トレードに成功するために不可欠な「ゾーン」といわれる心理状態に達するための方法を説いた指南書。抽象的な精神論ではなく、トレードという目的に沿った解説なので説得力がある。一貫して勝つためには、どんな投資手法を用いようとも、「ゾーン」は不可欠な心理状態である。投資をこれから始める人にも役に立つが、何回かトレードで痛い目をみたことがある人、壁にぶつかってしまったと感じているトレーダーにとってきわめて有益な1冊といえる。
逆説的に聞こえる「マーケット分析は無意味」というような表現もあり、読み始めは、「ゾーン」にどれほど効果があるものか半信半疑になってしまう。ところが、読み進むうちに、著者のアドバイスの有用性が次第にわかってくる。「トレードに勝つことは誰にでもできる」が、「一貫して勝つためには心理状態が必要」という表現も、最初は禅問答にしか聞こえない。これも、7章「トレーダーの優位性」のあたりまで読み進むと、確率的思考法という概念とともにすんなり受け入れられるだろう。負けトレードで悪い情報を意図的に避ける、マーケットに対して期待や裏切られたといった感情を抱いてしまう凡庸なトレーダーの例には、耳が痛い人も少なからずいるはずだ。
概念の説明に用いられている事例はわかりやすくて説得力がある。たとえば、著者が力説する、認識が判断にいかに影響を与えるかというくだりでは、蛇を怖がる大人と怖がらない子ども、犬を初めて見た子ども、お金をタダであげると書かれた看板を持って町に出たテレビ番組のスタッフ、といったユニークな例が用いられている。こうした事例を通じて、正しい判断を疎外する認識を、当初は意図的に、ゆくゆくは無意識のうちに、排除することの重要性がわかってくる。
11章後半には、「ゾーン」を身につけるための段階別実践法が示されている。読み終わると、訳者が「明鏡止水の境地」と表現した、この心理状態に近づくことができた気になるから不思議だ。(河野幸吾)
本書では、投資家がトレードで一貫した結果を出せない隠された理由を明らかにし、奥底に潜む心の習性がもたらす障壁を乗り越えるため、実践的なプロセスが提示されている。ダグラスはマーケットの神秘に挑戦し、見事にひとつひとつそれを明確にした。すべての株式トレードを支配する「不確実性の原理」を本書から理解すれば、ランダムな結果を大局的に見て、リスクの本当の現実を受け入れられるようになるだろう。
内容(「MARC」データベースより)
「ゾーン」(明鏡止水の境地)に到達した者が、勝つ投資家になる! 投資家がトレードで一貫した結果を出せない理由を明らかにし、奥底に潜む心の習性がもたらす障壁を乗り越えるための実践的なプロセスを提示する。
著者について
マーク・ダグラス(Mark Douglas)
シカゴのトレーダー育成機関であるトレーディング・ビヘイビアー・ダイナミクス社の社長を務める。商品取引のブローカーでもあったダグラスは、自らの苦いトレード経験と多数のトレーダーの間接的な経験を踏まえて、トレードで成功できない原因とその克服策を提示している。最近では大手商品取引会社やブローカー向けに、本書で分析されたテーマやトレード手法に関するセミナーや勉強会を数多く主催している。著書に『規律とトレーダー』『ゾーン 最終章』、講演DVDに『「ゾーン」 プロトレーダー思考養成講座』(パンローリング)がある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ダグラス,マーク
ベストセラー『ザ・ディサプリンド・トレーダー(The Disciplined Trader:Developing Winning Attitudes)』の著者。現役のトレーダーであり、またトレーディング・ビヘイバー・ダイナミクス社代表を務める。同社では、ブローカー会社、銀行、ファンド・マネジャーなどさまざまな金融のプロフェッショナル向けに、トレード心理学に関するセミナーや研修プログラムを企画開発している。アメリカにおける各種投資コンファレンスはもとより、欧州やアジアでもダウ・ジョーンズ・セミナーでの講演経験がある。アリゾナ州スコッツデール在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)