改めてタコについて理解が深かまった点は良し。
だが、神経回路から意識への流れは消化不良ぎみ。
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タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 単行本 – 2018/11/17
ピーター・ゴドフリー=スミス
(著),
夏目 大
(翻訳)
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■ 心は何から、いかにして生じるのだろう。進化は「まったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」。一つはヒトや鳥類を含む脊索動物、そしてもう一つがタコやイカを含む頭足類だ。哲学者であり練達のダイバーでもある著者によれば、「頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう」。私たち人間とはまったく異なる心/内面/知性と呼ぶべきものを、彼らはもっている。本書は頭足類の心と私たちの心の本性を合わせ鏡で覗き込む本である。
■ 海で生まれた単細胞生物から、現生のタコやイカへの進化の道筋を一歩ずつたどれば、そこには神経系の発達や、感覚と行動のループの起源、「主観的経験」の起源があり、それは主体的に感じる能力(sentience)や意識の出現につながっている。
■ タコはまるで心脳問題をまぜかえすためにいるような生物だ(脳よりも腕に多くのニューロンがあって、脳とは別に8本の腕が自律的に思考できるかのようにふるまう)。「タコになったらどんな気分か」という問題の中には、そもそも心とは何か、それは物理的な身体とどう関係するのかを解き明かす手がかりが詰まっている。
■ 知能の高さゆえの、タコやイカの茶目っ気たっぷりの行動や、急速な老化と死の謎など、知れば知るほど頭足類の生態はファンタスティック。おまけに著者が観察している「オクトポリス」(タコが集住する場所)では、タコたちが社会性の片鱗を示しはじめているという。味わい深く、驚きに満ちた一冊。
「エキサイティング、ドラマティック、鮮烈で、目から鱗。……すべてのナチュラリスト、すべてのダイバー、そして人間以外の生物がどんな経験をしているかに思いをめぐらせたことのあるすべての人の思考を刺激して、愉しませてくれる本だ。つまりは、誰もがこの本を読んでほしい──それによって、この地球や海を共有している他の動物たちと、もっと複雑で相互に思いやりのある関係を結びたいという気持ちを、誰もがもつように。」──サイ・モンゴメリー(『愛しのオクトパス』著者)
「本書の哲学は海の岩礁の上、砂の中で始まり、じわりじわりと上方へ、高度な抽象概念へと這い上がっていく。こんなふうにボトムアップで哲学ができるとは。哲学は常にこうあるべきだ。」──チャールズ・フォスター、『リテラリー・レビュー』誌
■ 海で生まれた単細胞生物から、現生のタコやイカへの進化の道筋を一歩ずつたどれば、そこには神経系の発達や、感覚と行動のループの起源、「主観的経験」の起源があり、それは主体的に感じる能力(sentience)や意識の出現につながっている。
■ タコはまるで心脳問題をまぜかえすためにいるような生物だ(脳よりも腕に多くのニューロンがあって、脳とは別に8本の腕が自律的に思考できるかのようにふるまう)。「タコになったらどんな気分か」という問題の中には、そもそも心とは何か、それは物理的な身体とどう関係するのかを解き明かす手がかりが詰まっている。
■ 知能の高さゆえの、タコやイカの茶目っ気たっぷりの行動や、急速な老化と死の謎など、知れば知るほど頭足類の生態はファンタスティック。おまけに著者が観察している「オクトポリス」(タコが集住する場所)では、タコたちが社会性の片鱗を示しはじめているという。味わい深く、驚きに満ちた一冊。
「エキサイティング、ドラマティック、鮮烈で、目から鱗。……すべてのナチュラリスト、すべてのダイバー、そして人間以外の生物がどんな経験をしているかに思いをめぐらせたことのあるすべての人の思考を刺激して、愉しませてくれる本だ。つまりは、誰もがこの本を読んでほしい──それによって、この地球や海を共有している他の動物たちと、もっと複雑で相互に思いやりのある関係を結びたいという気持ちを、誰もがもつように。」──サイ・モンゴメリー(『愛しのオクトパス』著者)
