本は分厚い。が、ほとんどは紙の厚みである。紙がやたらと分厚い本だ。内容はかなり薄い。
著者の見識を疑うものではない。それなりに詳しいと思う。事実ダークウェブ(ディープウェブ)に関する知識は一般人のそれとは一線を画す。
がしかし、本の内容の大半が有名ディープウェブサイトの表層的な解説にとどまるうえ、「アメリカのインターネットはなぜ反体制的なのか」という欄をチラ読みすれば、ごくありきたりな考察が5ページ半ほどあるだけで、しかも筆者の独自見解でしかない。先行研究などが全く踏まえられていないか、踏まえられていたとしても出典が明記されていない。アメリカの反・ポリコレ、オルタナ右翼に関する考察は決定的に知識不足で、それを埋め合わせようとした形跡すらない。ウィキペディアの引き写しで得た知識ぐらいしかないのではないかと疑わされる。
あれやこれやを扱おうとして全てを書いていると紙幅が足りなくなる、これは理解できるものだが、それならいっそディープウェブの歴史だけを純粋に追うか、もしくは各ディープウェブの根底に流れる思想について体系的にまとめるか、このいずれかに焦点を絞った方が良かったのではないか。
古来よりネット住民は「サカキバラ」や「ネオ麦茶」などに的外れな考察を繰り返す”センモンカ”をとかくあざ笑っていたものである。著者のダークウェブに関する考察はけだしそのような嘲笑の対象であろう。ただ、ディープウェブ上に存在したサイトの紹介部分に関しては、まぁまぁ(表層的でごく一部しか紹介されていないということを除けば)悪くない。
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