(注意)このレビュー欄はamazonが間違ってロバート・デ・ニーロ主演の「タクシードライバー」とリュック・ベッソン監督作品でもなんでもない「TAXIダイヤモンド・ミッション」なる作品とが混載されている様なのでご注意下さい。以下は「タクシードライバー」のレビューです。
流石アメリカンニューシネマの代表作と言われるだけの、行き場のない社会への咆哮を感じさせる傑作だ。最近では「ファイト・クラブ」の過激な作風やテーマ性が近く、公開当時の衝撃が容易に想像できる。
彼は背中に大きな傷が有り、途中でミリタリージャケットを着ているものの、自称する海兵隊のベトナム帰還兵とは恐らく違う。無計画な行動や銃での急所の狙い方すら素人で、実態は圧倒的な軍や兵士の力に憧れている気弱な青年の設定なのだろう。だからタクシー会社の採用では理想の姿を演じたのだ。
真面目だが社会性の欠如した男がイエローキャブのタクシードライバーに就き、道端の人間模様を垣間見たり、様々な客を載せる事で社会を見極めたかの様な勘違いに陥る。
自分探しを始めようとするものの、知的上流階級には卑屈になるだけで彼の無学やぎこちない対人能力では受け入れられない。やがてそれは権力者に対する憎悪や、社会底辺の汚れた人間への嫌悪感に変質する。何故、真面目に働いている俺が馬鹿をみるのか、それは社会の方が間違っているからだと。
その歪んだ正義は単なる自己陶酔と世間への八つ当たりに過ぎないのだが、社会浄化の大義名分を得て、ロバート・デニーロ演じる主人公トラビスは暴走していくのだ。
実は彼自身が最も不条理な存在であり、法的手続きや面倒な交渉事を飛ばして、短絡的に相手を屈服させられる銃の力に頼る、危険で愚かな蒼い人間だ。
さて、でもここまで来ると誰も笑えなくなる。もし日本も米国同様に銃が簡単に手に入る社会なら、同様の事を考える人間が相当数居てもおかしくない。現代社会のストレスや格差に不条理を感じ、圧倒的な暴力性に惹かれる人間は確実に増えているだろう。ミリタリー・ジャケットとモヒカンと銃は、日本ならさしづめ特攻服とリーゼントと鉄バットの暴走族であり、トラビスとは精神的に大人に成りきれていないが正義心には溢れる、思い込み人間の象徴だ。
社会派の異端児マーティン・スコティッシ監督のメッセージとは、物欲に満たされた米国社会における新しい狂気の形の呈示だと思う。第二次大戦後の高揚は消えベトナム戦争では屈辱を味わい、国内は犯罪社会、格差社会、政治欺瞞の渦中にいる国民は、今後は何を精神的な支えに、何処に向かえば良いのかと問い掛ける。
そのヒントは途中でドライバー仲間ウィザード役のピーター・ボイルが語っている様に思う。「自分を探すのなら人と比べるな」と。
主観で歪みまくった脚本、凝ったカメラワークや色彩での演出、デニーロ達の魅惑の演技に惹き寄せられ、二時間があっという間だった。リマスターBlu-rayは夜のシーンも美しく再現していて文句の付けようがないが、特典映像が無い事だけが残念だ。
40年以上経過した作品だが、現代人の満たされない渇きや抑圧への反抗にも通ずる、とても普遍的で偉大な傑作です。
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