「本書の哲学は海の岩礁の上、砂の中で始まり、じわりじわりと上方へ、高度な抽象概念へと這い上がっていく。こんなふうにボトムアップで哲学ができるとは。哲学は常にこうあるべきだ。」──チャールズ・フォスター、『リテラリー・レビュー』誌
- 本の長さ312ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2018/11/17
- 寸法13.5 x 2.3 x 19.4 cm
- ISBN-10462208757X
- ISBN-13978-4622087571
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
進化はまったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった。人間とはまったく異なる心と知性をもつ生命体―頭足類。なぜこんなに賢いのか?タコになったらどんな気分か?彼らと私たち、二つの心の本性を合わせ鏡で覗き込む。
著者について
ピーター・ゴドフリー=スミス(Peter Godfrey-Smith)
1965年生まれ。シドニー大学教授、およびニューヨーク市立大学大学院センター兼任教授。専門は哲学(Philosophy of science/biology)。著書に、Darwinian Populations and Natural Selection(Oxford, 2009, Lakatos Award受賞作)ほか。
夏目大
翻訳家。主な訳書に、ブルックス『あなたの人生の科学』(上下)、『あなたの人生の意味』(上下)(以上ハヤカワNF文庫)、リンデン『脳はいいかげんにできている』(河出文庫)、スタッフォード/ウェッブ『Mind Hacks』(オライリージャパン)など多数。
1965年生まれ。シドニー大学教授、およびニューヨーク市立大学大学院センター兼任教授。専門は哲学(Philosophy of science/biology)。著書に、Darwinian Populations and Natural Selection(Oxford, 2009, Lakatos Award受賞作)ほか。
夏目大
翻訳家。主な訳書に、ブルックス『あなたの人生の科学』(上下)、『あなたの人生の意味』(上下)(以上ハヤカワNF文庫)、リンデン『脳はいいかげんにできている』(河出文庫)、スタッフォード/ウェッブ『Mind Hacks』(オライリージャパン)など多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ゴドフリー=スミス,ピーター
1965年シドニー生まれ。シドニー大学科学史・科学哲学スクール教授、およびニューヨーク市立大学大学院センター兼任教授。スタンフォード大学准教授(1998‐2003)、ハーバード大学教授(2006‐2011)、ニューヨーク市立大学大学院センター教授(2011‐2017)などを経て2017年より現職。専門は生物哲学、心の哲学、プラグマティズム(特にジョン・デューイ)、科学哲学。著書Darwinian Populations and Natural Selection(Oxford、2009。2010年のLakatos Award受賞)ほか。練達のダイバーであり、海中撮影した写真やビデオはNational Geographic,New Scientistなどにも採り上げられている
夏目/大
1966年、大阪府生まれ。翻訳家。翻訳学校「フェロー・アカデミー」講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1965年シドニー生まれ。シドニー大学科学史・科学哲学スクール教授、およびニューヨーク市立大学大学院センター兼任教授。スタンフォード大学准教授(1998‐2003)、ハーバード大学教授(2006‐2011)、ニューヨーク市立大学大学院センター教授(2011‐2017)などを経て2017年より現職。専門は生物哲学、心の哲学、プラグマティズム(特にジョン・デューイ)、科学哲学。著書Darwinian Populations and Natural Selection(Oxford、2009。2010年のLakatos Award受賞)ほか。練達のダイバーであり、海中撮影した写真やビデオはNational Geographic,New Scientistなどにも採り上げられている
夏目/大
1966年、大阪府生まれ。翻訳家。翻訳学校「フェロー・アカデミー」講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2018/11/17)
