつ分析的なアプローチを
真っ向から否定している。……西欧諸国には情報や科学的な分析結果があふれているが、
結果を出しているのはケニアのほうだ」。
確かに、例えばマラソン歴代記録を参照すればケニアとエチオピアの絶対的優位は明白、
しかしそれはあくまで陸上長距離に限ってのこと、例えばオリンピックや世界陸上における
トータルのメダル獲得数を比較すれば、事実その上位国は欧米諸国で占められる。しかし、
筆者は終始一貫してそうした事実には目を伏せて、あくまで自説に都合のいいマイナー国の
特定競技のみを取り上げて、その議論の一般化を試みる。
「世界で一流になるために必要なトレーニング時間は10000時間」との命題を引き、それを
達成するための早期教育の必要を説く。これも正しいのだろう。しかしここで知られるべきは
単に延べ時間という量の問題だけではない、その時間内にいかなる練習が行われたのか、
という質の問題も同様に重視されねばならない。しかし筆者はここでもそうした問題には
決して踏み込もうとはしない。強調されるのはあくまで「ゴールドマイン」がインフラを見れば
別段恵まれているわけではなく、量こそがその秘訣なのだ、というその一点だけ。彼らが
積み重ねているだろう日々の試行錯誤や創意工夫にろくに触れずに欧米型の知識重視を
批判するのは逆説的に彼らの英知を踏みにじるものとしか見えない。
例えば水泳が典型、主要先進国が筆者の忌み嫌う「論理的かつ分析的なアプローチ」に
従って記録を伸ばしているというのに、そうしたサンプルには目もくれようともせず、代わりに
彼がすることと言えば、受け手次第でどうとでもその意味が変わってしまうだろう抽象論を
振りかざすことだけ。
「『私には20年の経験がある』と豪語する相手には気をつけたほうがいい。実際には、
1年の経験と19年の自己満足かもしれないのだから」。
これもまったくその通り、しかし「経験」と「自己満足」の境界を隔てる質の差に具体的に
言及しようとしないのは、もはやペテンと切り捨てる他ない。
「ジャマイカ人の薬指が長い……それが速く走るのに何らかの助けになるらしい」との説を
オカルトで片づけようとするのだが、薬指の長さとテストステロンの分泌量に相関関係が
見られることをその論拠としていることを彼はそもそも理解できていないらしい。
ことほどさように、手を変え品を変え、ああ言えばこう言うだけの厚顔無恥、皮相浅薄、
インチキコンサルの標本のような筆者の綴ったこのテキスト、その底流に横たわるのは、
まるで日本の老害世代のような反知性主義の精神論。
しょうもない講演会大好き、根性論大好き、そんな読者にはたまらないだろう一冊。
陸上中距離のエチオピア、陸上長距離のケニア、女子ゴルフの韓国、女子テニスのロシア、
そしてサッカーのブラジル。「ゴールドマインから量産される並はずれた成績は、エリート
選手の育成方法について一般に信じられてきた説に疑問を投げかけ、何世代にもわたって
人々を虜にしてきた謎をあらためて突きつけていると言えるだろう。才能とはいったい
何なのか? 大きな成功を収めている人がいる一方で、大きな挫折を味わう人がいるのは
どうしてなのか? 抜群の成績をあげられる秘密を解明する暗号など、そもそも存在する
のだろうか? ……本書では、私が発見した人材の宝庫(ゴールドマイン)を築くための
方法やコツを紹介していく。このとおりにすれば、誰にでも世界水準の成績があげられる
ゴールドマインを築くことも夢ではない」。
別に本書の言い分のすべてが間違っているとは思わない。
「どんな人でも、何を達成するにおいても、いちばん大切なのはモチベーションである」、
本書で再三再四強調される「根性」の重要性を一概に否定しようとは思わない。
しかしこのテキストにおける議論はそのいちいちが粗雑、そして時に悪質。
「ケニアのランナーは、一流選手となるための欧米式の論理的かつ分析的なアプローチを
真っ向から否定している。……西欧諸国には情報や科学的な分析結果があふれているが、
結果を出しているのはケニアのほうだ」。
確かに、例えばマラソン歴代記録を参照すればケニアとエチオピアの絶対的優位は明白、
しかしそれはあくまで陸上長距離に限ってのこと、例えばオリンピックや世界陸上における
トータルのメダル獲得数を比較すれば、事実その上位国は欧米諸国で占められる。しかし、
筆者は終始一貫してそうした事実には目を伏せて、あくまで自説に都合のいいマイナー国の
特定競技のみを取り上げて、その議論の一般化を試みる。
「世界で一流になるために必要なトレーニング時間は10000時間」との命題を引き、それを
達成するための早期教育の必要を説く。これも正しいのだろう。しかしここで知られるべきは
単に延べ時間という量の問題だけではない、その時間内にいかなる練習が行われたのか、
という質の問題も同様に重視されねばならない。しかし筆者はここでもそうした問題には
決して踏み込もうとはしない。強調されるのはあくまで「ゴールドマイン」がインフラを見れば
別段恵まれているわけではなく、量こそがその秘訣なのだ、というその一点だけ。彼らが
積み重ねているだろう日々の試行錯誤や創意工夫にろくに触れずに欧米型の知識重視を
批判するのは逆説的に彼らの英知を踏みにじるものとしか見えない。
例えば水泳が典型、主要先進国が筆者の忌み嫌う「論理的かつ分析的なアプローチ」に
従って記録を伸ばしているというのに、そうしたサンプルには目もくれようともせず、代わりに
彼がすることと言えば、受け手次第でどうとでもその意味が変わってしまうだろう抽象論を
振りかざすことだけ。
「『私には20年の経験がある』と豪語する相手には気をつけたほうがいい。実際には、
1年の経験と19年の自己満足かもしれないのだから」。
これもまったくその通り、しかし「経験」と「自己満足」の境界を隔てる質の差に具体的に
言及しようとしないのは、もはやペテンと切り捨てる他ない。
「ジャマイカ人の薬指が長い……それが速く走るのに何らかの助けになるらしい」との説を
オカルトで片づけようとするのだが、薬指の長さとテストステロンの分泌量に相関関係が
見られることをその論拠としていることを彼はそもそも理解できていないらしい。
ことほどさように、手を変え品を変え、ああ言えばこう言うだけの厚顔無恥、皮相浅薄、
インチキコンサルの標本のような筆者の綴ったこのテキスト、その底流に横たわるのは、
まるで日本の老害世代のような反知性主義の精神論。
しょうもない講演会大好き、根性論大好き、そんな読者にはたまらないだろう一冊。