- 発売日 : 2018/11/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 312ページ
- ISBN-10 : 462208757X
- ISBN-13 : 978-4622087571
- 寸法 : 13.5 x 2.3 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 66,141位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2020年11月19日に日本でレビュー済み
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3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年9月13日に日本でレビュー済み
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タコなどの面白い挙動についての紹介と、「生物における意識やコミュニケーションはそもそもどのように進化してきたのか」ということについての考察などが書かれている。
タコの挙動について観察した内容部分は面白く読めるが、意識やコミュニケーションについての一般論を述べている部分はややわかりにくい。
絵や写真がところどころにあるが、もっとたくさんあったほうがいいと思う。文章だけではイメージしにくいものが多い。
なお、タイトルはタコだが、イカも主要登場動物である。
タコの挙動について観察した内容部分は面白く読めるが、意識やコミュニケーションについての一般論を述べている部分はややわかりにくい。
絵や写真がところどころにあるが、もっとたくさんあったほうがいいと思う。文章だけではイメージしにくいものが多い。
なお、タイトルはタコだが、イカも主要登場動物である。
2019年2月14日に日本でレビュー済み
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イカやタコなどの頭足類の知性、特に「主観的経験」について主に進化論の観点から論じたもの。これは「意識」とは違うと言っているので、副題にあるような「意識の起源を探る」というのは、正確に内容を反映しているとは言えないだろう。なお、著者は哲学者であって生物学者ではない。
記述は多くが頭足類の生態で、肝心の哲学的考察についてはあまり掘り下がっておらず、同じ内容の繰り返しも多い。頭足類が多数の神経細胞を持っているというのはそれ自体興味深い事実である。しかし、頭足類がどのような知性を持っているかについては、ほとんど生物学者の論文に依拠しているうえ、それに基づいた哲学的考察があるかというと、核心に触れるのをあえて避けているかのような、奇妙な論述だと思える。あまり理論的な記述がない。
エッセイだと思って読めば楽しめるかもしれないが、それなら3000円は確かに割高である。
記述は多くが頭足類の生態で、肝心の哲学的考察についてはあまり掘り下がっておらず、同じ内容の繰り返しも多い。頭足類が多数の神経細胞を持っているというのはそれ自体興味深い事実である。しかし、頭足類がどのような知性を持っているかについては、ほとんど生物学者の論文に依拠しているうえ、それに基づいた哲学的考察があるかというと、核心に触れるのをあえて避けているかのような、奇妙な論述だと思える。あまり理論的な記述がない。
エッセイだと思って読めば楽しめるかもしれないが、それなら3000円は確かに割高である。
2018年11月25日に日本でレビュー済み
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サルに心があるとか、カラスに高度な知能があるとかいう話を聞くと、それなりに感心はするけれど、ものすごく驚くというほどではない。彼らはヒトと近縁で、脳の構造もヒトと似ている。サルに心があるとしたら、おそらく私たちヒトの心と似たようなもので、同じ起源をもっているものだろうと想像できる。
だが、タコに心(らしきもの)があり、ヒトと心を通わせることができるとなると話は別だ。ヒトとタコは進化の歴史上、約6億年前に袂を分かったとされる。その頃の動物はやっと原始的な目を持ち始めたという程度で、単純な体をしており、神経細胞は一応持っていたらしいが脳はなかった。ヒトとタコの共通祖先に心はまだ無かったのだ。だから、タコに心があるとすれば、それはヒトの心とは異なる起源を持ち別個に生じたということになる。「進化はまったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」のだ。
ヒトの心は進化の副産物に過ぎないという考え方があるという。大きな脳と複雑な神経系、それによって可能となる洗練された行動や高度な知能こそが主産物であって、心はそれに付随して生じた偶然の産物だというのだ。
だが、もしタコに心があるならどうだろう?歴史も環境も身体の構造も共有していない2つの生き物が、心と呼ぶべき類似した精神活動を共におこなっているとしたら?それは、心というものが偶然の産物などではなく、進化の歴史の中で必然的に生まれたものだということの傍証になるのではないか。そんな想像を掻き立てられる。
本書ではまず、タコが心を持っていると思わせるような行動をとることが紹介される。また、ヒトとタコが進化上かけ離れた存在であることを示し、全く異なる生き物である両者が「心を通わせる」ことができる不思議さについて触れている。そして、その後の数章では、生物の進化の歴史を数億年の単位で遡り、心の起源について探っていく。
ヒトとタコは何もかも違うと言って良いほど違っている。たとえばタコは原口動物で、ヒトは新口動物だ、というレベルで違う。神経系について言えば、タコにも脳と呼べる構造はあるが、脳とそれ以外の神経系にヒトほど明確な境界線はない。また、驚くべきことに、消化管が脳の中を突き抜けるような体の構造をしているという。しかも、「中央集権的」なヒトの脳と異なり、タコは脳よりもむしろ8本の腕に神経が多く分布しているらしい。
進化について述べられている章では、この分野における著者の造詣の深さに驚嘆させられる。著者の専門は哲学というからびっくりだ。進化生物学者だと言われても違和感がない。最近の論文も引用されており、その分野が現在進行形で研究されていることが良く分かる。ただ、この進化に関する数章は、ヒトとタコの心の違いを考えるという本書の主題からはやや脱線する部分もある。もし退屈に感じたら、最後の2章を先に読んでもいいかもしれない。この2章に、タコの持つ心の不思議さが凝縮されていると思うからだ。
第7章「圧縮された経験」では、なんとタコの寿命がわずか2年ほどだということが説明される。それだけの期間で心を発達させることができるのも興味深いが、それ以前の問題として、そもそもそのような短い寿命の生物で心や知能が進化しうるのか、という問題がある。複雑な神経系は、経験や学習を蓄積させるほど能力を発揮できるので、基本的に寿命が長いほど価値を持つ。一方で、脳が大食いの器官と評されるように、神経は「維持費」が多くかかる。2年という短い期間では、複雑な神経系は、メリットよりもコストの方が大きくなってしまうように思われる。それにもかかわらず、なぜこれほどの高度な神経が進化したのか。この点について考察されている。
最後の章「オクトポリス」では、頭足類の心について、より詳細に触れられている。タコとイカは頭足類に分類される近縁の動物だが、それぞれの高い知能が独立に進化した可能性があるという。また、頭足類にもエピソード様記憶という、ヒトと同様の記憶の能力があるという。心は、進化の歴史の中で、二度どころかもっと多くの回数生まれた可能性があるのだ。全く異なる起源をもち、異なる構造をしているにも関わらず、似た心や知能を持つに至ったのであれば、それは心にも収斂進化が起こっていると言ってもよいのではないか。
最後の訳者あとがきも素晴らしい。本書の原題はOther Mindsだが、これがMind"s"と複数形になっていることの意味について書かれている。
タコという不思議な動物についてよく知ることができるだけでなく、タコを通して私たちヒトの心について考えることができる本。面白かった。進化や、私たちの心がどこから来るのか、ということについて興味のある人は楽しめるのではないかなと思います。
だが、タコに心(らしきもの)があり、ヒトと心を通わせることができるとなると話は別だ。ヒトとタコは進化の歴史上、約6億年前に袂を分かったとされる。その頃の動物はやっと原始的な目を持ち始めたという程度で、単純な体をしており、神経細胞は一応持っていたらしいが脳はなかった。ヒトとタコの共通祖先に心はまだ無かったのだ。だから、タコに心があるとすれば、それはヒトの心とは異なる起源を持ち別個に生じたということになる。「進化はまったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」のだ。
ヒトの心は進化の副産物に過ぎないという考え方があるという。大きな脳と複雑な神経系、それによって可能となる洗練された行動や高度な知能こそが主産物であって、心はそれに付随して生じた偶然の産物だというのだ。
だが、もしタコに心があるならどうだろう?歴史も環境も身体の構造も共有していない2つの生き物が、心と呼ぶべき類似した精神活動を共におこなっているとしたら?それは、心というものが偶然の産物などではなく、進化の歴史の中で必然的に生まれたものだということの傍証になるのではないか。そんな想像を掻き立てられる。
本書ではまず、タコが心を持っていると思わせるような行動をとることが紹介される。また、ヒトとタコが進化上かけ離れた存在であることを示し、全く異なる生き物である両者が「心を通わせる」ことができる不思議さについて触れている。そして、その後の数章では、生物の進化の歴史を数億年の単位で遡り、心の起源について探っていく。
ヒトとタコは何もかも違うと言って良いほど違っている。たとえばタコは原口動物で、ヒトは新口動物だ、というレベルで違う。神経系について言えば、タコにも脳と呼べる構造はあるが、脳とそれ以外の神経系にヒトほど明確な境界線はない。また、驚くべきことに、消化管が脳の中を突き抜けるような体の構造をしているという。しかも、「中央集権的」なヒトの脳と異なり、タコは脳よりもむしろ8本の腕に神経が多く分布しているらしい。
進化について述べられている章では、この分野における著者の造詣の深さに驚嘆させられる。著者の専門は哲学というからびっくりだ。進化生物学者だと言われても違和感がない。最近の論文も引用されており、その分野が現在進行形で研究されていることが良く分かる。ただ、この進化に関する数章は、ヒトとタコの心の違いを考えるという本書の主題からはやや脱線する部分もある。もし退屈に感じたら、最後の2章を先に読んでもいいかもしれない。この2章に、タコの持つ心の不思議さが凝縮されていると思うからだ。
第7章「圧縮された経験」では、なんとタコの寿命がわずか2年ほどだということが説明される。それだけの期間で心を発達させることができるのも興味深いが、それ以前の問題として、そもそもそのような短い寿命の生物で心や知能が進化しうるのか、という問題がある。複雑な神経系は、経験や学習を蓄積させるほど能力を発揮できるので、基本的に寿命が長いほど価値を持つ。一方で、脳が大食いの器官と評されるように、神経は「維持費」が多くかかる。2年という短い期間では、複雑な神経系は、メリットよりもコストの方が大きくなってしまうように思われる。それにもかかわらず、なぜこれほどの高度な神経が進化したのか。この点について考察されている。
最後の章「オクトポリス」では、頭足類の心について、より詳細に触れられている。タコとイカは頭足類に分類される近縁の動物だが、それぞれの高い知能が独立に進化した可能性があるという。また、頭足類にもエピソード様記憶という、ヒトと同様の記憶の能力があるという。心は、進化の歴史の中で、二度どころかもっと多くの回数生まれた可能性があるのだ。全く異なる起源をもち、異なる構造をしているにも関わらず、似た心や知能を持つに至ったのであれば、それは心にも収斂進化が起こっていると言ってもよいのではないか。
最後の訳者あとがきも素晴らしい。本書の原題はOther Mindsだが、これがMind"s"と複数形になっていることの意味について書かれている。
タコという不思議な動物についてよく知ることができるだけでなく、タコを通して私たちヒトの心について考えることができる本。面白かった。進化や、私たちの心がどこから来るのか、ということについて興味のある人は楽しめるのではないかなと思います。
ベスト100レビュアー
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・原題:Other Minds
原題はアザー・マインズである。具体的にはタコやイカの頭足類のことであるが、本書では宇宙人も想定されている。「頭足類を見ていると、心があると感じられる。心が通じ合ったように思えることもある(p.10)」と著者は述べる。本書は、「生物の持つどういう原料から、どのようにして意識が生じるにいたったのか(p.10)」とあるように、動物にも意識があることが前提され、その主観的経験が進化上どの時点で発生したのかを問題としている。
著者は自分の専門は哲学であると宣言し、本書が生物とその進化の本であると同時に、哲学の本でもあると述べているにもかかわらず、残念ながら本書は生物学の本に分類されている。その点を日本語で『タコの心身問題』としたのは、よく考えられたタイトルだ。
・心があると信じられる
私は別の人の意識を体験できない。これを哲学では「他我問題」というそうだ。ましてや動物の意識を体験することはできない。だからタコやイカに限らず、動物はまるで意識を持っているかのように動くとしか思えない。しかし、われわれは人に対して自分と同じ意識を持っていると信じている。なぜだろうか。
著者は、ソ連の心理学者、レフ・ヴィゴツキーの内言を持ち出す。内言とは、自らの内側を見つめてみれば、そこに常に内なる声の流れがあることに気づく(p.168)、このことである。それで思いついたのだが、自分の内なる言葉と同じ言葉を発する彼は、きっと私と同じ意識を持っているのだと信じることができるだろう。「2001年宇宙の旅」のHAL9000のように。
・色を変える
頭足類は周りの環境に合わせて、自分の体の色を変えることができる。皮膚が多層構造になっていて、色を発する物質が収められた色素胞が何百万とあり、これを脳が直接コントロールしている(p.134)。
人間は血流の増減で顔色を変えるが、その変化は感情を表現することがある。同じように彼らも体の色でコミュニケーションできるのではないかと考えたが、残念なことに彼らは外からの色を識別できるかどうか不明で、その可能性があるに留まっているそうだ(p.150)。
いろいろと想像を掻き立てる、生物学と哲学が高いレベルで一体となった、読み応えのある一冊である。
原題はアザー・マインズである。具体的にはタコやイカの頭足類のことであるが、本書では宇宙人も想定されている。「頭足類を見ていると、心があると感じられる。心が通じ合ったように思えることもある(p.10)」と著者は述べる。本書は、「生物の持つどういう原料から、どのようにして意識が生じるにいたったのか(p.10)」とあるように、動物にも意識があることが前提され、その主観的経験が進化上どの時点で発生したのかを問題としている。
著者は自分の専門は哲学であると宣言し、本書が生物とその進化の本であると同時に、哲学の本でもあると述べているにもかかわらず、残念ながら本書は生物学の本に分類されている。その点を日本語で『タコの心身問題』としたのは、よく考えられたタイトルだ。
・心があると信じられる
私は別の人の意識を体験できない。これを哲学では「他我問題」というそうだ。ましてや動物の意識を体験することはできない。だからタコやイカに限らず、動物はまるで意識を持っているかのように動くとしか思えない。しかし、われわれは人に対して自分と同じ意識を持っていると信じている。なぜだろうか。
著者は、ソ連の心理学者、レフ・ヴィゴツキーの内言を持ち出す。内言とは、自らの内側を見つめてみれば、そこに常に内なる声の流れがあることに気づく(p.168)、このことである。それで思いついたのだが、自分の内なる言葉と同じ言葉を発する彼は、きっと私と同じ意識を持っているのだと信じることができるだろう。「2001年宇宙の旅」のHAL9000のように。
・色を変える
頭足類は周りの環境に合わせて、自分の体の色を変えることができる。皮膚が多層構造になっていて、色を発する物質が収められた色素胞が何百万とあり、これを脳が直接コントロールしている(p.134)。
人間は血流の増減で顔色を変えるが、その変化は感情を表現することがある。同じように彼らも体の色でコミュニケーションできるのではないかと考えたが、残念なことに彼らは外からの色を識別できるかどうか不明で、その可能性があるに留まっているそうだ(p.150)。
いろいろと想像を掻き立てる、生物学と哲学が高いレベルで一体となった、読み応えのある一冊である。
2019年2月24日に日本でレビュー済み
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実はまだ読み切っていないのですが、普段は文学、主に翻訳純文学ばかり読んでいる私には感動の連続です。
科学的に無知なこともあって知識として「へえ〜!」の連続でもありますが、
なにより作者の目が科学的でありながら文学的というか、翻訳の文体もすばらしいし、
ヒトとタコが出会う場面の描写など涙がにじんでくる。
頭も心も満たされる贅沢な時間を味わっています。
読了したらまたレビューを追加したいと思いますが、味わいすぎていつ終わることやら、の状態です。
科学的に無知なこともあって知識として「へえ〜!」の連続でもありますが、
なにより作者の目が科学的でありながら文学的というか、翻訳の文体もすばらしいし、
ヒトとタコが出会う場面の描写など涙がにじんでくる。
頭も心も満たされる贅沢な時間を味わっています。
読了したらまたレビューを追加したいと思いますが、味わいすぎていつ終わることやら、の状態です。









